こうしたパソコン業界の90年代のビジネスモデルは、シリコンバレーで、半導体のデザイン論理や回路設計などを行い、半導体プロセスは台湾や中国、シンガポールなどのファンドリーに委託生産し、その他のコンポーネンツは東南アジアや中国等で生産し、現地で完成品を組み立て、米国に逆輸入するといったものであった。実に美しい国境を越えた生産ネットワークの構築である。これ自体には異論がないが、次世代の情報家電(ユビキタス家電)もこうした生産・調達・販売ネットワークが当てはまろうか?答えはこれから数年かけて出るかと思うが、私は、少なくともそのネットワーク構築に日本企業が重要な役割を果すのではないかと考えている。
【今こそ日本の優位性を見直し】
まず第1に、携帯電話とデジタル家電を合わせれば、既に世界には22兆円の一大マーケットが成立しており、パソコン市場の18兆円を凌ぐ勢いである。このマーケットの圧倒的なシェアを有しているのが日本勢である。つまり、デファクト・スタンダードを狙いに行くには現時点で圧倒的なシェアを持っている日本企業との連携が何らか必要と考えるのは自然の流れであろう。もっとも、台湾、韓国、中国、米国勢等も今後の市場シェア獲得を目論み、競争の幕は切って落とされたばかりであるが…。
第2に、高度デジタル情報家電の本格的な時代を迎えるにあたり、日本の垂直統合型企業(IDM)の多くは、高度デジタル情報家電(薄型テレビやデジタル家電向けLSIやASIC等)の開発および生産を日本国内に意識的に残そうとする動きが顕在化していること。その背景として、高付加価値製品の実用化には、歩留まり率の向上等を目的とした開発と生産技術の融合や共同作業が不可欠であると考えられているほか、台湾、中国勢等への生産技術の漏洩懸念などが挙げられる。もっとも、日本企業も汎用品等の生産については東アジア大の生産ネットワークの構築を進め、生産の棲み分けには余念がない。
従って、高度デジタル情報家電時代においては、開発と生産が一体となった製品作りがより一層求められるようになり、その両方を有する日本企業とのアライアンスが必然的に必要になってこよう。
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