米連邦破産法第11章(チャプター11)の債権者になった。次男のために申し込んだサマーキャンプの運営会社がコロナの影響で資金難となり、適用申請をしたためだ。既に振り込んだキャンプ代金がどの程度返還されるか以上に、長い夏休みの間、子どもをどう過ごさせるかは頭の痛い問題である。
新型コロナで苦境に陥るサマーキャンプ
米国の夏休みは長い。6月中旬からの2カ月半、働く親達の最重要課題は複数のサマーキャンプを切れ目なくつないで、学校に代わる子ども達の日中の預かり先を確保することだろう。人気のサマーキャンプは、年明け頃から予約を済ませておかないと埋まってしまうほどだ。複数の知人から良い評判を聞いていたCamp Galileo(本社:カリフォルニア州オークランド)も、そんな人気サマーキャンプの一つだった。同社は2002年からベイエリア、南カリフォルニア、シカゴ、デンバーでサマーキャンプなどを提供する人気プログラムで、これまでに22万5000人が参加したという。ただ、20年近い経験と高い評判は、強固な経営基盤を保証するものではなかった。予期せぬコロナの影響で例年通りのキャンプの実施が難しくなり、多くのサマーキャンプは返金を免れるべく、急遽オンライン化の実装に奔走した。しかし、カウンセラー費や設備投資に流動資金を使い切っていたCamp Galileoは、返金の余力なく白旗を上げた。5月6日に同社がチャプター11の適用申請を発表すると、申込金を既に払い込んでいた保護者に衝撃が走った。ただし、Camp Galileoのように新型コロナの影響で経営破綻に至ったサマーキャンプは少数で、多くのキャンプは一部でも払い戻しに応じるか、翌年以降のクーポン配布でなんとかこのピンチを凌いでいる。
選択肢の広がるオンライン教育サービス
むしろ注目すべきは、オンライン教育市場の活況である。テキサス、バーモント、ミネソタなど幾つかの州では6月以降、デイキャンプの開催が認められ始めたが、大半は続々とオンラインに移行している。そしてそれを可能にするのが新型コロナを契機とした子供達のITインフラ普及とリテラシーの急伸である。屋内退避の期間中から、子ども達はさまざまなオンラインプログラムに接してきた。学校や塾はGoogle Meet, Zoom, Webexなどインタラクティブなプログラムを通じて学習し、運動系の習い事ですらZoomで毎日集まって陸トレを続けてきた。これに加えて、単語カードの要領で学習するQuizlet、軽妙なアニメキャラクターがテーマごとに解説するBrainPop、算数ゲームのProdigy、タイピング練習のTyping Gamesなど、Edtechの活用も大いに進んだ。これまでは無料版のみを利用していたサービスを有料版に切り替える傾向もあり、オンライン学習への抵抗感が親子ともに薄れたことが新たな市場の創造に大きく寄与している。画面越しにシッターをする「バーチャルシッター」といった新しいビジネスモデルも誕生し、注目を集めている。SittercityやCare.comなどでバーチャルシッター可とするシッターに対する需要の伸びが著しいという。日本の学習塾のオンライン個別指導を海外で受ける選択肢も、以前に比べて飛躍的に拡大した。Edtechや国境を越えたオンライン教育市場は今後益々成長していく分野だろう。
働く親の尽きない悩み
オンライン教育サービスの拡充自体は歓迎すべきことだが、長い夏休みの過ごし方に悩む働く親達にとっては、問題を半分しか解決してくれない。夏休み中も学習が続けられることは有り難い。しかし、オンライン教育ではやはり誰かが家で付き添わなければいけないからだ。条件付きではあるが小売店が再開し、徐々にオフィスへの通勤再開が現実味を帯びてきている中、感染拡大防止とは別の制約により職場復帰が容易でない親たちがまだまだたくさんいる。我が家も、7月以降、徐々に在宅勤務が解除される見通しの中、夏休みの次男の預け先が確保できていない。教育のオンライン化の進展と並行して、バーチャルシッターが画面越しに見守っていれば子供が一人で留守番していても良いとする「新常態」が早く訪れることを期待している。
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