【月12.95ドルで見放題】
　このサービスは、リアル・プレーヤーを提供するリアル・ネットワーク社（本社：ワシントン州シアトル市）と、ケーブル・衛星テレビの映画チャンネル大手であるスターズ･アンコール・グループ社（本社：コロラド州イングルウッド市）との提携で実現。料金は一ヵ月12.95ドルで、新旧含めた約100のタイトルを、パソコンのハードディスクのスペースが許す限りダウンロードが可能で、視聴回数の制限は無い。ただし、違法コピーを防ぐために、そのパソコン外へはデータの移動はできない。

　同サービスのプレス発表によると、ダウンロードの所要時間は、回線速度やサイズにもよるものの20分以上が目安となり、また画像のクオリティはDVDに近いものであるとのこと。

　なお、同サービスは、リアル・ネットワーク社(http:// movies.real.com)もしくは、スターズ・アンコール社(http://www.starz.com)のウェブサイトから利用できる。

【その他の映画配信サービス】
　現在、米国にはスターズ・チケットと同様に、インターネット経由の映画配信のサービスを供給しているのは、ムービーリンク社（本社：カリフォルニア州サンタモニカ市）とシネマナウ社（本社：カリフォルニア州サンタモニカ市）の2社である。ムービーリンク社は、ハリウッドのいくつかの映画製作会社によるジョイント・ベンチャー。現在、一ヵ月あたり約10万人が利用している。タイトル別のダウンロードで、料金は概ね2.99ドルから4.99ドル。そしてシネマナウ社については、個別ダウンロードと、一ヵ月9.95ドル及び1年49.95ドルのプランもある。

　上記2社と、新たにサービスを始めたスターズ・チケットとの違いは、まずスターズ・チケットでは、24時間もしくは48時間といった再生可能時間の制限がないところである。さらにユーザーは、スターズ・ケーブル・チャンネルで放映される映画をパソコン上でストリーム鑑賞もできるというおまけもついてくる。

【映画ファイル交換への予防】
　実は、リアル･ネットワーク社とスターズ・アンコール社によるこのサービスは2002年12月に発表されている。しかし、当時はまだ米国においては、ブロードバンドの普及率も低く、時期尚早と経営陣が判断したため、これまで実際のサービスの開始は延期されていた。現在、米国のブロードバンド利用世帯も2600万世帯に拡大。さらに、アップル社のアイ・チューンや、リアル・ネットワーク社自身が展開しているラプソディーといった、MP3音楽ファイルの有料ダウンロード・サービスが軌道に乗ってきていることも後押しとなったとみられる。インターネットからダウンロードするコンテンツに、多くの一般ユーザーがお金を払うことが確認されたからである。さらに、米国ではこれまでファイル交換というと音楽ファイルが主であったが、ブロードバンドが普及してくると、映画ファイルも当然その標的になる。事実、ブロードバンド普及が、米国よりも一足早かった日本では、音楽ファイル以上に映画ファイルの違法交換も早くから問題になっていた。映画をパソコンにダウンロードして鑑賞することに、どれだけのニーズがあるかは不明である。しかし、有料音楽ダウンロードが市民権を得てきた現在、あえて今から映画の有料ダウンロードという手段を一般に提供しておくことは、今後の不法交換の蔓延への予防措置としては有効と思われる。