シリコンバレーに赴任してあっという間に約3年間が過ぎました。シリコンバレーから日本を見つめ直し、日本発ベンチャー企業の当地挑戦の支援を続けてきました。その間に考えた様々な視点や考えを整理していくと、どうしても「人材の国際競争力」に行き着きます。ZDNetの徳田浩司さんが最近書かれたブログに正に思いが一致するのですが、少なくともITの世界では、ハードからソフト、そして今は「サービス」が付加価値を生む時代になっている、そしてサービスの国際競争力は、ビジネス英語での情報発信力、コミュニケーション能力が必須であり、他国に比べて国際人材(英語が堪能なビジネス人材)があまりに乏しいために、世界のハイテクビジネス歯車に組み込まれなくなっていく危機感があるということです。日本は現在でも「ものづくり立国」、「匠の世界」が文化的に好まれ、どうしてもハードやプロダクツ重視傾向になりますが、グーグルやヤフーしかり、変身を遂げたIBMも、そしてアップルでさえ、ITを駆使した「サービス」を提供する企業が世界市場を制しています。そして、顧客にハードではなく「サービス」の良さを伝えるには、それを自らの口で語り伝える能力がどうしても必要です。技術が最先端ならニーズは付いて来るという時代ではなくなりました。
この手の話はこれまでも延々と語られておりますが、やはり日本は日本語に守られてきたのです。1億人を超える勤勉な人口を持ち世界第2位の経済力を持ちながら、国民が言葉の面で国際化していないため、モノは売れながらも日本「人」は世界に羽ばたかず、逆に海外企業もなかなか言葉の壁で日本市場に入って来れなかったわけです。しかしお隣の韓国は日本と同じ文法で英語とは全く異なる言語ながら、こちらでお会いする韓国ビジネスマンの多くは大変流暢な英語でプレゼンをされます。日本だって負けてないと言いたいところですが、サムソンの勢いやいまや国連総長も務めるまでの勢いを見ると、国際社会への進出の意気込みでは圧倒されています。そして、ハイテクビジネスがスピード勝負だとすれば、世界中とコミュニケーションして最も早くモジュールを組み合わせて市場に出した者勝ちです。自前主義を全面否定はしませんが、相当長期的視点にたった懐深い戦略でなければ成立しません。
ましてや、日本は少子化で人口が減少していきます。国内市場規模は成熟する一方で、少しずつ英語OKな人口が増えてくると、あるいはそれを待たずに最近のインド企業の戦略のように日本人コンサルの大量採用で一気に攻勢をかけて海外製品・サービスが流入するようになってくると、国内市場向けを主軸にビジネス展開する日本企業は近い将来淘汰されてしまいます。これからの新ビジネス展開の際には、日本企業も当初から国際市場への進出を戦略視野の中に入れておかなければいけません。JETROサンフランシスコもこうした想いからインキュベーションセンターを運営していますが、韓国の当地インキュベーションセンターであるKIICAシリコンバレーには30社を超える企業が入居、ナスダック上場も2社で未だ敵いません。何とか一矢報いたいところです。
去年、松井選手が骨折して戦線離脱した際、「チームとファンに申し訳ない」と謝ったのが驚きをもってヤンキースファンの心を動かしたそうです。「フィールドの整備が悪かったのだ(自分のせいじゃない)」と言わず、何と謝った、と。こうしたきめ細かな心、(ファンと言う)顧客本位のサービス精神は、本来日本人が最も得意とするはず。人材を国際化しつつ、日本の真心を失わずにいれば、鬼に金棒です。
6月6日午後4時に、パロアルトのクラウンプラザホテルで日本IPA認定の「天才クリエータ」が起業した3社をお迎えし、シリコンバレービジネスデビューを果たして頂くネットワーキングイベントをJETRO主催で行います。日本発ITサービス企業を大成功に導くべく、暖かい拍手でお迎えしていただければと思います。ビジネスパートナーも探しています。皆様の御参加をお待ちします。
【お申込み先】
http://www.jetrosf.org/bic/jp/
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