JETROでは、2年前の2004年6月にサンフランシスコで開催されたBIO2004への日本企業関係者の方々の出展・参加を全面的に支援申し上げて以来、日本のバイオビジネスと米国との交流が活発になるよう様々な支援事業を進めてきました。今年のBIO2006はシカゴで開催され、36か国から1600社が出展、参加者数も1万8千人に達し過去最大規模となりました。私共BICに入居されているセルフリー・サイエンス社をはじめ日本からも多くの企業が出展され、私自身も参加して最先端のバイオビジネスの熱気を直に感じてきました。(期間中、サンフランシスコに拠点を構える世界的に有名なバイオ投資会社Burrill & Companyのお招きでシカゴの水族館で開催されたパーティに伺いました。サメやエイや熱帯魚が泳ぐ大水槽の前でワインや食事を頂き、まるで竜宮城に来た気分を味わえました。有り難うございました。)
こうした数年間の日米バイオビジネスの交流を通じて、北米に拠点を設けることに関心を持たれるバイオ企業が最近急に増えてきました。その背景には、もちろん世界最大の米国バイオ市場や創薬市場へアプローチしてビジネス拡大のチャンスを狙うという面は確かにありますが、単に市場規模だけでなく、日本のバイオベンチャーにとって米国に拠点を置くことが有利である理由が他にもあります。それは、米国内のバイオビジネス環境が日本より遙かに恵まれているということです。まず、米国政府の薬品許認可期間は日本に比べて数年以上も短期間であり、その数年間は資金繰りの厳しいベンチャー企業にとっては死活問題です。また、同じ研究開発や試験を行うためのコストも米国内の方が日本よりはるかに安く、同じ予算でも米国で実施すれば2倍近くのデータが取得できることになります。
以前に本誌でも御紹介申し上げましたが、JETROでは2001年1月にBICをサンノゼに設立してインキュベーション事業を開始し、日本のハイテクベンチャーの米国進出を支援してきました。過去1年間に、上述のセルフリーサイエンス社、メビオファーム社等のバイオ関連企業にも御入居頂いています。しかし、バイオビジネスを米国で本格的に展開するには、入居に際してオフィススペースのみならず試験・実験施設も必要という声が高まってきました。
そうしたご要望を受け、JETROサンフランシスコでは、本年度から新たにウエットラボ等施設付きの本格的なバイオ・インキュベーション事業を開始することとしました。4月7日に、私共JETRO・BICはB-Bridge Internationalと協力基本合意を締結し、同社内のインキュベーション施設にJETROが支援する日本のバイオベンチャー企業を受け入れB‐BridgeとJETROが共同でインキュベーションを行う体制を整えました。B-Bridge International社と言えば、「あの」桝本博之社長がCEOですからよくご存じの方も多いかと思いますが、2000年にベイエリアに設立され、自ら研究用試薬の研究開発や販売を実施する一方でバイオ・インキュベーション事業を実施しており、日米のバイオビジネスに精通し文字通り両国の架け橋役を果たされています。最近は書籍販売ビジネスも始められ、5月には同社施設をインキュベーション用に大幅に拡充され万全の受入体制が整う予定です。一方、JETROはフィラデルフィアのScience Centerというインキュベーションセンターとも4月7日に協力合意し、北米の東西2拠点で日本のバイオベンチャー企業をお迎えできるよう体制作りを急いでいます。
米国の最近のバイオビジネス環境は、VCの投資動向で見れば2004年に比べて2005年にはIPO企業数が4割弱減少しVC投資総額も減少しましたが、それでも過去第3位の投資規模で、バイオビジネスの関心が低下した訳では決してありません。また、2005年にIPOを果たした27社のうち、創薬系は56%、医療機器系は44%で、2004年に引き続き2005年度も医療器具分野が堅調でした。医療機器と言えば、先日、サンタローザにあるMedtronic社を訪問する機会がありました。同社は心臓ペースメーカや各種の体内埋込型医療器具を開発・製造販売する世界的な企業ですが、同社の製品のほとんどはまさに手作りの世界で、これなら日本は負けない、日本の高品質を求める心と手先の器用さは、バイオや医療機器分野において大変なアドバンテージだと確信した次第です。日本のバイオ企業の方々が1日も早く米国内で活躍されるよう、同事業の積極的な活用を呼びかけてまいります。
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