BaySpo 843号(2006/10/27)掲載
フェースブック買収の噂に見られるSNSの勢い

ジェトロ・サンフランシスコ・センター 星野 岳穂

星野 岳穂(ほしの たけお)
 
1962年生まれ、東京都出身。1987年通商産業省(現 経済産業省)入省、電子機器課、地球環境対策室、航空機武器宇宙産業課、原子力産業課、鉄鋼課等に在任し、主として産業振興、技術開発政策を担当。2004年7月、JETROサンフランシスコに勤務。

 去る10月9日にGoogleによる動画配信ビジネスYou Tubeの買収、しかも16.5億ドルという創業以来初の巨額買収成立という衝撃的発表が世界中を駆け巡ったのは未だ記憶に新しいところですが、その際、関係者から流れた様々な観測の中の1つが、これを刺激にヤフーのフェースブック買収交渉も一気に進むのでは、というものです。フェースブックと言えば、僅か2年前に大学生向けに始めたソーシャル・ネットワーク・サービス企業で、今や1カ月で1400万件もの訪問者数を抱える全米第2位の堂々たるSNS代表企業。フェースブック買収の噂はYou Tube以前からあったので先を越されてしまったわけですが、最近いよいよ「本格的交渉に突入、買収額は最大10億ドル」とまた大きく騒がれ始めており、成り行きが注目されています。買収交渉が難航している最大の理由が、希望買収額の大きな隔たり(ヤフーの7.5億ドルの提示に対してフェースブックが20億ドル)ですが、GoogleのYou Tube買収で相場ができたことは両社の交渉にも少なからず影響を与えているでしょう。最大のライバルであるグーグルに先を越されているSNS分野で若手層に圧倒的支持のあるフェースブックを取り込むことは、今後のビジネスを展望すれば必須と考えているはずです。既にSNSで全米第一位のマイスペースも買収されており、フェースブックにもこれまでバイアコムやマイクロソフトもアプローチしていることから、さすがにこれ以上交渉に時間を費やすのも双方にとって得策ではないでしょう。

 さて、そのソーシャルネットワーキング(SNS)、若者の間では大人気どころか、今や携帯電話と同様に、利用していない方が不自然なほど。あまりご縁の無い方々も、つい先月日本のSNSミクシィが東証マザーズに上場、315万円の買い気配値で初値がつかないという大ニュースがあり、SNSの勢いを再認識されたのではないでしょうか。SNSは社会的ネットワークをインターネット上で構築するサービスのことで、加入には知り合いの紹介が大原則で、要すれば笑っていいともの「友達の輪」をネット上で広げていくようなものです。これだけ世の中騒がれているのに、自分では入りたくても入れない、だから友達から入ってみる?と誘われれば、そこで直ぐ入っておかないと疎外されてしまうのではという人間の心理も働いているのでしょう。常時接続のブロードバンド環境が普及したことも背景に、インターネットの利用目的が最近1〜2年間で大きく進化していく中で、今やブログ、ストリーミング、メッセンジャー等とともにSNSがネット利用の大きなウエイトを占めるに至っています。日本でも現在1000万人位がSNSに参加しているはずです。シリコンバレーでは土地柄、立食パーティ的な現実社会のネットワーキングも盛んですが、それでも一回に数十人から数百人程度、しかも、ある程度に達すると、その後はどのパーティーでも会う人が同じという状況になりかねません。その点、ネット内でのバーチャルパーティーは、会員数が数百万というレベルですから、ひょんなことから遠い昔の思い出の人とばったり出会うという、ドラマやヒット曲でしか起こり得ないような偶然にも、ハイテクのおかげでネット上で本当に実現できるという期待感もあります。人気の秘密は内々そんなところにもあるのでしょう。

 残念ながら私自身は、とある友人の勧めで登録はしたものの、ネット上だけで知り合って仲良くなるという感覚が未だ理解できず、片方で個人情報保護の嵐が吹き荒れていながら、一方でSNSでは皆がこぞって自ら写真も載せ交友関係や日記まで公開してしまう、いくら友達の輪だといってもほとんどは知らない人なわけで、この両者のスタンスのギャップにちょっと戸惑いを感じてしまいます。やっぱり、生まれた時からパソコンとネットのある若者世代とはライフスタイルや意識の断絶があるってことか、と思っていたら、何と最近はSNS利用者は中高年層に一気に広がりつつあるとのこと。世代のせいにしようと思ったら、単にデジタルデバイドだったのでした。

 なお、このSNS、元をたどればスタンフォード大学卒業生が始めたフレンドスターが最初。先見の明がありながら、わずか1〜2年の差でネット技術がニーズに追いつかず大ブームを起こしながらも最盛期のトラフィック量に対応できずダウン、その後後発のマイスペースに美味しいところをごっそり持って行かれてしまいました。ベンチャービジネスも、政治や芸能、スポーツと同様に多くの人々を動かすほどにまで成功するには、つくづく強運が必要なんだと感じます。

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