FCC(米連邦通信委員会)は、8月5日、地域電話会社がインターネットサービス・プロバイダー(ISP)へのブロードバンド・ネットワークを開放する義務はないことを、全会一致で決定しました。ブロードバンドに関して、ケーブルTV会社と地域電話会社の間の規制上の不公平を除去し、ブロードバンド・プロバイダー間の競争環境を一定にすることを目的としています。
【DSLを分類変更】
今回の決定は、DSLの分類を「通信サービス」から「情報サービス」に変更するものであり、これによってDSLサービスを提供する地域電話会社は、ケーブルモデムサービスを提供するケーブルTV会社と同様の立場に立つことになりました。今年6月に最高裁がケーブルTV会社は自らのネットワークをISPに開放する義務はないという判決を下したため、DSLの分類見直しが行われることが予想されていました。
FCCは、今回の決定について、「通信手段としてのインターネット利用が増加していること、またケーブル、ワイヤレス、衛星、電線(power line)といった多様なブロードバンドの伝達手段が利用できるようになった市場や技術の変化に対応するため」と説明しています。なお、スムーズな移行を図るため、今後1年間はISPへのネットワーク提供義務が引き続き課されます。
ケビン・マーティン(Kevin J. Martin)委員長は、「今回の決定は、重要なものだ。ブロードバンドに関してケーブルTV会社と地域電話会社の間の規制上の不公平がなくなる」と述べました。そして、「今回の決定によって、利用者はより低価格で、革新的なハイスピードのインターネットサービスを享受できるようになる」と強調しました。
【地域電話会社はブロードバンド普及が加速と評価】
今回の決定の反応を見てみると、ケーブルTV会社と同様の競争条件に立つことになる地域電話会社は歓迎の意向を示していますが、消費者団体などからは競争が阻害されることを懸念する声も出ています。
例えば、地域電話会社のベライゾン・コミュニケーションズは、「今回の決定は、利用者が競争の利益を十分に享受するという国内ブロードバンド政策の実現に向けた重要なステップ」とした上で、「今回の決定によってブロードバンドの普及が加速する。2007年までにすべての米国民にブロードバンド利用を可能にするというブッシュ大統領の目標に近づいた」と賞賛しています。
その一方で、米国消費者団体(Consumers Union)のジーン・キンメルマン(Gene Kimmelman)氏は、「大手電話会社はますます競争を阻害するようになり、技術革新が抑制されるとともに、利用者も高い料金を支払わされることになる」と述べています。
【新聞社説でも「競争」を巡る考え方に相違】
「ウォールストリート・ジャーナル」紙の社説(8月9日)は、今回のFCCの決定を自由市場の原理に沿った判断と捉えて賞賛しています。その一方で、「サンノゼ・マーキュリー」紙の社説(8月7日)は、ケーブルTV会社と地域電話会社によるブロードバンドの寡占が進むことに警戒感を示しています。同紙は、「エコノミストのほとんどが語っているように、寡占状態では競争が不十分で、価格の低下、技術革新の促進、あるいはサービスの質の向上を阻むことになる」と指摘しています。このように、新聞社説でも競争を巡る見解の相違が見られるのは興味深いように思われます。
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