| 前回は、燃料電池自動車の開発を巡る官民共同プロジェクトとして、カリフォルニア燃料電池パートナーシップの現状について書いた。今回は、より現実的に携帯電話やラップトップPCの市場を狙ったポータブル燃料電池について書いてみようと思う。
ポータブル燃料電池は、大きさは通常のバッテリーと変わらず、従来のリチウムイオン電池やリチウム水素電池よりも圧倒的に寿命が長い。しかも、自動車用の燃料電池が、インフラの問題や安全性の問題を解決するのに今しばらく時間がかかりそうなのに対して、こちらは早ければ2年以内に消費者の手に届きそうだ
【携帯機器の電力ニーズ】
パソコンや携帯電話などの電子機器の多機能化は留まるところを知らない。パソコンにDVDドライブのような新機能が付けば消費電力は高まり、一方で、WiFi技術の普及によりパソコンをモバイル環境で、即ちバッテリーで長時間使用したいというニーズも高まっている。
現在主流のリチウムイオン電池をパソコンに使った場合、普通は数時間しか使用できない。数時間という連続使用時間は、出張の多いユーザーやオフィス外で働くことの多い営業マンには明らかに不十分である。私自身も、飛行機の中でパソコンを広げて原稿を書くことが多いのだが、目的地に到着する前にバッテリー切れになることがほとんどだ。
【ポータプル燃料電池】
そこで登場するのがポータブル燃料電池だ。自動車用の燃料電池では水素を燃料として、空気中の酸素と結合して水を生成する際に発生するエネルギーを電気として取り出すが、ポータブル燃料電池ではメタノールを燃料として、やはり空気中の酸素と反応して水と二酸化炭素を生成する際のエネルギーを電気に変える。
燃料としてメタノールが選ばれるのは、エネルギー効率が高く生産コストが安いことも一つの理由だが、液体のメタノールは簡単なカートリッジで供給可能なので水素よりも取扱が易しいことが大きな理由だ。
ポータブル燃料電池の寿命は、充填する燃料の量の設計次第だが、ラップトップPC用で8〜12時間、携帯電話用で3〜4週間と想定されている。しかも、ありがたいことに普通のバッテリーと違って、燃料切れになっても電源を切らずに燃料カートリッジだけを交換すれば、そのまま続けて使用できる。
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