本号で「シリコンバレー発ビジネス最前線」も100回目の掲載を迎えることになりました。
これも偏に読者の皆様のお蔭と心より感謝申し上げます。引き続き、身近で聞いたり、仕事を通じて得た情報を元に執筆できればと精進して参りますので宜しくお願い申し上げます。第100回目の本号では、ジェトロ・サンフランシスコ・センターと北加日本商工会議所(JCCNC)が隔年で実施しているベイエリア進出日系企業の経営実態調査の一部内容を2回に亘って紹介します。これによると、2005年度の日系企業の業績は概ね安定的に推移しているものの、今後の見通しについては、景気の動向やエネルギー価格の上昇などを懸念する声が高くなっています。
【543社の日系企業の存在が確認】
この調査は、ジェトロ・サンフランシスコセンターおよび北加日本商工会議所(JCCNC)が隔年で実施しているもので、今回で第8回目となる。2005年12月時点でサンフランシスコ・ベイエリアに存在すると想定された日系企業910社にアンケート調査を実施し、543社が日系企業と確認された。アンケートの回答企業は207社、回答率は38.1%であった。
【売上は概ね順調】
回答企業207社のうち、2004年に比べて、売上高が増加した企業は、全体で45.4%と、前回調査の42.8%より微増となった。しかし、横ばいの企業は37.2%と、前回調査の25.5%より大幅に増加したほか、減少した企業も、17.4%となり、前回調査の31.7%より大幅に改善した。こうしたことから、全体として日系企業の売上は概ね順調と評価できよう。
【営業利益も概ね順調】
2005年の営業利益が『大幅な黒字』と回答した企業が6.3%、『やや黒字』と回答した企業が50.7%と、両者合わせて約6割近い(57.0%)企業が黒字となった。前回調査の両者の合計は53.5%であった。特に、金融業や製造業の手堅さが特筆される。また、前回調査では『やや赤字』と回答した企業が22.1%あったが、今回調査では、13.0%となり、総じて日系企業の営業利益は改善に向かっているといえよう。
次に、2004年と比べて、営業利益が『改善した』と回答した企業は38.6%に上り、前回調査の46.9%と減少した。これは、米国経済の回復に伴い、前回調査の2003年はITバブル崩壊の影響を受けた2002年に比べて、リストラや人員削減等により営業利益は改善したものの、2004年、2005年と年月の経過とともに新たな設備投資の必要性等、多面的な要素が相重なり、営業利益の改善が出にくくなっている側面もある。既述のとおり、日系企業の約9割は黒字か横ばいの状況にあり、必ずしも経営状況の悪化による営業利益の縮小というわけではない。今後1〜2年の営業利益の見通しについては、『改善』と回答した企業が45.9%に上ったものの、前回調査では58.8%であったことから、やや慎重な態度に転化している。これは、国際原油価格の上昇や米国政府による利上げ観測など、世界経済の先行きに不透明感が増していることも一因と推察される。
【日系企業の懸念材料は『景気動向』と『エネルギー価格の上昇』など】
日系企業が抱える今後の業務運営上の不安は、『景気動向』が最大で75.4%に上った。前回調査は60.5%であったことから、景気の動向に対して悲観的な見方が広がっていることが伺える。その背景には回答項目にもあるように、『エネルギー価格の上昇』(37.2%)や、『金利上昇』(16.9%)などが挙げられる。
『雇用コストの上昇』については43.5%で、前回調査(41.4%)と同様に、シリコンバレーを中心とするベイエリアの雇用コストの上昇圧力に対して不安を抱く企業が多い。
また、『中国製品等との競争激化』に不安を抱く企業は21.7%に上り、前回調査に比べて5.3%ポイント増加していることは特筆される。
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