最近、米国では、ブロードバンドの普及が他国に比べて立ち遅れているという議論が高まっており、何らかの政策的対応を求める声が出てきています。通信回線のブロードバンド化は、ネットワーク機器大手のシスコシステムズ社などを擁し、通信機産業や電気通信サービスと関連が深いシリコンバレーにとっても、関心の深いテーマと思われます。そこで、今回は米国のブロードバンド化を巡る問題について考えてみます。
【米国ではブロードバンドの普及率が世界第3位から第13位に下降】
近年、インターネットのアクセスには、ブロードバンド(広帯域回線)が利用されるようになり、電話回線を利用した場合と比較して数十倍から数百倍のスピードでの伝達が可能になりつつあります。そこで米国のブロードバンドの普及状況を見てみると、本年9月の商務省のレポートは、家庭でのブロードバンド利用率が2001年9月の9.1%から2003年10月の19.9%と2倍以上に増加したと説明しています(注1)。
ところが、本年10月に消費者団体の米国消費者連合は、この数年間にブロードバンドの普及率が世界第3位から第13位に下降したこと、米国民はブロードバンドにアクセスするのに、1メガビットあたりで日本や韓国の消費者よりも20倍も多く料金を支払っていることなどを内容とするレポートを発表しています(注2)。このレポートは米国の電気通信政策が、米国のブロードバンドの普及を遅らせる結果になっていることを批判するものです。このレポートを作成したマーク・クーパー(Mark Cooper)氏は、「米国は二重の失敗を犯した。ハイスピード・インターネットを他国と同程度に普及させることに失敗し、また持つ者と持たざる者との格差(デジタルディバイド)を縮小させることにも失敗した」と語っています(10月27日「サンノゼ・マーキュリー」紙)。
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