BaySpo 604号(2004/01/30)掲載
雇用回復の遅れが目立つシリコンバレー

〜景気見通しセミナーでの識者の見方〜

ジェトロ・サンフランシスコ・センター 田中 一史

田中 一史
東京生まれ。1990年ジェトロ入会。海外調査部アジア大洋州課、マニラ・センター調査部、「世界は今」(日経CNBC等)の番組ディレクターなどを経て、2002年4月、サンフランシスコ・センターに広域調査員として着任。アジア経済関連を中心に著書、論文多数。

 年初に行われた2004年の景気見通しセミナーで、シリコンバレーの雇用回復の遅れを憂慮する声が相次ぎました。その最大の要因は、創業企業数の減少と海外アウトソーシングの進展だそうです。

 1月8日に開催されたこのセミナーは、企業経営者を対象に、シリコンバレー・コモンウエルス・クラブとシリコンバレー・ビズ・インク社が主催したもの。参加者は約500名。パネリストはシリコンバレーで活躍するエコノミストや実務者で構成されました。以下、その発言要旨を紹介します。

【エコノミストの視点:景気上昇は雇用創出に結び付かず】

● ステファン・レビー氏、カリフォルニア経済継続研究センター・シニア・エコノミスト

 米国の2003年第3四半期(7〜9月期)の実質GDP成長率は8.5%だった。この高い成長率は、減税と利下げ、さらにはイラク戦争に関連する政府支出が牽引した。2004年の米国経済はさらに良くなり、株式市場や企業業績はより一層の上昇が見込まれる。しかし、これらのプラス面は雇用創出に結び付かない。特に製造業とシリコンバレーの雇用には貢献しない。

 なぜなら、生産性の向上で、少数の被雇用者によって経済活動は賄えるようになっているからだ。シリコンバレーに本社を置くインテルやシスコ・システムズ、ヒューレット・パッカードなどの2004年の企業業績は、緩やかだが大変良い成績を残すだろう。これらの企業の雇用は(増やしもせず減らしもせず)安定的に推移するだろう。

 90年代のシリコンバレーの新規雇用は、イノベーションや起業家精神を惹きつけるスモール・カンパニーから生まれた。しかし、2004年はそうしたスモール・カンパニーは誕生しない。また、2004年はベンチャー・キャピタル(VC)投資の上昇サイクルは起きない。2006年になれば、多くのスモール・カンパニーが誕生するかもしれないが・・・。

【銀行家の視点:伝統的な投資手法に回帰】

 カリフォルニア州の経済は2003年に底入れしたと考えている。カリフォルニア経済については、最近までは悲観的な見方が多かったが、今は「余談を許さない楽観主義(cautious optimism)」に取って代わろうとしている。過去6ヵ月のシリコンバレーの製造業は、劇的な回復基調を見せてきた。特に半導体装置産業の回復は著しく、2004年の売り上げは前年比50%増も期待できるかもしれない。

 楽観的な見方の理由として、企業のIT支出が増大していることがある。企業は、コンピュータの2000年問題に対応しようと、98年から99年にかけてIT投資を行なったが、今は既に減価償却が終わり、新たな設備投資を考えている最中だ。問題は、いつのタイミングで小切手が切られるかである。現在、企業は、短期間で収入やコスト効率に直接跳ね返るシステム構築だけにお金を出すといった、いわば伝統的な考え方に基づく支出性向に戻っている。

 一方、シュワルツネッガー・カリフォルニア州知事が言うように、景気回復には雇用創出が重要だ。たとえ全米レベルでは景気が回復していようが、シリコンバレーではその回復をさほど感じられない。我々は22万5000人の雇用を失った。企業は株式市場からのプレッシャーにより、支出を抑制し、生産性を上げるために新規雇用を止め、オフショアにアウトソーシングを進めている。これは流行ではない。後戻りしない趨勢だ。これは大企業だけの問題ではなく、スモール・カンパニーにも当てはまる。事実、今やVCは初めから投資先にアウトソーシングを奨励している。

【商業不動産ブローカーの視点:新規雇用が需給バランスを改善へ】

● フィル・マフォニー氏、コルニッシュ&カレー・コマーシャル・インターナショナル社・上級副社長

シリコンバレーにおける2003年の商業不動産の賃貸料は、前年に比べ20〜30%下落した。そうした中でのプラス面は、下落ペースが鈍化している点で、空室率は25%で安定してきている。

しかし、空室スペースは、6500万〜1億平方フィートにも上る。現在、投機目的の不動産開発にはローンが組まれない。ただし、株式市場が回復してきているので、投資家の出口戦略の一つとして不動産投資に資金が回る可能性がある。また、業界では、商業不動産の20〜30%は再リースされず、これらのゾーンが住居向けに再区分されるのではないかと信じる者もいる。もしそうなれば、住宅の需給ギャップが埋まる可能性がある(住宅は需要過多)。

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