本紙10月27日号でソーシャルネットワーキングサービス(SNS)の御紹介をしましたが、特にこの1、2か月で大変な話題になっているのが、サンフランシスコにあるリンデンラボ社の「セカンドライフ」。通常のSNSと違うのが、リアルタイムであることと、何と言っても3Dであること。インターネットの中に3Dで描かれたバーチャルな世界があたかも本当の世界のように拡がり、そこに自分の分身(アバタ)を置いて生活するというものです。オンライン3Dと聞くとゲームのようですが、セカンドライフは敵と戦ったりするようないわゆるゲームではなく、こちらの現実世界に限りなく近い、もう1つ別の世界を仮想的にコンピュータ内に作り上げ、そこで各自が経済社会を営むというのがセカンドライフです。アメリカ人の間では、セカンドライフは若者中心に結構前から知られていたようですが、年内に日本語版上陸というニュースが流れ、私たち日本人の間でも急速に知れ渡り始めました。もちろん、日本語版が出るからというだけで騒がれているだけでなく、米国オリジナルのセカンドライフ自身が、2006年に入って火がつき、年初には10万人程度だった参加者数が、夏には30万人、先月100万人突破と思ってみていたら今月はあっという間に140万人を超えるというすさまじい勢いです。報道もやや過熱気味になり、2005年のユーチューブの再現だとの声も出ています。もっとも、騒がれているとはいえ日本での本格的な認知はこれから。今、カタカナで「セカンドライフ」と検索すると、未だ検索上位には「定年後の人生を楽しく」のサイトがずらっと並んでいますから。
でも私たち米国在住の皆様であれば、とっくに参加しておられる方も多いでしょうし、百聞は一見にしかず、日本語版を待たずに今晩からでも早速始めてみることをお勧めします。とにかく衝撃モノです。目的も質もやや違うとは言え、これまでのブログもSNSとも違うネットサービスで、本当に3Dの現実そっくりの空間がディスプレーを窓にして広大に展開しています。2003年に250人で始まった16エーカーに相当する仮想世界の広さが、今や数万エーカーという広さになり、今となっては1人のアバタ(自分の分身)が全ての土地を見て回ることは不可能な広さだそうです。
突然「土地」の話になりましたが、セカンドライフの基本は土地。バーチャル世界には無料で入れますが、その中で本格的に生活あるいは経済社会に参加しようとする方は、10ドル払って1単位土地を購入するというシステムなのです。土地を買った人は毎月固定資産税を払うことになりますが、買った土地には、自分の家でも店でも、自由に自分で設計デザインをして建物を建て、経済行為を行います。参加者は、セカンドライフ世界内で商品を創作したり、現実世界の商品をアップして、セカンドライフの中で売買することができます。驚くなかれ、参加者間での売買すなわちセカンドライフの経済規模は、現在で既に年間数十億円以上に達しているのです。中には年収1千万円を超えるユーザーもいるとか。大学の中では授業が開かれ、有志が集まり映画を制作・上映し、コンサート会場では本物のスターが熱唱、大手アパレル企業はこの仮想世界にも店を出し、有名ホテルはバーチャル世界にもホテルを建てて泊まり心地を確かめてもらい、気に入れば現実世界でもお泊まりいただくという戦略を開始。今や、ソニーもトヨタもアディダスもインテルも、大手企業が続々とセカンドライフに進出し中で繰り広げられる各種イベントのスポンサーになって広告を出しています。ちなみに広告第一号はコカコーラ。こちらの経済社会が、真剣に「もう1つの現実」を作り始めている、これはすごいことです。従来には無かった総合ネットサービスとして大化け間違いなしでしょう。
そうなると、またまた頭をよぎるのが、「セカンドライフを買収するのは、誰か」。グーグルが自らの「コミュニティー」獲得に走るのか、あるいはヤフーがグーグル追撃のために大勝負に出るか。アマゾンドットコムかeBayがオンライン売買の世界を制すのか。もしかして、突然ウォルマートの参戦もあるか?なんて考えているうちに夜が明けてしまいました。本稿執筆に当たり、長谷川乾さん、大澤佳純さんにはお世話になりました。この場を借りて御礼申し上げます。
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