BaySpo 546号(2003/12/12)掲載
カリフォルニアの地熱エネルギー利用

ジェトロ・サンフランシスコ・センター 中山 亨

中山 亨
1959年、東京生まれ。1984年、東京大学大学院工学部機械工学科を終了後、通産省に入省。電子機器の輸出審査、通商白書の執筆、プラスチックのリサイクルなど幅広い行政を担当。92年から1年間、南カリフォルニア大学でハイテク技術の技術移転に関する調査研究に係わった後、93年から97年には、日米半導体通商摩擦、半導体・IT関連技術開発プロジェクトの立案などを担当。98年から3年間、大臣官房秘書課で職員の人事を担当をした後に、2001年6月より現職。

 このところ、エネルギーネタが続いているが、今回もエネルギー関連の話題である。地球温暖化の防止や、そもそも限りある化石燃料の使用を減らすために、「再生可能エネルギー」の利用を増やすという議論がある。再生可能エネルギーとは、太陽エネルギーや風力、水力のように、いわば使っても減らない、自然に回復するエネルギーのことで、今回紹介する地熱もこれに含まれる。

 地熱はどの程度、どのようにして利用されているのだろうか。連邦エネルギー省の推計によれば、2002年の米国のエネルギー消費の中では、化石燃料が総エネルギー消費の86%を占めている。一方、地熱の利用は全体の0.3%に過ぎない。しかも、化石燃料の使用は石炭、天然ガス、原油ともに絶対量で伸びているのに対し、再生可能エネルギーはバイオマス、太陽光、風力、地熱などの全ての分野で減少している。

【地熱利用の現状】
 地熱エネルギーの利用方法としては、熱の直接利用、地熱ヒートポンプ、発電の3つに大別される。

 地熱の直接利用とは、温室の暖房や歩道の融雪といった、初歩的かつ直接的な利用であるが、これも地熱の利用には違いない。地熱ヒートポンプは、地表近くに埋めたパイプを流れる液体を建物内に循環し、冬には暖かい地表の暖気を利用して建物を暖め、逆に夏には室内の暖かい空気を地下に送って冷房を行う。これらの利用であれば、基本的にはどこでも可能だ。

 しかし、地熱エネルギーを利用した発電は、カリフォルニア州、ネバダ州、ユタ州にしかない。このうちカリフォルニア州には14の発電サイトが存在しているが、ある程度の規模で本格的なものは数カ所である。最も有名なのはサンフランシスコ北方75マイルのマヤカマス山地にあるガイザース地区で、世界最大の地熱発電サイトである。ガイザースには23基の発電施設があり、大半はカルパイン社が保有している。

【政府の助成プログラム】
 まず連邦レベルでは、エネルギー省がエネルギー源の多様化と米国国内エネルギー供給の確保を目的として、地熱研究に資金を出している。このプログラムでは、2006年までに地熱発電を行う州の数を8州まで増やし、2007年までに地熱発電のコストを1キロワット時当たり3〜5セントまで下げ、2010年までに地熱で発電された電力の利用者を700万世帯/事業所まで増やすことを目標としている。

 カリフォルニア州では、加州エネルギー委員会が、1981年から州内の地熱利用に関する研究開発、デモンストレーションおよび商用化を目的として地熱開発プログラムを行っている。最初の10年間は、公的機関だけが資金援助の対象だったが、1992年からは民間企業に対する資金援助も行えるように、プロジェクトが拡充された。このプログラムの地熱源開発予算から資金提供された公的機関、民間企業は160を超える。

【米国エネルギー法案の影響】
 米国エネルギー法案は上院で否決されてしまった。これが通過すれば、地熱開発に関してかなり弾みがついただろうと考えられるだけに、関連業界の落胆は大きかった。

 法案では、地熱発電による電力の価格を下げるために今後5年間にわたって1キロワット時当たり1.8セントの減税を行うこと、地熱を開発する企業が国有地で採掘した貴金属に対する支払の免除、国有地から噴出する蒸気の買い取り価格の特例、等が含まれていた。この法案が否決されてしまったため、地熱関連業界は2004年にあらためて法案が議会に提出されるまで待たなければならない。

 ベイエリアから580を東に飛ばし、バスコロードを北に入ると無数の発電用風車が目に付く。これも再生可能エネルギーである。中央盆地に向かって風が流れ込む地形は風力発電に最適だ。春から秋まで燦々と照りつける太陽の光は、太陽光発電だ。地震があって温泉が湧いているくらいだから地熱の利用可能性も高い。さらには、太平洋から打ち寄せる波を利用すれば潮力発電もできる。

 冒頭に記したように、地熱の開発と利用はまだまだ十分に行われているとは言い難い。しかし、全てのエネルギー源を一度に利用することもないので、将来に向けて長い時間をかけて開発していけばよいだろう。

 こう考えると、カリフォルニア州は実にエネルギーに恵まれた土地だと言うことをあらためて認識するだろう。この天然自然のエネルギーの集積が、人間のエネルギーにもつながっているのかも知れない。

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