そして、同氏はこうした多くの争点でパウエル氏の規制緩和の哲学を継承するとみられますが、一律に規制緩和を推し進めると利用者の利益を損なったり技術革新の進展を阻害したりする恐れもあるので、規制緩和策には項目ごとの場合分けが必要であることを指摘する論調となっています。
【WSJ紙はマーティン氏の手腕を疑問視】
論調が大きく異なるのが「ウォールストリート・ジャーナル」紙の社説(3月17日)です。同紙は、マーティン氏がパウエル氏の規制緩和策の実行を弱めてきた側面があることを指摘し、同氏が今後、このような誤りを犯すことのないよう主張している点で異彩を放っています。同紙がマーティン氏の手腕を疑問視する例として特に挙げているのは、パウエル氏が地域電話会社が通信回線網を低額で長距離通信会社に開放することを義務付けている規制を撤廃しようとしたときに、マーティン氏がこれに異議を唱えたことです。同紙はマーティン氏が競争的な市場原理に基づいて行動しないで、AT&Tのような政治的に関連の深い企業の意向に左右されてしまったことを批判しています。そして、マーティン氏の犯した誤りは、同氏が市場原理に反対しているというよりも、それは政治的なご都合主義(political expediency)から生じたものと見ています。このように同紙では、マーティン氏の現実主義や政治的な配慮が、むしろ規制緩和路線の推進に阻害になるという見方を提示している点で興味深いように思われます。
【ホワイトハウスや議会との密接な関係が強み】
最後に、シンクタンク研究員の見解を見ると、パシフィク・リサーチ・インスティテュート(Pacific Research Institute)のソニア・アリソン(Sonia Arrison)氏は、ジェトロ・サンフランシスコのインタビューに答え(3月22日)、「マーティン氏は過去、委員としてブロードバンドの推進などに関して良い仕事をしてきた」と評価しました。そして、「同氏は、カール・ローブ政治顧問やブッシュ政権内部の関係者とも密接な関係を持っている。したがって、同氏が実行しようと試みた政策はどんなものであっても、ホワイトハウスや議会の強い支持を受けることになろう」とコメントしました。
いずれにしましても、マーティン新委員長がどのようにFCCを舵取りしていくのか、今後の動向が注目されると言えるでしょう。
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