米国企業が東アジア進出にあたっての最大の関心事は、知的財産権の保護管理である。
最近では、米国とタイの自由貿易協定(FTA)交渉開始にあたり、米国側からタイに対して、知的財産権の保護およびそのエンフォースメントの改善を求めたのをはじめ、2004年4月にワシントンDCで開催された米中通商閣僚会議(JCTT)でも、米国側から中国に対して、知的財産権侵害に関する犯罪捜査・刑事罰の対象範囲拡大などを求めた。
こうした知的財産権を巡る問題は、米国ハイテク企業の東アジア進出の意思決定プロセスにも大きく反映されている。例えば、ナショナル・セミコンダクター社では、現在、中国にデザインセンターの設置を考えているが、その条件として「中国の法制度が十分に整っていて、知的財産権が保護されるという確証が必要である」という。これは、約2年に亘って、他社の中国シフトに遅れまいと、対中戦略を練ってきた同社の戦略マーケティングVPの言葉であるが、彼の最大の関心事も知的財産権の管理であった。
一方、ソフトウェア大手のA社では、まず、ソースコード自体、中国に持っていかず、本社で徹底した管理を行なっている。また、同社は、中国に開発センターを有しているが、本社以上のセキュリティー体制を敷いており、誰もがアクセスできるものではないという。
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