BaySpo 642号(2004/10/22)掲載
カリフォルニア州「性犯罪者情報のウェブ公開」

ジェトロ・サンフランシスコ・センター 田中 一史

田中 一史
東京生まれ。1990年ジェトロ入会。海外調査部アジア大洋州課、マニラ・センター調査部、「世界は今」(日経CNBC等)の番組ディレクターなどを経て、2002年3月、サンフランシスコ・センターに広域産業調査員として着任。

全米では既に45州が性犯罪者の個人情報をインターネット上に公開するなど、性犯罪者に関しての情報公開が進んでいる。こうした中、カリフォルニア州もシュワルツェネッガー知事が先日、これを認める法案に署名したことで、いよいよ同情報のインターネット公開が始める。

【「ミーガン法」の施行】

 米国では、子供たちを性犯罪などから守るために「ミーガン法」と呼ばれる連邦法が存在する。94年7月、ニュージャージー州トレントン郊外に住んでいた当時7歳のミーガン・カンカちゃんが、家の近くを1人で外出した時に、何者かに乱暴された上、絞殺されてプラスチック容器に押し込まれた姿で発見されるというショッキングな事件が起った。後に、犯人は、向かいに住む男らで、以前にも、別の7歳の少女への卑猥行為と殺人未遂の前科があり、性犯罪者を収容する州施設に収容されていたことが判明した。

 

警察や司法当局などに対しては、凶悪な性犯罪者らの地域住民への情報開示や釈放後の監視を怠ったとして、非難が集まった。これを受け、ニュージャージー州では、有罪となった性犯罪者の登録や、釈放後10年間は定期的に監視を行うなどの対策を、州法として定めることにした。同法の名称は、この時の性犯罪者の犠牲となったミーガン・カンカちゃんの名前から付けられた。

 釈放後の性犯罪者への関心は全米的に広がり、同法は96年5月に連邦法として昇格した。その中で、警察による地域住民への性犯罪者情報の開示義務が新たに付け加えられた。また、2003年3月には、連邦最高裁判所が、州政府が刑期を終えて性犯罪者の写真や住所などの個人情報をインターネット上で公示することを合憲としたことで、各州ではインターネット上の情報開示が一気に加速した。今回のカリフォルニア州上院での立法化の動きはこの流れを汲むものである。 

 現在、性犯罪者の個人情報をインターネット上で公開している州は全部で45州にのぼり、公開していない州は、カリフォルニア、オレゴン、ロードアイランド、サウスダコタ、バーモント州の5州となっている。

【入手可能な情報とは】

 カリフォルニア州は、他州の多くと同じように、連邦法である「ミーガン法」の施行により96年から性犯罪者の情報開示を進めている。通常は、性犯罪者が住む地域のコミュニティに警察から通達が出されるシステムになっており、コミュニティ内に性犯罪者の引越しがなければ、通達はない。一方、住民が自宅の近くに性犯罪者がいないかどうかを主体的に調べるには、最寄りの保安官事務所(sheriff office)か警察(police department)に電話で照会することができる。入手可能な情報は、性犯罪者の氏名、偽名、年齢、性別、身体的特徴(刺青など)、写真、罪名、住所などである。

【登録者数は10万人超】

 2004年8月3日時点のカリフォルニア州の性犯罪者登録数は10万1.128人である(同州司法省による)。同州の人口が、3.548万人(2003年推定)であることから、単純に割ると、人口1.000人あたり約2.8人が性犯罪者となる。

 全性犯罪者のうち、重犯罪者(serious sex offender)は8万2.971人で、レイプや暴行、誘拐、売春斡旋などの罪状を持つ。近親相姦や配偶者レイプ、児童ポルノ写真撮影などその他の性犯罪者は1万6.317人にのぼる。

 カウンティ(郡)別では、ロサンゼルス郡に住む性犯罪者が最も多く1万5.561人、次いで、サンディエゴ郡4.060人、サン・ベルナルディオ郡3.513人、サンタ・クララ郡3.500人、サクラメント郡3.448人などと続く。

【子供の安全が最優先】

 子供たちを性犯罪から守ることでスタートした「ミーガン法」ではあるが、問題は刑期を終え釈放された元性犯罪者の社会復帰に対する世論である。今回のカリフォルニア州の改正法案に反対している「アメリカン・シビル・リバティーズ・ユニオン(the American Civil Liberties Union)」のロボコ氏によると、「個人情報の開示は危険に晒されている。同法案には免責条項がなく、20年も30年も前に罪を犯した人もインターネット上で情報が開示されてしまう」と危惧している。

 また、社会復帰した後も、近所からは性犯罪者としてのレッテルが張られ、それまでの付き合いもなくなり、完全に自由が剥奪されると懸念する向きもある。

 しかし、今の米国の世論を見る限り、こうした犯罪者たちのプライバシーよりは、子供たちを守ることが最重要であるとの考えが支配的で、人権問題などに敏感とされるカリフォルニア州でも立法化の可能性が大きい。

 

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