BaySpo 1679号(2021/01/29)掲載
日系スタートアップ53社が出展 バーチャルCES2021開催
ェトロ・サンフランシスコ・センター 樽谷 範哉
樽谷 範哉 (たるたに のりや)
2001年JETRO入社後、シリコンバレー等でのインキュベーション事業立ち上げを担当。名古屋、トロント事務所、東京本部にてハイテク、製造業、スタートアップの世界展開プログラムに従事。2017年7月よりベイエリアにてイノベーティブな日系企業の世界展開をサポートしている。東京工業大学大学院修了。

 ラップトップ型のポータブルモビリティーやAIペットロボット、最大9割を節水するノズルや空飛ぶクルマ。どれも触ってみたり動かしてみたりすることで魅力が伝わる製品ばかり。そんな中、どうやって魅力を伝えていくか。初めてバーチャルで開催された世界最大の消費者技術見本市CES2021では、日本からスタートアップ53社が含む77社が出展、工夫を凝らすことで、世界に向けてPRを行なった。

半分の規模となったデジタルCES2021  

 毎年1月初旬にラスベガスで開催される世界最大級の消費者技術見本市コンシュマー・エレクトロニクス・ショー「CES」。2020年3月以降、COVID-19の影響で全ての展示会の主催者がデジタル化・中止を矢継ぎ早に発表していたが、CESの主催者であるCTAが、全てデジタルで開催するとようやく発表したのは、会期まで半年を切った2020年7月末のことだった。
 消費者家電から始まったCES。元来、ハードウェアの出展が多いこともあって、デジタルでどのように製品の訴求を行うことができるのか。運営側である主催者にとっても初めてのことであり、日程変更、デジタル・プラットフォーム発表の遅れなど、混乱を極めているようにみえた。
 トヨタ、ホンダなど従来展示していた大企業の辞退もあり、規模だけみると出展者は前年比55%減の2000社、来場者は前年比60%減の約7万人と、CESの規模は半分に縮小された。
 出展を取りやめる大企業が目立つ中、日本からのスタートアップの出展は過去最高となった。デジタル化により、近年注目を集めてきたスタートアップゾーンであるウーレカ・パークの厳しい審査基準がなくなったことなども影響し、JETROが運営するJ-Startupパビリオンの出展数は、2020年の28社から2倍近い53社に達した。
 出展社の多くは初めて出展する企業。空飛ぶクルマで有人飛行を成功させたスカイドライブ社やラップトップ型のポータブルモビリティーを販売するココア・モーターズ社、最大節水率9割のノズルを開発するDGタカノ社や排水の98%を再利用可能にする水循環システムのWOTA社など、モビリティー、環境、ヘルスケア、AI、COVID-19対策技術など業種は多岐に渡った。
 CESが提供するプラットフォームには1500社が並び、トップページに現れるのはロゴと企業名だけ。来場者にこの中からクリックしてもらうのは非常に難しい。そこで、J-Startupパビリオンでは、プレスリリース支援、メディア向けピッチイベント、ランディングページの立ち上げ、ジャパン・セッションの開催など、あらゆる形での広報に努めた。非侵襲の血糖値測定ウェアラブルを開発するクオンタム・オペレーション社がエンガジェット・イノベーションアワード・ファイナリストに選ばれるなど、メディアの注目を引きつけることに成功した。

赤ちゃんの睡眠リズムを支えるAinenneがInnovation Award受賞  

 メディアの注目を引きつけるには、CESが発表するInnovation Awardを獲得することも重要だ。J-StartupからはAIロボットのヴァンガード・インダストリーズ社とファーストアセントが開発した「Ainenne」が受賞している。赤ちゃんを育てる中で楽しくも大変な思い出として、寝かしつけがあげられるが、「Ainenne」はそんな赤ちゃんのスムーズな睡眠を助けるために開発されたデバイスだ。
 「Ainenne」の機能はシンプルだ。まず、赤ちゃんの日々の寝かしつけや夜泣きの情報をもとに、赤ちゃんの推奨起床時間を予測する。だが、推奨起床時間を予測できても、起こす手段としてアラームを使ったり、揺すったりしては駄目だ。人間は朝日を浴びて初めて体内時計がリセットされるからだ。そこでAinenneは、太陽光を模したLED光による目覚まし機能を搭載し、赤ちゃんが自然に起きる環境を提供する。睡眠を妨げる理由も追求する。赤ちゃんが夜中に泣いてしまった場合、世界150カ国15万人の泣き声を解析した泣き声診断アルゴリズムを活用し、「お腹が空いた」「トイレに行きたい」など、赤ちゃんが泣いている理由を解析する。自身の赤ちゃんを育てた経験から本製品を開発したファーストアセント社の服部伴之氏にとって、今年のCES出展は2020年のフィジカルイベントに続き2回目。育児アプリから泣き声解析、そしてAinenneと、育児に必要な製品・サービスを開発してきた。「Ainenne」は2021年の春以降にクラウドファンディングにおいてローンチする予定、本製品が世界に届く日が待ち遠しい。

※スタートアップ53社が掲載されたJETRO特設J-Startupページは下記から
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