国内外のカジノ商業都市(アトランティックシティやシカゴ、海外ではマカオ)も観光客を引き寄せていますが、それでもラスベガスの観光客数は最近10年間で3割増、カジノ収入は86%増と順調に発展を続けています。2006年の観光収入(クラーク郡)は、京都の7.5倍に達しています。
ラスベガス発展のカギは、潤沢なお金の安定的な流入でしょう。クラーク郡のウェブサイトは次のように述べています。
「ラスベガスを訪れる人の平均年齢は48歳。彼らは平均2.6人のグループで訪れ、3.6泊し、毎日141ドルの買い物をする。1日3.3時間ギャンブルに興じ、毎回652ドルを費やす・・・」。
言い換えると、比較的裕福な世代が、夫婦や仲間と共に訪れ、買い物やギャンブルで1人あたり毎日10万円近くを消費していく。なんとも贅沢な仕組みを作り上げていると言えます。そしてラスベガスは、カジノだけでなく、国際会議、エンターテイメントを催し、固定客の囲い込みを進めています。
全米のカジノ産業の雇用は、2005年までの10年間で79%増加しました。同じ期間に全米の雇用は13%増でしたから、カジノ産業の雇用創出力は相当なものです。カジノができると、ホテル、レストラン、ショッピングなどの雇用吸収力のある産業も生まれます。ネバダ州はここ20年間、全米の雇用増加率で1位が12回、2位が3回、3位が1回という目覚しい成績を残しています。カジノ税も経済を潤しています。ネバダ州はカジノ税が税収の16.5%を占め、他の「カジノ州」(平均3.8%)に突出して高い。ネバダ州はその財源を生かし、個人所得税と法人税州税を免除。ラスベガスはCNN Money.comの選ぶ「最も税のかからない都市(2007年)」で全米4位にランクされています。
気になる治安やギャンブルによる破産ですが、まず全米の人口10万人以上の254都市の中で、ラスベガスは重犯罪発生率で64位とまずまずです。人口の20数倍にのぼる観光客数を考慮すると、優れた数字と言えるかも知れません。カジノと自己破産の影響については諸説あってはっきりしませんが、「関連性あり」と見ている調査(クレイトン大学、2005年)によると、カジノ開業から13年経過すると、カジノのある郡の自己破産比率(1000人当たり)は6.7、カジノのない郡は5.2になったとのこと。微妙な結果ですが、影響は小さいながらもあると言うことでしょう。
国際会議・コンベンションもラスベガスの集客を高めるのに役立っています。コンベンションの開催は年2万4000件、1日65件に上り、メイン会場となる「ラスベガス・コンベンションセンター」は、東京ドームのおよそ6.4倍の広さがあります。展示会場で良いビジネスパートナーを見つけるなら、まずは「歩きやすい靴を履け」と言われるほどです。コンベンションは平日でもオフシーズンでも人を呼び込めるのが利点で、ラスベガスのホテル客室稼働率は全米平均を大きく上回っています。
ご存知のように、ラスベガスは街全体がテーマパークの様相を帯びています。カジノやコンベンションだけでなく、集客力を上げるには家族連れ、若い世代といった広い層を獲得する必要があるからです。あるカジノホテルでこの夏に開かれるイベントを挙げると、サーカス(シルク・ドゥ・ソレイユ)、マジック(デビッド・カッパーフィールド)、コンサート(ビヨンセ、RUSH)、世界スーパーフェザー級ボクシングチャンピオンマッチ、全米モトクロス選手権・・・。一流のイベントがジャンルを問わず毎日開かれています。このほか優良固定客を広げるため、無料航空券やスイートルームの提供など各種の豪華特典を用意し、彼らの囲い込みも盛んに行われています。
日本政府も2006年に「観光立国推進基本法」を制定するなど「観光大国」を目指しています。砂漠の中の観光都市ラスベガスの事例はなかなか示唆に富むのではないでしょうか。
(執筆協力:浅井行代)
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