| グーグルは6月21日、本社所在地のマウンテンビュー市で進める無料公衆無線LAN計画の詳細を明らかにした。計画によると、同サービスでは既に進んでいるサンフランシスコでの計画より高速の回線を提供し、個人のセキュリティー対策にも万全を期す。
【今夏にサービス開始】
これは6月21〜23日にサンフランシスコで開催されたテクノロジー関連のコンファレンス、「スーパーノーバ2006」で、グーグルのプロダクト・マネジャー、ラリー・アルダー氏が明らかにしたもの。同社広報部からの正式な発表はまだされていないが、今夏にも、マウンテンビュー市の一部でサービスを開始し、本格的な提供は2006年後半になる予定。
グーグルは、検索エンジンの会社として知られるが、近年、ポータルサイトでの広告収入を上げるために、さまざまなサービス(地図検索やインターネット電話など)を無料で提供しており、無料公衆無線LANサービスもその目玉の1つであった。同社の本社所在地であるマウンテンビュー市はシリコンバレーのほぼ中央に位置し、近郊にはインテルやヤフー、アップル・コンピュータなどの本社も集積している。
マウンテンビュー市市議会は05年11月、グーグルが提供する無料公衆無線LAN計画を満場一致で承認。今までの準備が進められてきたが、詳細は明らかにされていなかった。
一方、同社はサンフランシスコ市での無料公衆無線LAN計画にもアースリンクと連合のかたちで名乗りを挙げていた。06年4月に、同市は同計画の実現に向けてグーグル・アースリンク連合と優先交渉に入ることを通達。この計画は、広告収入を基盤としてグーグルが300Kbpsの公衆無線LANサービスを無料提供し、それ以上の回線速度(1Mbps〜)はアースリンクが月額20ドルでサービスを提供する。
【プライバシーの保護に留意】
今回、発表されたマウンテンビュー市での計画では、a.広告掲載は行わない、b.回線速度は1Mbps、c.約35個のノードを市の街灯柱に設置し、12平方マイル(約31平方キロメートル)の地域をカバーし、約7万人が利用可能、d.個人のプライバシーを保護するために、ログイン時に、個人名やアクセス場所は問わない。ただし、アカウントが不正利用された場合、利用を中止させる、e.無線の届きにくい屋内での利用は無線LANモデムの購入を推奨する。
この計画は、サンフランシスコ市より早い回線速度を提供するほか、全米で急速に関心が高まってきた公衆無線LAN利用時のプライバシー保護の問題にも留意した内容となっている。特に、同社では、ユーザーのプライバシーを守るために、「グーグル・セキュア・アクセス」と呼ばれるデータ転送時の暗号化ソフトを無料配布して注意を呼び掛けている(現在、同サービスは利用者が殺到したため一時的に中止している)。同社では、マウンテンビュー市での計画を、他地域へのサービス展開に先駆けた重要なパイロット・プロジェクトと位置付けている。
【個人情報のグーグルへの集約化に懸念の声も】
同社の無料大衆無線LAN計画について、熱狂的なグーグル・ウォッチャーたちから(各ブログなどの中で)、a.グーグルは若い会社であるため、行政の官僚的な組織とうまく付き合えるか(公衆無線LAN事業は公益事業のため)、b.街灯柱等に機器を設置するユニオン・ワーカーとうまく付き合えるか、c.なぜ、無料サービスなのにアカウント名を入力しなくてはならないのか(結果、グーグルが個人のプライバシーを握ってしまう)など、辛らつな意見も聞かれる。
特に、米国では、世界のインターネット・ユーザーの増加(=グーグル利用者の増加)に伴い、グーグルという企業が世界の個人情報を握りかねないと懸念する声が高まっている。このため、しばらくは同社の無料公衆無線LAN計画の話題と相まって、インターネットと個人のプライバシー保護の関連で議論が高まりそうだ。
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