BaySpo 1691号(2021/04/23)掲載

カリフォルニアでの自動運転車開発の現状

ジェトロ・サンフランシスコ ディレクター 冨田 裕司

冨田 裕司 (とみた ひろし)
米国シリコンバレーに駐在17年半にわたり、日本企業のR&D会社の代表を務める。2017年5月日本貿易振興会(ジェトロ)と国立情報学研究所(NII)の共同事務所・シリコンバレーオフィス設立に伴い、NIIオフィスRepresentative、ジェトロ/Directorに就任。熊本県出身。

 最近、話題になる自動運転のテストのニュース、皆様も一度は耳にされた方も多いのではないかと思います。この分野には、電気自動車もそうですが、自動車会社のみならず、異業種からの参入もあり、自動車、自動運転の開発競争は、熾烈を極めているようです。全米の様々な州でも実施していますが、唯一、車・自動運転の公道テストの結果(走行距離、自動運転モードからの離脱回数、事故報告など)のデータを公表しているカルフォルニアを例にして、その競争の一端を垣間見てみたいと思います。(なお、この結果は、あくまでカルフォルニアでのテスト結果の紹介で、各会社の開発全体の状況を述べるものではありません。)

 まず、自動運転の定義は何でしょうか。日本政府や米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)による自動化のレベルは、概略、次のようになります。(詳細は、その資料をご参照ください)

レベル0:ドライバーが常に操作
レベル1:運転支援
レベル2:部分自動運転:特定条件下での部分的自動運転(例えば、高速道路の追い越しなど)。
レベル3(条件付自動運転):限定的な環境下もしくは交通状況のみ自動運転。システムが要請時にドライバーが対応要。
レベル4(高度自動運転):特定の状況下のみ(例えば高速道路上などの決まった条件内でのみ)自動運転。
レベル5(完全自動運転):考え得る全ての状況下及び、極限環境での自動運転

 現在の各社の開発状況は、様々ですが、自動運転レベル2〜3に対応する車種やオプションで機能追加搭載からレベル2を達成というところのようです。なお、自動運転レベル4に関しては、GMが「Cruise Origin」(あくまで予定)、フォードが商用サービス分野において、配送サービスへレベル4にあたる自動運転技術を投入計画(あくまで予定)との話もあるようです。
 さて、そのような中、カルフォルニアにおける車・自動運転の公道テストの3つの結果を見てみましょう。まず、カルフォルニア州での公道に自動運転には、CA、DMVより許認可が必要です。現在、@ドライバー乗車の自動運転テスト認可は61社、Aドライバー乗車なしの自動運転テスト認可は6社となっています。ただ、Aでのテストは実施されていないとのことなので、@のテスト結果からみていきたいと思います。

2020年CAでの公道試験ドライバー乗車の自動運転テスト結果
@走行距離
 図1が、過去4年間の走行テストトップ5の会社です。この走行距離試験のテスト結果から、大きく分けて、4つのグループに分類される傾向です。つまり、
・10万マイル以上:トップ上位企業
・1万マイルから10万マイル未満:トップに続く企業
・1万マイル未満
・登録済みなるも、公道でのテスト未の企業です。
 この中で特に注目は、GM傘下のCruise LLC、Alphabet(Googleの親会社)傘下のWaymoの2社です。この4年、常に1〜2位を争い、ここ数年、年間、63万〜120万マイルの走行テストを実施して、大きく他社を引き離しています。

A自動運転モードからの離脱回数
 次に、公道テストの中には、走行中の自動運転モードから何らかの理由で、離脱した状況の報告も義務付けられています。離脱した回数と総走行距離から算出した平均マイル数をもとにランク付けしたのが、図2です。これだけで判断するのは早計ですが、各社の自動運転のレベルを推し量る一つの要素でもあろうかと思います。ここでも、Cruise LLCやWaymoの2社は飛び抜けています。ここで、注目したいのは、2019年に、トップの2社を抑えて、首位になったBaiduです。2020年は、カルフォルニアでは、一切走行テストを実施しておらず、ランクにも入っていません。中国でのテストに集中との報道もあるようで、今後の動向が気になるところです。

B衝突回数
 3つ目の項目は、公道テストの中の事故です。衝突事故数は、走行距離が増えるにつれて、件数も増え、2017年の28件から、2019年は105件、2020年44件。一方、衝突事故件数と総走行距離から算出した、トップ2社の100万km辺りの件数は、1・1〜1・3件程度。ここでも、Cruise LLCやWaymoの2社は他社よりもいい結果を示しています。少々古いデータですが、2015年の日本での全自動車の100万km辺りの事故件数は、0・75件との統計もあり、一概には比較できませんが、徐々にレベルが上がってきたとの印象です。

 以上、カルフォルニアにおける車・自動運転の公道テスト3項目を見て、米国企業では、Cruise LLCやWaymoが先行し、Zooxなどがテスト加速する一方、中国企業(Baidu, Pony他)のテストの活発化が目立ちます。今後、他国でのテストや大手の自動車メーカーの動向、異業種からの参入(Apple,Zooxを買収したAmazon, Baidu)、自動運転のスタートアップの会社(Nuro, AutoXなど)の動向にも、目が離せないところです。



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