感染の拡大が止まらない新型コロナウイルス。全世界で200万人以上が感染し、米国の感染者は60万人を超える(4月15日時点での米ジョンズ・ホプキンズ大調べ)。一方、全米で最も早く屋内退避令(以下、自宅待機令で統一)を出したサンフランシスコ・ベイエリア(※1)は、自宅待機令から1カ月が経過した4月15日時点で(感染者が)0.5万人と、他の大都市に比べて、感染の拡大が比較的緩やかに抑えられていると言える。 自宅待機令の発令は、感染防止には有効な一方で、経済社会への影響は計り知れない。ベイエリアの自宅待機令を皮切りに、州レベルの発令が相次ぎ、州内全域を対象に自宅待機令を発令している州は42州にものぼっている(4月7日時点)。全米日系企業への売上への影響はどうなっているだろうか。
在米日系企業の5割が売上減少
過去1カ月に売上が前年同月比50%以上減少となった企業は2割を超えたー。ジェトロ北米事務所が、全米日系企業を対象に行ったクイック・アンケート調査結果(4月6日から8日)では、日系企業が苦境に立たされている姿が明らかになった。売上が増加している企業も5%ほどあったものの、売上が減少した日系企業の割合は5割を超えた。主な要因は国内需要の減少によるものだが、労働者不足や自宅待機令による工場停止など、需要はあるが生産できないという声も多かった。
このような状況の中、期待が集まっているのは公的支援策だ。米国中小企業庁が発表した給与保証プログラム(PPP)や失業保険給付、税金の繰り延べ措置、有給休暇拡充時の税控除など、連邦、州、市レベルで様々な支援策が発表されている。ジェトロサンフランシスコでは、こうした支援策などの情報をFacebookやウェブサイトで公開している他、電話による個別相談も受け付けている。(※2)
世界では駐在員帰国の動きもみられるが在米駐在員の帰国は限定的
日系企業の事業継続も手探りの状態が続いている。ほとんどの州は例外規定として必要不可欠な事業(Essential Business)であれば出勤が可能としているが、職場での事業を継続している企業は43・5%に過ぎない。またこの数字も一部の職員など限定的な出社であり、在宅勤務の導入率は95%を超える。
世界各国では駐在員を帰国させる動きも広がっているが、米国の駐在員は留まるという選択肢をしているようだ。インドでは5割の企業が駐在員の一部または全員を帰国(帰国予定を含む)させているのに対し、米国では駐在員を帰国させた例は約1割、一時帰国の実施を検討している企業を含めても3割に満たなかった。ジェトロサンフランシスコが、在サンフランシスコ日本国領事館、JCCNC、NEDOシリコンバレーとベイエリア企業を対象に共同で実施した調査においても、駐在員および家族を帰国させていると回答したのは約3%という結果が出ている。
帰国時の移動による感染リスクが不安
駐在員が帰国しない理由として、業務上の都合(53%)以外に、移動することによる感染リスクへの不安(65%)があるようだ。アンケートでは、どのような手順になるのか知りたいという声も多かったので、4月に日本に帰国したベイエリア在住者の友人に写真付きで解説して頂いた。
サンフランシスコ空港はかなり閑散としているようで、セキュリティーチェックに並ぶことはなく、比較的早く機内に乗り込むことができるようだ。機内では距離を開けて座れるようになどの配慮がされている。友人が乗った飛行機では、毛布、枕は配られず、飲み物もコップではなく、缶やボトルの手渡しだったようだ。機内では税関書類の他、コロナウイルス対策として質問書、検査同意書など、税関提出書類の他に4種類ほど渡される。
着陸後には、先に到着した便の乗客の検疫が済むまで、機内での待機時間が存在する。あらかじめ待機時間の目安が2時間とアナウンスされ、実際には1時間40分程度で降りることができたようだが、機内待機中はエンターテイメントサービスが提供されなかったため、少し時間を持て余したようだ。
飛行機から降りたら検疫所で書類チェックと体温測定。PCR検査は、綿棒を突っ込む方式で30秒ほど。検査後は公共交通機関利用をせずに帰る組(家族が迎えにきている、ハイヤーなど)と、ホテルに宿泊する組(迎えがない組)に分けられるとのこと。帰る組は、ハイヤーや家族の車が来たと確認できた後に、係員が入国審査ゲートからバッケージクレームまで引率する仕組みだ。なお、検査結果が出るのはホテル待機組の方が早かったという報告もある。友人は5日たった今もまだ結果は知らされていないという。
※1 カリフォルニア州の人気ハンバーガー店のメニュー
※2 企業価値が10億ドル以上で非上場の
スタートアップ企業
※3 J-start up プロジェクト概要ページ
https://www.j-startup.go.jp |