BaySpo 1622号(2019/12/27)掲載
山火事から危機管理への在り方を考える
ジェトロ・サンフランシスコ事務所 石橋 裕貴
石橋 裕貴(いしばし ゆうき)
2011年日本貿易振興機構(ジェトロ)入構。東京本部、沖縄事務所を経て、2018年7月よりサンフランシスコ事務所に赴任。東京本部では海外調査部にて年次調査レポート「世界貿易投資報告」の作成などを担当。沖縄事務所では食品の輸出促進などに携わる。サンフランシスコ事務所では輸出促進、調査を担当。

 10月にカリフォルニア州のソノマ郡などで発生した複数の山火事は皆様の記憶に新しいと思う。今回は山火事など緊急事態の発生に対する社内での危機管理対策の在り方について少し考えたい。

広範囲で影響を及ぼした
  今年10月の山火事を振り返る。日本ではあまり10月後半の山火事について報道されていなかった。10月の山火事では、ニューサムCA州知事が10月27日、州全体に緊急事態宣言を出した。カリフォルニア州森林管理・防火局によると、山火事はソノマ郡やロサンゼルス郡など複数の地域で発生した。中でも、同州北部のソノマ群で発生した山火事(Kincade Fire)は規模が大きかった。カリフォルニア州によると、27日の緊急事態宣言の発表時点で、ソノマ郡で発生した山火事は3万エーカー以上(約1億平方メートル以上)と広い範囲に広がった。また、20万人以上が避難を余儀なくされ、数百の建物が被害を受ける恐れがあった。さらに、火事による焼失範囲は、翌28日には最大7万6000エーカー超に拡大した。カリフォルニア森林管理・防火局によると、火事は13日間続き、7万7758エーカーまで焼失範囲が広がったようだ。同サイトで他の山火事と比較すると、7万7758エーカーの焼失は、2019年にカリフォルニア州で発生した山火事のなかで、最も広い範囲であった。また、「山火事」といっても、構造物や住民にも影響を及ぼした。同サイトによると、60の構造物(住居用・商業用・その他)がダメージを受け、さらに374の構造物(住居用・商業用・その他)が破壊された。  さらに、カリフォルニア州の電力会社PG&Eは、火事の拡大を防ぐため、10月29日からカリフォルニア州の32郡で計画停電を行った。ソノマ郡に所在する関係者に話を聞いたところ、「停電でインターネットを含めて電気が何も使えない。しばらくホテルで生活する」とのことだ。また、サンタクララ郡では、小売店で販売されているポータブル発電機が品切れになっているという。さらに、サンマテオ郡では、同エリアに所在するインキュベーション施設でも停電が発生するなど、ビジネス活動にも影響が出た。

山火事の影響が大きいカリフォルニア州
  今回の10月の火事は、カリフォルニア州で発生した火事のひとつである。カリフォルニア森林管理・防火局によると、2019年の山火事の焼失範囲はトータルで約25万エーカーになるようだ(2017年:約155万エーカー、2018年:約196万エーカー)。また、煙に伴う大気汚染による人体への影響もある。このようにカリフォルニア州において「山火事」は、危機管理の観点で、考慮すべきリスクであると言えるだろう。2019 Verisk Wildfire Risk Analysisによると、カリフォルニア州において、高・過度(※同レポートでは「無視できるほど・低い」、「過度ではない」、「高い・過度に」の3つで分類)の山火事の影響を受けるリスクがある物件の数は、全米のなかでも一番多く、201万9800件で、2位テキサス州(71万7800件)、3位コロラド州(37万1100件)を大きく上回る。

企業の危機管理対策は
 従業員を雇用する企業の立場から考えると、自然災害を含めた危機管理に留意する必要があるだろう。私は昨年からサンフランシスコへ赴任しているが、昨年の山火事(CampFire)や、今年10月初めの計画停電、上述したKincade Fire、大気汚染などを身近に感じ、遅ればせながら「危機管理」という意識を強く持つようになった。日本企業のカリフォルニア州の拠点では現時点でどのような対策を取っているのだろうか。ジェトロサンフランシスコは日系企業関係者に「災害を始めとした危機管理に対して、現時点でカリフォルニア州の拠点で取っている対策」を聞いてみた(回答数19件、選択肢を複数提示、複数回答可)。「連絡体制を整えている」と回答した数は10件で、事案が発生した際に社内で何らかの連絡体制を整えている企業は多いようだ。次に「避難訓練を実施」が6件、「危機管理対策マニュアル作成」が4件と続いた。連絡の方法として、コミュニケーションツール「slack」を使っているという声も聞かれた。ご存じの方も多いであろう。同社のサイトによると、1日あたり1200万人以上がslackをアクティブに使っていて、かつ150カ国以上で同ツールを毎日アクティブに使っているユーザーがいるようだ。会社のメールは、スムーズにアクセスできない従業員も多く、自然災害など突発的に発生する事態に対して、即時的にその日の勤務体制などを従業員へ連絡する手段として、不十分なのかもしれない。また、連絡をする際に、オフィスに出社するかどうかという判断もする必要はあろう。しかし、上述した日系企業関係者に聞いたところ、在宅を含めて、そもそもオフィスに必ず来るというスタイルではないという声も聞かれ、日本と比べるとそもそも「働き方」が異なるという印象も持った。

(参考) ジェトロビジネス短信 ・米カリフォルニア州での計画停電が終了、74万世帯・企業に影響 https://www.jetro.go.jp/biznews/2019/10/36cdef0e5c78cbf9.html ・米カリフォルニア州知事、大規模な山火事発生で州全体に緊急事態宣言、計画停電も29日から開始 https://www.jetro.go.jp/biznews/2019/10/317d14d49d94d932.html ・米南カリフォルニア、火災予防策として一部地域で計画停電を実施 https://www.jetro.go.jp/biznews/2019/11/085599492527a7b5.html

 
 

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