少し古い話になりますが、昨年11月にシリコンバレーで開催された公開討論会「TechNet Innovation Summit」では、サンマイクロの共同創業者ビル・ジョイ氏やKPCBパートナーのドーア氏をはじめとする豪華パネリストが、無線インターネットやモバイルコンピューティング等の新分野で引き続き情報技術分野の将来は明るいとする反面、それらの分野で中国、インド、韓国に米国が脅かされつつあるとの懸念を表明しています。そして、その原因の一つとして、米国自身の移民政策により、米国の大学でハイテク分野の最高水準の学位を取得したこれらの国々の留学生が本国に戻り競争力を高めているという点を指摘しています。
また、先月下旬に開催された政府の諮問機関である米中経済安全保障検討委員会は、今や中国は完全なハイテク大国であり、多くの米国企業が中国に研究センターを設立する等ハイテク業務を移転する傾向にあると認めた上で、同国は企業の知的財産権保護の環境整備が整っていないこと、中国政府が安全保障上重要な技術を持つ企業を誘致している等の懸念や意見が交わされていました。
一方でIBMが中国レボノにパソコン部門を好条件で売却して利益を上げつつ、他方で技術や雇用がアジアに流出するといって心配するはいかにも米国的とも言えますが、いずれにせよハイテク産業は、いつの時代も必ずしも無条件、無制限に企業活動が許されるとは限らないという現実と過去の教訓があります。日米双方の企業とも、アジア戦略は十分慎重に見定めるべきでしょう。そうした中で、米国企業にとって、相互補完関係を安心して継続し、アジア戦略を共同で考えるパートナーとして、日本企業とのアライアンスを改めて重視する時期に来ていると言えます。そのためにも、日本人のシリコンバレーでのプレゼンスを飛躍的に高めることが、またとない絶好のチャンスではありませんか。
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