あっという間にクリスマスシーズンになりました。本年も、皆様の暖かいご支援に支えられ、JETROも充実した活動を進めることができました。一同、改めて御礼申し上げます。ベイスポの皆様にも大変お世話になりました。ありがとうございます。
さて今回は、現在リスナー数が激増中の「Pandora(パンドラ)」という音楽インターネットラジオサイトの御紹介です。ベイエリアの皆さんは既に愛用されている方も少なくないと思いますが、サイト立ち上げ僅か7カ月で250万人のリスナーを獲得し、今や数百万人以上が利用。最近は日本でもその存在がどんどん知れ渡り、ブログでも賞賛の声ばかり。インターネットラジオというだけであれば、iTuneでもお馴染みで今さら驚くことでもないのですが、パンドラの凄いところは、聴く人の好みの曲を次々に自動選曲して(要すれば勝手に探してきて)ストリーミング配信し続けてくれることです。最初に自分の好きな曲かアーティストを入力すると、「それだったら、こんな曲はどう?こちらもきっとお気に入りのはずですよ」とその曲調や雰囲気に近い曲が流れてきます。しかも全曲完全フルコーラスです。これは、すごい。
でも、アマゾンドットコムやiTuneでもお勧め商品の推薦機能は見慣れているし、それほど驚くことでもないのでは?と思われるでしょうが、パンドラがブレイクしているのは、「音楽ゲノム・プロジェクト」だからです。音楽を学問として修め音楽理論を理解しているという本格的な現役ミュージシャン数十名が、全米中の膨大な楽曲を1曲毎に、曲調やテンポ、歌詞、進行コードといった曲の構成要素、すなわち音楽の「遺伝子」を細かく解析し、データベース化していることです。1曲につき30分を費やして本格的に解析し、今では数十万曲以上の「音楽ゲノム」情報取得を終えているとのこと。毎月1万5千曲のペースで解析をし続けているそうです。アマゾン等のお薦め機能は、各顧客の行動、つまり中森明菜のCDを買った多くのお客さんは松田聖子のCDも買っている、だから中森明菜を検索したあなたにも松田聖子をお薦めしますよという仕組みですが、これは曲自体ではなくむしろ同時代のヒット状況に影響されますし、多数の顧客の好みを披露し合うだけですから、いわゆる「知られざる名曲」には到達しません。パンドラの仕組みは音楽そのものを解析して推薦するため、自分の好みにあった未知の曲にばったり出会うことがあるわけです。全米だけでも、1年間にリリースされる曲は3万曲近いのに、そのうち「売れる」曲は僅か5千曲。残る曲の中には、曲が駄目なのではなくプロモーションできずに日の目を見なかった名曲も相当あるのではないでしょうか。そこが、パンドラの人気の秘密です。
パンドラで聴いた各曲には、リスナー(自分)が「確かにこれは好み」「これは、違うよ」という自分の判断を入力し、それによってお好みをより正確に絞り込んで選曲してもらえる上、ちゃんとアマゾンとiTuneにリンクしていて購入もできる至れり尽くせりのサイト。
このパンドラ、当初は有料でしたが、現在は広告収入とアマゾンやiTuneの手数料、そして広告不要の方は有料会員という収入モデルを確立。著作権の方も、特定の曲そのものはリクエストできないとか、気に入らない曲のスキップは1時間に何曲までとか、結構しっかりライセンス関係を考えているようです。そして何より、またしても世界中にインパクトを与えているこのパンドラという会社の本社もサンフランシスコ、創業者のWestergren氏はスタンフォード大学卒。しかも、最初の会社がドットコムバブル崩壊で倒産、10年間プロのバンドメンバーとして音楽演奏ツアー経験をした後、再度起業に挑戦し成功を収めるという、まさに「シリコンバレー起業物語」の典型例。成功といっても、Webビジネスだし収入の方は未だほとんどないんじゃないかと心配していたら、11月末、MSNが密かにパンドラを買収していたそうです。ほとんどニュースが流れておらず、気づきませんでした。Exitとしては大成功ですね。
残念ながら著作権の関係で、海外の曲をパンドラにアップするのは難しいそうです。日本の曲も聴けません。まあそれは仕方ないと諦め、娘の影響でCheetah Girlsをリクエストしました。出てきたお奨め4曲目は、何と浜崎あゆみ!真夜中におおっ、と身を乗り出して聴いていたら、その次がマドンナ。なるほどねぇ〜、確かに遺伝子がどこかでつながっているような…なんて妙に納得する、別の楽しみ方もあります。未だの方、是非お試しを。それでは、素敵なクリスマスを、パンドラとともにお過ごしください。
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