昨年、米国のハイテク業界で、数々のイノベーション・アワードを受賞したスリング・メディア(http://www.slingmedia.com/)。同社は、インターネット回線の通じるところであれば、世界中どこにいても、自宅のテレビ番組をパソコンや携帯電話でリアルタイムに観ることのできる、スリング・ボックスと呼ばれるハード機器を製造・販売するシリコンバレーのスタートアップ。同社は04年の設立からわずか2年足らずで、米国のユーザーに圧倒的な支持を得るまでになった。
そこで、同社の成長戦略や今後のビジネス展望について、同社の創立者兼マーケティング担当副社長のジェイスン・クリコリアン氏に話を伺ってきた。
【起業のきっかけは野球好き】
問:貴社は、米国コンシューマー・エレクトロニクス関連のスタートアップの中で、今もっとも注目を集め、かなり早いスピードで事業を立ち上げているが、設立の背景は?
答:スリング・メディアは私の兄と一緒に04年に立ち上げた。それまで、私は兄とともに、テクノロジー系のコンサルタントをしており、日系企業のコンサルタントもしていた。04年秋にドール・キャピタル・マネージメントとモビウス・ベンチャー・キャピタルの2つのベンチャー・キャピタル(VC)から第1ラウンドの1050万ドルに上る資金調達を行った。そもそも、現在の主力製品であるスリング・ボックスの開発を思い浮かべたのは、私の野球好きに起因している。コンサルタントをしていた02年は、地元の応援球団であるサンフランシスコ・ジャイアンツが非常に強い年であった。しかし、その頃、頻繁に出張に出かけており、大事な試合を見逃してしまうことが多かった。このため、リアル・ネットワークを通じて、メジャーリーグの試合がストリーミングで配信されるサービスがあり、月額15ドルほどのサービス料を支払って、止む無く視聴していたが、このサービスは、私が望んでいないコンテンツも配信され(他チームの試合等)、ほしくないものにお金を支払うのは本意ではなかった。
問:そこで、スリング・ボックスの発明を思い浮かべた?
答:その通り。世界中のどこにいても、サービス料を支払わず自宅のテレビが観られる機器の発明に結びついた。機器自体は現在米国で249ドル、消費者は1回この機器を購入すればあとはずっと自宅のテレビが外出先で観られる。現在、米国では約3000に上る電器屋で発売されている。
【グローバルな商品開発体制を構築、インドを活用】
問:04年の設立以来、商品開発から市場への投入が早いが?
答:商品開発自体は会社の設立前から行っていた。弊社は、最初からグローバルに商品を発売しようと考えていた。このため、いずれ来るべく大手メーカーの参入に対抗するために、グローバルな見通しとコスト構造を構築しなくてはと感じていた。グローバルに商品を売り出すにはグローバルな考えとオペレーションが必要になる。弊社は、シリコンバレーに本社を置き、そこでは約25人の社員が働いており、主にリード商品の開発とマーケティングを担っている。また、インドにも20人強の開発チームがおり、米国本社の指揮下で、開発業務や品質保証テストなどを任せている。米国本社のエグゼクティブの1人は頻繁にインドを訪れ、難しいコミュニケーションの問題を解決している。商品の製造は、OEMでインドネシアにて製造している。弊社のIPはチップに搭載されるソフトウェアにあり、チップ自体はテキサス・インスツルメンツ製のものを使用している。
<ユーザーとのコミュニケーション強化が重要>
問:最近、大手の家電メーカーも類似商品の発売を開始しているが?
答:弊社は、既述の開発体制および開発コストの工夫と、ブログやユーザーとのフォーラムに力を入れ、マーケティングを行っている。ユーザーとの木目細かいコミュニケーションは、大企業では真似できなことで、弊社は、ユーザーの意見を大事にする会社であることをPRしている。一方、大企業はブランド力を持っているが・・・
<日本市場は大きな魅力>
問:最後に、日本市場への参入は?
答:日本市場は大きな魅力である。弊社は米国市場には精通しているが、それが自動的に
日本市場も精通していることにはならないであろう。現在、どういったアプローチが有効か検討している最中である。可能性の1つは、スリング・メディアの自社ブランドでアプローチする方法であろう。また、米国に駐在員する日本人の方にも是非購入いただき、試してもらいたい。特に単身赴任の人は、家族と日本のテレビの話題などでコミュニケーションをとることもできる。
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