BaySpo 1665号(2020/10/23)掲載
コロナ禍で在宅勤務が続くベイエリア
ジェトロ・サンフランシスコ事務所 石橋 裕貴
石橋 裕貴(いしばし ゆうき)
2011年日本貿易振興機構(ジェトロ)入構。東京本部、沖縄事務所を経て、2018年7月よりサンフランシスコ事務所に赴任。東京本部では海外調査部にて年次調査レポート「世界貿易投資報告」の作成などを担当。沖縄事務所では食品の輸出促進などに携わる。サンフランシスコ事務所では輸出促進、調査を担当。

経済再開が進むベイエリア
   カリフォルニア州は8月31日から新型コロナに関わる新しいビジネス再開計画を導入した。州内各郡について、新型コロナウイルスの1日当たりの新規感染者数(10万人当たり)と検査陽性率の指標に基づき、紫色、赤色、オレンジ、黄色の4段階に分類している(ビジネスへの制限が最も厳しいのが紫)。カリフォルニアでは感染者数や陽性率の数値を見ると、9月、10月と新型コロナウィルスの感染が減少傾向を示す。毎週火曜日に更新されるデータでは、10月13日現在、サンフランシスコ郡、サンタクララ郡、アラメダ郡でオレンジをはじめ、ベイエリアのほとんどの郡で赤のフェーズへ移行し、経済再開が徐々に進んでいる。

サンフランシスコでは飲食店の屋内営業が約6カ月ぶりに再開
  サンフランシスコ市・郡では、飲食店の屋内営業が9月30日から再開可能となった。3月の屋内退避令発令で飲食店の営業が制限されて以降、約6カ月を経て、屋内営業の再開が可能となった。30日に更新された市・郡が発表した飲食店向けのガイドラインによると、屋内営業にあたって、25%の収容人数で最大100名までの人数制限 、屋内スペースは午前0時30分まで 、屋内で6フィートを維持できない場合のバリアの設置は不可、屋外での営業を優先することなどを飲食店へ求める。州のガイドライン上は「赤」で屋内での飲食提供が可能であるが、サンフランシスコは、9月18日、「オレンジ」に移行で再開可能とすることを発表していた。市内を見ると、屋内営業を再開した飲食店を目にするようになってきた。他方、一般消費者の屋内飲食に対する抵抗感は強い。サンフランシスコクロニクル紙が、9月中旬にウェブ上で実施したアンケートによると(回答者1327人)、「(上記の18日の市の発表を受けて)すぐに屋内で飲食したいか」という質問に対して、約8割が「No」と回答した。

3月以降、在宅勤務体制が続く
  次に、オフィスに関して、上述したカリフォルニアの新しい再開計画によると、紫、赤では、原則リモートワーク、オレンジ、黄色では、制限付きで可(リモートワーク推奨)とされる。3月以降、非エッセンシャルの企業では在宅勤務体制は続いている。  3月以降続く在宅勤務体制下でベイエリアから人が退去している調査結果も出ている。Blindが、7月、ベイエリアのテック企業に勤めるプロフェッショナル向けに実施したアンケートによると、「在宅勤務スタート以降、ベイエリアから離れたか?」という質問に対して(回答数3334名)、回答者の15%がベイエリアから退去したと答えた。さらに、「好きなだけ在宅勤務ができるなら、ベイエリアからの移転を考えるか?」という質問に対して(回答数2865名)、回答者の64%が移転を検討すると回答している。また、足元のベイエリアの不動産関係の指標をみると、個人向けの住宅家賃の下落やオフィスの空室率の上昇なども見られる。  今後、オフィス勤務ができる環境になった場合のオフィスの方針について、ベイエリアの日系企業に聞くと、基本的にはオフィスに戻す方針、(これまでオフィスが基本であったが)在宅できる仕事は認めていく、業務の性質上オフィスに行かないと生産性が落ちる、コロナ以前からのオフィスとリモートのハイブリッド体制を今後も続ける、拡大するなどが聞かれる。一方、在宅勤務が続くなかで、西海岸時間の夕方以降の日本とのオンラインミーティングが増えて仕事の時間が増えた、拠点内の部門間のコミュニケーション間が難しくなったなど弊害の声も聞かれる。また、従業員のなかにはオフィス再開後の公共交通機関を使うことに対して従業員からの不安の声が出ていて、オフィスに戻したいが、難しさを感じる企業の声もあるようだ。

ベイエリアにおける 長期的な働き方のビジョン 
 今後のベイエリアの働き方はどうなるのか。ABAG(Association of Bay Area Governments)とMTC(Metropolitan Transportation Commission)などが2050年のベイエリアの長期ビジョンの青写真を準備している。「輸送」、「住居」、「経済」、「環境」の4つのコアの要素からなり、それを実行する戦略を提言する。「環境」の項目の排出ガス削減の視点から、在宅勤務のベイエリアの労働者を増加させる戦略がある。両機関は9月、青写真の最終バージョンを承認した。最終バージョンでは、大企業へ各営業日少なくとも従業員の60%に在宅勤務を求めている。

(参考)
●ジェトロビジネス短信「米カリフォルニア州、 新型コロナとの共存のためビジネス再開の新計画始動」 https://www.jetro.go.jp/biznews/2020/09/62d22bd16236cb7e.html
●ジェトロビジネス短信「米サンフランシスコ、6カ月ぶりに飲食店の屋内営業が可能に」 https://www.jetro.go.jp/biznews/2020/10/2919a60cee5ba20c.html
●ブラインドアンケート結果 https://www.teamblind.com/blog/index.php/2020/08/05/covid-19-professionals-leave-the-bay-area/
●ベイエリアプラン 2050 https://assets.documentcloud.org/documents/7216723/MTC-Bay-Area-2050-Blueprint.pdf

 
 

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