BaySpo 906号(2007/02/09)掲載
シリコンバレー、完全復活宣言
〜シリコンバレー・インデックス2007に見る「競争と協調」戦略〜
ジェトロ・サンフランシスコ・センター 星野 岳穂
星野 岳穂(ほしの たけお)
 
1962年生まれ、東京都出身。1987年通商産業省(現 経済産業省)入省、電子機器課、地球環境対策室、航空機武器宇宙産業課、原子力産業課、鉄鋼課等に在任し、主として産業振興、技術開発政策を担当。2004年7月、JETROサンフランシスコに勤務。

 「Silicon Valley is back!」2月2日に開催された今年のState of the Valley Conferenceは、自信に満ちたこの宣言で始まりました。毎年この時期に開催されるJoint Venture主催の本イベントでは、過去2年間、幾つかの経済データを基にシリコンバレーが回復の兆しを示していると強調しつつも、本当にそれが将来も持続するのか不安を払拭きれない雰囲気が漂っていましたが、今年は、打って変わってオープニングから堂々とした完全復活宣言。
 毎年この時期、数百名以上が集まるこのイベントは、過去1年間のシリコンバレーの動向を詳細に分析したレポート「シリコンバレーインデックス」の発表会に当たるもので、毎年、地元の大物が駆け付けてレポート分析を踏まえたスピーチや議論を繰り広げます。今年はサンノゼのコンベンションセンターで開催され、グーグルのシュミッドCEOやKPCBのジョン・ドーア氏をはじめ壮々たるメンバーが名を連ね復活宣言に華を添えました。そして、スピーカーのトリはあのゴア元副大統領でした。
 私の印象では、今年のシリコンバレー・インデックスには4つのポイントがありました。あらゆる経済指標の好転、エネルギー関連分野の台頭、ますます国際化する人材、そしてハイテク日本への期待感です。

【今年の経済成績、通信簿オール5】
 個人の才能と努力が資産のシリコンバレー、やはり地域人口や雇用人口が最重要な指標と言えます。バブル期以降減少の一途を辿った人口は、2005年に漸く反転して微増となり、その勢いが持続するか否かが注目されていましたが、2006年は更に大きく増加、今や99年時点の人口を抜き去り一気に人々が戻ってきました。最近また交通渋滞が厳しくなってきたのも頷けます。VC投資も足踏みした2005年から今年にかけて再び増加、全米におけるシリコンバレーの地域別投資額シェア数値も、昨年バブル期以降初めて微減しましたが、2006年は再び増加傾向に戻り、ダントツの第一位。失業率も02〜03年をピークにずっと減少し続け、06年には4%にまで戻っています。

【新エネルギー分野への投資が急増】
 そうした状況の中、指標で一際目立ったのがクリーンエネルギーへの投資です。バブル崩壊以降の分野別VC投資では、額自体で見ればソフトウェアが不動の第一位ですが、01年から05年までの伸び率で見ると、メディア・エンタテイメント関係が7割増、バイオ関連も3割増と好調振りを示していますが、クリーンエネルギーは実に778%増という勢い。もちろん額が小さいので伸び率自体をもってITやバイオと一律に論じることはできませんが、元々環境問題に積極的なカリフォルニアでもあり、ブッシュ大統領やシュワルツネッガー知事等の政策の追い風ムードもあって、今回のカンファレンスではわざわざ「新エネはシリコンバレーで盛り上がるか」のパネルディスカッションを設けた程、強いメッセージを出していました。その上で締めくくりが環境派のゴア元副大統領ですから、どうも新エネ、環境関係ベンチャーに火が着きそうだという予感がします。

【今や世界のシリコンバレー】
 シリコンバレーの多くは中国やインドのハイテク移民が支えていることは今に気付いたことではありませんが、去年までは「それでいいのか」という論調が目立ったのに対して、今年のレポートでは、シリコンバレーが他地域のハイテククラスターとの「競争」に勝つには、他地域との「協調」が大切とし、アジア等各国との人材・ビジネス交流をむしろしっかり進めることによってこそ、シリコンバレーがクリエイティブなビジネスのグローバルリーダーとして成長し続けるのだとしています。実際統計を見ますと、シリコンバレー内で母国語が英語でない人口が全体の約半分に達し、科学技術関連の職業の55%は米国外の人材が就いているとのこと。いっそこれは事実として受入れ、シリコンバレーをハイテク起業のインフラ、檜舞台として位置付け、世界中のスペシャルな人材を次々と集めた方が効果的と見切ったのでしょう。そうとなれば、いよいよ日本人も当地に乗り込んでこない手はありません。

【日本のプレゼンス、期待感が高まり始めたか】
 4番目の印象は、レポートやカンファレンスで、最近議論や分析に余り出てこなかった「JAPAN」が少しずつながら目立ち始めたことです。レポートの表紙には日本地図、シリコンバレーを支える科学技術人材の出身国別比較の図表中にも、中国・インドには遠く及ばないものの国別では日本は香港に次いで第6位に示されています。「世界ネットワークにおけるシリコンバレーの役割」のセッションでも、会場から出された実に多くの質問の中から議長役のサクセニアン教授が選んだ項目の1つは「日本をどう見るか?」で、これに対してパネリストの1人Walden InternationalのLip‐Bu会長は景気回復してきた日本の力強さ、協力への期待感を会場に向けて発信していました。今年のシリコンバレー、日本企業にとっても進出の絶好のタイミングとなってきたのではないでしょうか。

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