シリコンバレーで活躍するハイテク系の印僑を中心とするネットワーキングや情報交換を目的とするコンベンション「TiECON 2006」が5月12〜13日シリコンバレーで開催された。今年は、日本からもベンチャー関連のミッションが参加した。
【今年も多数の著名人が参加】
TiECONは、インド系ハイテク・ビジネス・パーソンのネットワーキング団体、ザ・インダス・アントレプレナーズ(TiE)が毎年開催しているもの。シリコンバレーで開催されるエスニック・グループ主催の数あるコンベンションの中でも最大の集客規模を誇り、今回は約3,800人の関係者が集まった。
各界の著名人もTiECONを重要視しており、今年はアーノルド・シュワルツェネッガー・カリフォルニア州知事や、民主党全米委員長のハワード・ディーン議員、全米ナンバーワンのベンチャー・キャピタルのファーム、クライナー&パーキンズ・コーフィールド&バイヤーズのパートナーのジョン・ドーア氏、ハリウッドの映画プロデューサーのデビッド・リンチ氏などが基調講演を行った。
【シュワ知事、教育の重要性を訴え】
とりわけ、人気があったのはシュワルツェネッガー知事の基調講演であった。同知事は基調講演の中で、自らの起業の成功体験などを披露し、どのようにオーストリアの移民がカリフォルニア州知事になったかを語った。
同知事は、カレッジ時代にはマーケティングやファイナンス、マクロ経済などを勉強し、ボディビルディングによる賞金を元手に不動産ビジネスへ投資し、成功したことを述べた。こうした成功の背景には、教育が重要だったとし、再選に向けた公約でも、教育の重要性を訴えるとの方針を示した。
なお、同知事は、2年前の知事就任時に州財政の赤字を理由に教育関連予算を削り、教員団体などから厳しい非難を浴び、支持率が大きく低下しているといった事情もある。
【「グリーンテック」が注目の投資先】
一方、アマゾンやグーグルの企業育成に当たったジョン・ドーア氏の言動にも注目が集まった。同氏は、クライナー&パーキンズ・コーフィールド&バイヤーズにいる10数人のパートナーが5年前は白人だけだったが、最近は中国系女性なども加わっていると述べた。
これは、世界的に成長が期待されるベンチャー企業が白人主導の会社だけではなくなってきており、投資機会が世界に分散されてきたからだという。また、今後の投資対象としてエネルギー効率を上げる技術や環境関連ビジネス(「グリーンテック」と表現)に注目していると述べた。
【NTTドコモUSA・小野社長、日本人初のゲストスピーカーに】
06年で13回目を迎えるTiECONだが、実はこれまで日本人はパネルディスカッションで話したことはあっても、ゲストスピーカーとして業界のビジョンを語るケースはなかった。どちらかというと、TiECONは米国の大企業と印僑系アントレプレナーの集まりとの印象が強かったので、これまで日本企業からの参加者も非常に少なかった。
そうした中で、NTTドコモUSAの小野伸治社長が日本人初のゲストスピーカーとして招かれ、NTTドコモの技術ロードマップやビジネスモデル、「お財布携帯」など新しいのサービスなど紹介し、大きな関心を集めた。TiE幹部らは、今回の小野社長の参加を極めて高く評価し、日本企業とのアライアンスや情報交換に大いに興味を示していた。
一方、日本のベンチャー企業関係者20数人も今回初めて参加した。これは、TiEの創設にもかかわったシリコンバレーの日本人メンターとして知られるエンジェル投資家の平強氏がアレンジしたミッションで、横浜を拠点とするツナミ・ネットワークの関係者や、「20代&30代起業家交流組織」代表の小泉博之氏などが参加した。参加者は、TiEシリコンバレー支部会長のラジ・ジャシュワ氏をはじめとするTiEの幹部や印僑のアントレプレナーなどとも意見を交換した。
印象的だったのはTiEの幹部が「TiEは印僑のアントレプレナーを支援しているのではなく、全世界のアントレプレナーを支援している。TiECONが成功しているのは国籍を一切排除したため」と分析している点だった。通常、エスニックの団体は、自国企業の推進を第一に考えるため、当該国に関係のない人は興味や関心を持たず、限定的な組織となってしまう傾向があり、結果的に自国の人材のチャンスを喪失させてしまうきらいがある。
また、TiEの特徴として成功したアントレプレナーが後進のためにメンター役となって自主的に会が運営されている点と、米国大企業の幹部が大きくコミットメントしている点がある。特に、TiECONの開催中は、ヒューレット・パッカードやインテル、グーグル、IBMといったインド人社員を多く抱える米国大手ハイテク企業の上級エンジニアクラスの人材が出展者テーブルのセットやスピーカーの案内役といったロジスティック面でコンベンションを支えていた。
日本ではこの手のコンベンションの場合、通常、事務局やスタッフがロジを行うのが慣例で、複数の大企業関係者が一堂に会して行うことはない。米国企業のこうしたやり方は大変興味深くそれだけ、米国企業が印僑のリソースを重要視している表れだろう。
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