【業績は製造業を中心に改善】
売上高の状況をみると、2002年と2003年の比較において売上が「増加した」と回答した企業は42.8%で前回調査の36.4%から6.4ポイント増加する一方で、「減少した」と回答した企業は31.7%で前回調査の45.9%から14.2ポイント減少しています。業種別にみると、製造業で「増加した」と回答した企業が62.3%に達しました。このように売上については、製造業を中心に好転の兆しが読み取れます。
次に、営業利益の状況をみると、黒字企業の割合が過半数(53.4%)を占めました。また、2002年と2003年の比較において営業利益が「改善した」と回答した企業は46.9%と前回調査の29.0%から大幅に増加する一方で、「悪化した」と回答した企業は21.5%で前回調査の40.3%から大幅に減少しています。業種別にみると、特に製造業で「改善した」と回答した企業の割合が大幅に増加しています(28.6%↓67.8%)。以上のことから、営業利益は改善の方向にあり、特にそれが製造業で顕著に現れていると見ることができます。
さらに、「今後1、2年の営業利益の見通し」という項目では、「改善する」と予想する企業が58.8%と前回調査の51.0%から7.8ポイント増加する一方で、「悪化する」と予想する企業は5.2%と前回調査の11.7%から6.5ポイント減少しています。全般的に企業マインドが好転し企業の収益回復期待も高まってきていると見られます。
【ベイエリアの魅力は「産業集積」がトップ】
ベイエリアの魅力としては、「産業集積」(40.5%)を挙げる企業が最多です。IT産業やバイオ産業が盛んなベイエリアの地域的特性を反映したものと見られます。次いで、「市場の大きさ」(36.4%)、「天候」(33.6%)が続きます。「日本への近さ」(28.2%)を魅力として挙げる企業も多いです。一方で、「日系社会の大きさ」を挙げる企業の割合は前回調査より6.9ポイント減少しています(17.8%↓10.9%)。
自社の現在の業績をベイエリアへの進出などの目的に照らして評価すると、6割弱(57.5%)の企業が肯定的に評価しています。また、今後の業績予想としても、「改善が期待できる」(42.0%)とする企業が「厳しくなる」(16.4%)とする企業を大きく上回っています。
【「雇用コストの上昇」を懸念する企業が大幅増加】
業務運営上の不安材料としては、前回調査と同様に「米国景気回復の遅れ」を挙げる企業が最多でしたが、その割合は大幅に減少しました(80.4%↓60.5%)。「日本の親会社の体力低下」を挙げる企業も減少しています(23.1%↓15.0%)。これらは日米の景気回復を反映していると見られます。一方で、今回調査で大幅に増加したのは、「雇用コストの上昇」(23.4%↓41.4%)、「テロ・戦争の影響」(27.9%↓39.1%)の2つの項目です。
州・自治体に対しては、「雇用コスト」および「税制」への対応を要望する声が強いです。しかもこの2つの項目を挙げる企業の割合は前回調査に比べて大幅に増加しています(「雇用コスト」は45.1%↓58.0%、「税制」は35.3%↓49.2%)。ベイエリアで活動する日系企業は、カリフォルニア州のビジネス環境の悪化を強く認識しているものと見られます。一方で、「電力供給」を挙げる企業の割合は大幅に減少しました(27.7%↓13.3%)。
【医療保険の提供は高い水準】
さらに、医療保険の提供状況をみると、「従業員とその家族」に提供している企業が全体の8割以上(81.2%)に達しました。また、保険料を「100%会社負担」している企業は40.7%、「80%以上会社負担」している企業は33.2%と多数を占めました。このことから、日系企業における医療保険の提供状況は、全般的に高い水準にあるものと見られます。
本調査のフル・レポート(和文)は、ジェトロ・サンフランシスコのウェブサイトで閲覧可能です(注2)。最後に、この場をお借りしまして、調査にご協力いただいたベイエリア日系企業の皆様方に厚く御礼申し上げます。
(注1)本調査は2004年4月〜9月にアンケート調査方式により実施したもので、調査基準日は2004年1月1日現在またはそれに近い決算時期としています。また、ベイエリアの範囲は、サンフランシスコ、サンマテオ、サンタクララ、アラメダ、コントラコスタ、マリン、ナパ、ソノマ、ソラノおよびサクラメントの10郡(カウンティ)としました。
(注2)ジェトロ・サンフランシスコのウェブサイト
http://www.jetrosf.org/index.htm
英文レポートは1月中に公表予定。
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