BaySpo 918号(2007/05/04)掲載
シリコンバレーのハイテクベンチャー起業・ビジネス展開コスト
ジェトロ・サンフランシスコ・センター 星野 岳穂
星野 岳穂(ほしの たけお)
 
1962年生まれ、東京都出身。1987年通商産業省(現 経済産業省)入省、電子機器課、地球環境対策室、航空機武器宇宙産業課、原子力産業課、鉄鋼課等に在任し、主として産業振興、技術開発政策を担当。2004年7月、JETROサンフランシスコに勤務。

 最近は、シリコンバレーでビジネス展開を進めたいという日本発ベンチャー企業が確実に増えていますが、その動きに押されてか、これまで国内に目を向けがちだった日本政府や関係機関も少しずつ海外、特にシリコンバレーとの関係強化に関心を示し始めているようです。現在、私たちJETROと同様に経産省関係の独立行政法人「情報処理推進機構(IPA)」とJETRO・BICとの共同プロジェクトを企画しつつあり、IPAが選定した「天才クリエータ」が開発した最先端のプログラムを当地でブラッシュアップし、グローバルなビジネス展開を促そうというものです。これは、各社の要望に応えてという流れではなく、むしろ公的機関側から各社に対してシリコンバレーで一旗挙げよう、と持ちかけているものです。詳細は後刻ご紹介しますが、6月4日の週に天才クリエータを囲んでのビッグイベントを開催しますので是非御参加、ご協力下さい。

 さて、こうして日本から続々とシリコンバレーを目指される企業の方々に私たちJETRO・BICがお伝えすべき最も重要な情報は、シリコンバレーの起業・ビジネス展開のためのコストはどれほどで、どの程度の確率で事業が成功するのかといった情報です。これらの相場がなくては各社もシリコンバレー進出のリスク評価ができず、当地進出をなかなか決断できません。大学を受験するのに、毎日大体何時間勉強すると偏差値がどれだけ上がり、偏差値がいくつになると合格率が何%か、といった(あまり思い出したくありませんが)情報がないままいきなり本番の受験に突入するのは相当な度胸が必要なのと同じです。もちろん業種や各社の事情によりピンキリではありますが、相場は必要です。こうした想いから、DITTO石戸社長やBEANS INTERNATIONALの遠藤社長、SBFの氏家社長といった当地ビジネスに長い経験をお持ちの皆様方のご協力を頂きながら調査を進めています。

 昨年の米国Small Business Administrationが実施した調査によれば、米国人口の66%は将来何らかのビジネスを手掛けたいとの想いを持っているそうです。20歳以上の人口は全体の7割程度ですから、成人の8、9割は何らかの起業願望を持っていることになります。しかし、実際に起業する方(起業家)は2千6百万人、そのうち従業員を雇用する規模まで事業を拡大できた起業家は6百万人程度に過ぎません。それでも、昨年全米で創出されたベンチャー企業数は67万件、倒産に追い込まれたのは57万件という激しい新陳代謝が繰り返されています。“KAUFFMAN Foundation”の調査報告によれば、ベンチャー事業の1/3は設立後2年以内に閉鎖に追い込まれ、事業開始後4年継続できている事業者は全体の44%程度です。別の推計では、5年で半分、10年で更にその半分が倒産に追い込まれるという厳しい結果も出ています。シリコンバレー等では最近特に短く早くなっているようで、3年くらいやってみて難しいようであれば諦めが肝心、ということになるようです。背景にはグーグル等の検索技術の賜物で、従来なら数ヶ月や1年間近く掛かっていたようなマーケットリサーチや競合他社の情報を瞬時に検索して得ることができるようになり、ビジネスの有望性を早く判断できるようになったことがあります。そしてコストですが、立ち上げ初期であれば、人件費等のコストで約10万ドル、弁護士・公認会計士費用(契約書等作成料を含む)で約5万ドル、事務所賃貸料で約2〜3万ドル、これにマーケットリサーチ等必要な調査費用を入れると大体2000万円は初年度に必要になります。この規模では、多くの方が自己資金で起業をされることになります。オフィスは自宅兼用にしてコストを抑えることも考えられますが、特に初めて進出する企業は、労働ビザ取得申請手続きの中でオフィスの写真提出を求められたり、居住地区でのビジネス活動の規制等があったりするため、やはり何らかのオフィスは必要となるでしょう。このあたりが、BIC等のインキュベーションセンターの協力が求められる場面の1つです。

 問題は次のステップです。ビジネスを拡大していくと、2〜3年目には現地での雇用が始まります。すると当然、人件費をはじめとする事業運営費が25〜28万ドル近くに跳ね上がります。仮に利益率を25%と高めに設定しても、わずか3年目頃には1億円近い売り上げを立てなければなりません。もちろん有望な企業であればこの頃にはVCやエンジェルからの資金調達も始まりますが、特に日本からの進出企業の場合は、進出3年目あたりまでに4千万円程度の赤字となっても耐えられる財力が無いと結局はせっかくそこまでに培った人脈やローカライズした製品等が無駄になりかねません。

 4千万円のリスクとなると、いくら新進気鋭の日本の若手起業家といっても容易に負えるリスクではありません。この当たりを、「頑張れ、日本!」の志の下、政府関係機関と地元ビジネス関係者とが団結協力し、そのネットワークを駆使して少しでもリスクのうしろ倒しの協力ができないか、IPAとの共同プロジェクトが、何かそうした道の契機のモデルケースの1つになれないかと考えて策を練っているところです。ご協力、宜しくお願いします!

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