航空会社の余ったマイレージ。他人に譲与することが可能なのをご存知だろうか。マイルシェアの森田宣広氏は、1年半をかけて世界を周り、世界にはシェア可能なマイルやポイントが多く存在することをつきとめた。同社は、「航空会社のポイントやマイルを余剰に持っている人」と「航空券を安価で取得したい人」を仲介するサービスで、日本国内では最大50%安価に購入できるという。航空会社の多くはマイルの売買を認めていないため、利用者はあくまでマイルは譲渡し、同社はシステム手数料を徴収する仕組みだ。
森田氏は7社を起業した経験を持つ。シリコンバレーを訪れ、世界に通用するサービスをローンチしたいと考えた。「地方に住む人にとっては飛行機代が高すぎる(移動格差がある)」「7割のユーザーがマイルやポイントを有効活用出来ていない」「(航空会社にとっては)未使用のマイルが負債としてバランスシートに形上されてしまう」という課題があることに気づき、マイルシェアを立ち上げた。札幌出身の連続起業家である森田氏だからこそ、思いついたサービスといえる。
より大きな成功や市場を目指す
シリアルアントレプレナー
2000年初期から、海外展開する日本のスタートアップをサポートしてきたが、最近になって、企業経験が豊富な創業者、すなわちシリアルアントレプレナー(連続起業家)が急激に増えてきた印象を持つ。一度成功した人は、さらに大きな成功や市場を求めるのだろうか。答えはイエスだろう。スタンフォードの調査(※1)によると、シリアルアントレプレナーは初めて創業した起業家よりも、売上高で約2倍、生産性で約1・5倍高いスタートアップを生み出している。
より大きな市場、グローバルマーケットを目指す場合は、サンフランシスコ・シリコンバレーは最適なのだろう。ベイエリアに住んでいると、移民のシリアルアントレプレナーが多いことに驚く。米国政策国家財団(National Foundation for American Policy)の調査(2018年)によると、ユニコーン(※2)の5割以上は、移民の創業者が一人以上、含まれているという。
Tech Crunch Disrupt 2020で
日系スタートアップ6社がピッチ
ジェトロがTech Crunch Disrupt 2020で選定した世界を目指す日系スタートアップ6社も、前述のマイルシェアを含め、その多くがシリアルアントレプレナーによる創業だった。
感情日記とコミュニティーからの共感に焦点をあてた新しい形のSNS「Feelyou」を開発する小林慎和氏も、2社のEXITと2社の破産を経験したシリアルアントレプレナー。起業には数多くの困難が伴うが、創業者はポジティブな姿勢を情報発信しなければいけないし、SNSで悩みを打ち明けることができない。日々の感情を吐き出すことができるコミュニティーを提供できないか。そんな自身の経験から立ち上げたセルフケアアプリが「Feelyou」だ。コロナ禍で不安を抱えるミレニアム世代など、世界中のユーザーをターゲットに2020年7月にローンチした。Day1から世界を見据えた同サービスは、ローンチ後2カ月で約2万人のユーザーを獲得。欧州や米国など顧客は世界中に広がる。目指すは3年以内に2000万人ユーザー、ビジネスモデルは広告収入ではなく、サブスクリプションモデルだ。ユーザーの9割以上が本アプリを活用することで気分が向上したと答えている。
360度のマルチアングル映像をブラウザ上で配信できる「SwipeVideo」を提供するAmaterus(アマテラス)の下城伸也氏も学生時代に起業、年商20億円以上の会社を育てた経験を持つ。「私たちが見る動画映像はいつも一方向だ。一方、顧客が見たいのは、いつも正面を向いた一方向の動画ではなく、横顔かもしれないし、後ろ姿かもしれない。視聴者がどの角度からも見られる動画を作れないか」。そんな思いから、下城氏は世界一周旅行の後、視聴者が動画をスワイプすることで、ウェブ上やアプリで自由に視点を変えられる世界初の配信システムを開発した。コロナ禍の今、スポーツ観戦やトレーニング現場、教育現場、などでの利用が期待されている。同社は起業時から世界を見据えて、国際特許を取得、2020年4月にはロンドン生まれのCOO小田啓氏を迎え入れ、海外展開を加速させている。
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