皆さん、新年あけましておめでとうございます。今年が皆さんにとって良い年となりますように。昨年11月に赴任した私にはベイエリアでの初の正月となりました。とてもすがすがしい気持ちです。大晦日は知人宅で手打ちそばのふるまいを受けました。単身赴任者としてとても心温まるおもてなしでした。
年初に今年の抱負、希望を誓う方も多いと思います。私もそうです。というか、そうでした。若い頃は一年の計とかいってですね。でも途中から空回り、自縛する自分に気づき、やめました。むしろ、ああこうしたいなとふっと思うときがあるので、そうしたときの気持ちを大切にしています。
そういう意味では例えば、昨年12月に開催された、クリーンエネルギー分野での日系大企業とベイエリアのスタートアップのピッチイベントは、素直にいいなと感じました。企業がそれぞれ提携先のスタートアップを探そうとすると、時間も労力もかかるし、必ずしも意中の企業にアクセスできるとは限らない。そこでこのイベントは、この分野に関心を持つ大企業さんが共同でスタートアップの候補を出し合い、プライオリティをつけて相手方に打診しました。東京では難しいこともこの地では試みやすい環境にあるかと思います。
このイベントの実現に尽力された企業の方のお話を伺うと、周到に時間をかけて準備をされたそうです。ジェトロはプラグアンドプレイ、NEDOと共催の立場で参加しましたが、他にも是非こうした連携の動きがあれば支援していきたいと思います。
ここに来る前は福島復興の仕事に携わっていました。私はもともと政府の職員ですが、政府は9年前の原子力発電所の事故によって周辺地域に避難指示を出しました。域内の住民の皆さんは域外への避難を余儀なくされましたが、今はその避難指示を解除するプロセスにあります。条件の整ったエリアを解除にまでつなげるのが私の仕事でした。
日本の地方都市である福島と世界のイノベーション・ハブであるベイエリアは一見無縁に思えますが、実はそうでもない気がしています。福島県の現状ですが、残念ながら避難指示を解除しても多くの住民はいろいろな事情で戻ることができず、戻られるのは高齢者が中心で、過疎化、超高齢化が進んでいます。人手不足が深刻で、宅急便のドライバーやコンビニ店員の確保に支障をきたしています。また原発事故由来ではありませんが、先般の台風20号では甚大な被害に見舞われました。いうなれば日本の中でも課題山積県です。
こうした社会的課題に対して政府は補助金や税制優遇措置、事業再開支援など様々な取り組みをしていますが、ここに技術の力が加わって、何らかの解決策が見つかれば、それを日本の他地域や世界にも横展開することが可能ではないかと思っています。
福島県としても、原発事故後、県内のエネルギー需要の全てを再生可能エネルギーで賄うことを目標に、風力発電や太陽光発電の導入を進めています。また、「ロボット・テスト・フィールド」といって、災害用ロボットやドローンの実証実験のための広大な敷地と設備を設けています。安全を確保しながら事故のあった原子炉を廃棄するための取り組みも進めています。こうした課題解決や取り組みにご関心がありましたら、ご連絡をください。
最後にまだジェトロになじみのない方向けに、多少ジェトロの宣伝をさせていただきます。
主に日系大企業の皆さまには、先ほど触れました業種限定型ピッチイベントに加え、ジェトロが契約するメンターや多少の独自ネットワークを通じて、個別にお話を聞いてつなぐこともしています。ジェトロ・サンフランシスコは、イノベーションについては、カナダも含めた北米全体を俯瞰していますので、ベイエリア以外の北米でスタートアップなどをお探しの方にもお手伝いできます。また、日本から企業トップが来訪されるときは、ご希望に応じて、ベイエリアの景況や日系企業の動向などのガイダンスをさせていただいています。
日本のスタートアップの方々に対しては、ビジネスモデルやプレゼンテーションに磨きをかけることをサポートしています。具体的には、エンジェル投資家や起業経験のある人の中から、ご自身の事業にあった専門家をアドバイザーとしてご紹介しています。アドバイザーとはTV会議を通じて日本にいながら準備ができます。また、サンフランシスコ市内とシリコンバレーにコーワキングスペースの貸し出しもしています。随時受付していて、すべて無料です。
今回はビジネス最前線というコラム名とはほど遠い内容になってしまいました。今年も定期的にこのベイスポさんにジェトロとして投稿させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
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