BaySpo 847号(2006/11/24)掲載
「iPod」対「Zune」
〜音楽動画配信プレーヤーは大競争時代に入るのか〜
ジェトロ・サンフランシスコ・センター 星野 岳穂
星野 岳穂(ほしの たけお)
 
1962年生まれ、東京都出身。1987年通商産業省(現 経済産業省)入省、電子機器課、地球環境対策室、航空機武器宇宙産業課、原子力産業課、鉄鋼課等に在任し、主として産業振興、技術開発政策を担当。2004年7月、JETROサンフランシスコに勤務。

 ついにあのマイクロソフトがiPod対抗機の「Zune」を市場投入、ウォルマートやターゲットをはじめ全米3万店以上での一斉販売が始まりました。最近のMSと言えば、Vista発売が遅れ同社の苦悩の様子が伺われますが、ことZuneに関しては、結構前から匿名幹部が内々認めるという報道があるなど巧妙に噂を流し、7月には正式に計画発表、9月には製品発表と結構周到かつ着実にアナウンスを進め、予定通り年末商戦前の今月14日の発売開始となりました。価格も249.99ドルで、ある意味波乱無く一安心というところです。これによって、デジタル携帯音楽・動画プレーヤーの大競争時代の幕開けになるのかどうか、注目が集まるところです。

 ご存じアップルのiPod、既に米国内では75%近い圧倒的販売シェアを誇り、世界でも5割以上がiPod愛用者。振り返ってみればiPod発売から5年も遅れてのZune投入は「満を持した」ヒット商品なのか、いや、今さら遅すぎだ、などと今年の夏頃からネット上でも盛んに議論されています。色々読んでいると明らかにiPodが優勢。先日、ある機会でアップルを訪問しCFOのオッペンハイマー氏から直近の業績を拝聴しましたが、今や超・絶好調。iPodやiTSはもとより、会社の屋台柱であるiMacも、パソコン市場全体の伸びがゼロの中で一気にシェアを拡大、iPodとのシナジー効果を存分に発揮している様子を自信たっぷりに話しておられました。かつてマックで先行しながらもマイクロソフトに追撃され苦難の道を余儀なくされたこと、つい2年前頃までの株価低迷期に身売り話が飛び交ったことなど、現在のアップルにとっては遠い昔話のようです。そして今やTVチューナーBOXでTV番組まで完全に射程に入れたiPod、これだけ年々進化するスピードにマイクロソフトが本当に追撃できるのかという疑問の声は小さくありません。iPodとZuneの互換は当然ありませんから、既に囲い込んでしまったiPodユーザーの切り崩しは不可能、脅威にはならないという見方です。

 他方、そうはいっても巨人マイクロソフト、苦しみながらもエンタテイメント分野への参入に真面目に力を注ぎ、ゲーム機「Xbox360」もいきなりプレステとの大激突というのではなく徐々に、少しずつファンを増やし足場を固めつつあります。ビルゲイツ氏引退表明後、同社の最有力ポストに就いたクレイグ・マンディ副社長は、マイクロソフトが「クールな企業」には未だ完全に変身できていないと認めつつ、それでもX360とZuneは「クールな製品」だと自信を持って紹介しています。

 iPodとの差別化という点では、ZuneではFMラジオが聴ける、Zune間で無線通信可能で音楽や写真を送信し合える、更には上述のXbox360との間で映像のやり取りができること等が挙げられます。確かに、ゲーム機との連携はアップルは手が出ないところですが、その手前のところで見ても、世の中急速に音楽配信から動画配信の時代に移りつつあるこの時期、アップルといえども映画配信は始めたばかりだしコンテンツも未だこれからですから、Zuneがそのあたりから突然割り込むという戦略は一理あります。Zuneの画面は縦でも横にしても見られるようになっていますから、明らかに動画を意識して中心に据えたコンセプトになっています。もっとも、コンテンツのWiFi転送は、消費電力のことも考えると少なくとも現時点でどこまで歓迎される機能になるか分かりません。単なる過剰機能で終わるのか、それともiPodのポッドキャスティングのように、Zuneが予想できない新たな文化を新機能で創り上げるのか。これだけ消費者の心を捉えきったiPodには、FM機能も無線機能もあえて付けないわけですから、この当たりは技術はではなく商品コンセプト競争で、時代や流行で潮目が変わる可能性はいつでも否定できません。実際、アンケートによれば、iPod利用者の過半数はZuneも使ってみたいそうで、そもそもWeb2.0時代、パソコンでも携帯でもハードでピン留めする時代はもう過ぎ去ってますから、要はサービス勝負という、ますます厳しい時代になったということでしょう。

 そのZune、ハード生産は東芝がほぼ丸抱えで、日本人の私としてはちょっと嬉しい反面、ハード委託生産だけでなく、この分野で日本企業ももっと正面から世界相手に大きく打って出て欲しいという思いが益々強まります。やがては音楽・動画配信プレーヤーは携帯電話に集約されていくのでしょうが、それまでに日本頑張れ!という感じです。しかし、それにしても日本のiTuneの曲数の少なさ、お願いだからもうちょっと何とかならないものでしょうか…。

有澤保険事務所

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