ブッシュ大統領は、北カリフォルニア訪問の一環として、4月22日、ウエスト・サクラメントにある「カリフォルニア燃料電池パートナーシップ(the California Fuel Cell Partnership)」の本部を訪れ、水素自動車の開発の現状を視察しました。同大統領は、米国は力強い経済とクリーンな環境を同時に達成することができると述べ、クリーンでかつ国内自給も可能な水素は未来の燃料であると強調しました。
【力強い経済とクリーンな環境を同時に達成できる】
「カリフォルニア燃料電池パートナーシップ」は、水素自動車の商品化を促進するための共同の取り組みで、自動車メーカー、エネルギー会社、燃料電池技術の企業、政府機関など、31の企業、組織からなります。トヨタ、ホンダ、日産といった日本の自動車メーカーも参加しています。
ブッシュ大統領は、一連の視察を終えた後、聴衆を前に、「米国は力強い経済とクリーンな環境の二者択一をする必要はない。我々はそれを同時に達成することができる」と語りました。その理由は、「水素エネルギーのような新技術に投資することによって、米国経済が強くなるからである」と説明した上で、「国民は燃料を入手しやすくなり、国家の安全保障が政情の不安定な一部の産油国に左右されるようなこともなくなる」と述べました。
【クリーンでかつ国内自給も可能な水素は未来の燃料であると強調】
続けて、ブッシュ大統領は、「水素は未来の燃料であると固く信じる。水素が自動車の燃料として使われれば、ガソリンは要らなくなり、大気汚染や温室ガスの排出も起こらない」とクリーンな燃料であることを強調しました。また、「水素自動車はガソリン自動車の2倍効率的だ。水素は米国内のエネルギー資源から作り出すことができ、このことは水素が莫大な潜在可能性を持っていることを意味する。つまり、外国産の石油の依存度を劇的に削減することが可能になる」と国内で自給できる水素のメリットについても指摘しました。
さらに、ブッシュ大統領は、「カリフォルニア州で水素ハイウエーを建設するというシュワルツェネッガー知事の宣言に感謝したい」と語りました。そして、「全米州の中でテクノロジーの変化の最前線に位置し続けたのがカリフォルニア州であり、今後もカリフォルニア州に米国をリードしていってもらいたいと願っている」と期待を示し、「知事の取り組みを支持する」と述べました。
【商品化にはまだ時間がかかるとの見方が一般的】
ここで、新聞報道を見ておきますと、水素自動車の技術や今後の普及可能性について論じるものと、ブッシュ大統領の環境、エネルギー政策について言及するものとに大別されます。
前者に分類される報道として、「サンノゼ・マーキュリー」紙(4月23日)は、「燃料電池は水素と酸素の化学反応を通じて電気を発生させるもので、水蒸気しか排出しない」と紹介した上で、「クリーンで再生可能、かつ効率的であるので、エネルギーの専門家からも高く評価されている」と説明しています。しかし、「水素エネルギーの技術は、まだ極めて初期の段階にあり、水素自動車はカリフォルニア州全体でも94台しか走っていない」と述べた上で、「その技術はマーケットではまだ値段が高すぎ、おそらく一般に2010年から2020年にならないと一般には出回らないだろう」と指摘しています。「ワシントン・ポスト」紙(4月23日)は、「水素やエタノールを燃料とする自動車について、政府がもっと多くの研究資金を投下する必要があるということでは広く超党派の合意がある。しかし、自動車メーカーが代替燃料の自動車やトラックを大量生産するという取り組みは遅れている」と述べています。
【現実のガソリン価格の高騰にもっと対処する必要があるとの批判も】
一方で、後者に分類される報道として、「サンフランシスコ・クロニクル」紙(4月23日)は、ブッシュ大統領の環境政策について従来から批判的なカリフォルニア州で、同大統領が水素自動車の開発促進のスピーチをしたことに着目しています。同紙は、「森林、大気汚染、地球温暖化について、これまでカリフォルニア州とブッシュ大統領の政策が一致したことはまれであり、環境立法を通じて両者が対立することがしばしばある」と報じています。また、「ニューヨーク・タイムズ」紙(4月23日)は、ブッシュ大統領はガソリン価格が過去最高の値段をつけた「アース・デー」に水素自動車の支持を訴えたが、民主党議員の中からは水素自動車は遠い未来の話であり、現実のガソリン価格の高騰にもっと対処する必要があるとの批判が出ていることを伝えています。
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