BaySpo 936号(2007/09/07)掲載
活用が進むバイオマス
ェトロ・サンフランシスコ・センター 頓宮 裕貴
頓宮 裕貴 (はやみ ゆたか)
1988年、東京大学工学部計数工学科卒業後、通商産業省(現経済産業省)入省。情報セキュリティ政策をはじめ、さまざまな分野での業務を経て、2007年6月よりJETRO SFセンターに赴任。BICの責任者として、日本ベンチャー企業の米国市場参入のサポート。その他、シリコンバレー情勢調査分析等を担当。

 「バイオマス」という言葉を御存知の方も多いと思います。バイオマスは英語で?Biomass?と書きますが、生物を表すBioにまとまった量を意味する?mass?を合成して作られた言葉であり、エネルギー利用等ができる生物起源物質を意味します。
 バイオマスのわかりやすい例は廃材で、廃材の燃焼によって二酸化炭素は発生するものの、その二酸化炭素を吸収して木が成長すれば、全体として二酸化炭素の量は増加しません。このように二酸化炭素の増減に影響を与えないことを「カーボンニュートラル」と呼んでいます。このようなカーボンニュートラルな性質を持つバイオマスを石油の代わりに利用することができれば、結果として、石油への依存度を低減するだけではなく、地球温暖化の大きな要因である二酸化炭素の発生量を抑制することができます。このような背景から、各国ともバイオマスの利用促進を政策として推進しているわけです。
 いわゆるバイオマス・エネルギーと呼ばれているものの利用形態には、大きく分けて電力と熱の2つがあります。また、その原料面では廃棄物系と栽培物系の2つに分けることができます。
 日本では、バイオマス・エネルギーについて、平成14年に新エネ法にいう新エネルギーの範囲に追加するとともに、電気事業者に一定量以上の新エネ起源の電力の利用を義務づける法律の対象にも含めています。また、市町村のバイオマス利活用を支援するため、関係府省の連携の下、2005年からバイオマスタウン構想が推進されており、2010年に200地区程度とすることが目標とされています。
 現時点で日本において利用されているバイオマス・エネルギーは、廃棄物を電力や熱に転換して利用する形態が主であり、サトウキビ等をエタノールなどの燃料用アルコールに転換して利用する栽培物系バイオマスは、土地の制約やコストの問題等から、実用化に多くの課題を抱えている状況です。
 ちなみに、日本のバイオマス・エネルギーの中で最大の割合を占めるものは、黒液や廃材などです。黒液とは、製紙工程において、木材チップから繊維を取り出したあとに残る廃液のことで、重油等の代替燃料として活用されています。
 米国におけるバイオマス・エネルギーの利用量は、2002年時点で日本の約9倍に達していますが、米国のエネルギー供給量全体の3%程度に過ぎず、米連邦政府によって、1999年から2000年にかけて「国家バイオマス構想」が、2006年には「バイオ燃料構想」が公表され、バイオマス関連の研究開発や輸送用燃料としてのエタノールのコスト低減に向けた取組みが進められています。
米国ではエタノールの原料としてトウモロコシを利用しているため、バイオ燃料に係る政策の影響等で、今年の春、トウモロコシの先物価格が昨年同時期の約2倍に高騰した旨の報道があったことは記憶に新しいところです。現時点のトウモロコシの先物価格は若干下がっていますが、それでも昨年同時期の約1.5倍です。

 カリフォルニア州においては、全米におけるエタノール生産量の約25%に相当する9億ガロンを超えるエタノールを輸送用燃料として消費(州内のガソリン消費量は145億ガロン)していますが、主に中西部からの供給に依存しており、同州で生産するエタノールは州内のエタノール消費量の5%未満です。
 2006年4月、カリフォルニア州知事令が公布され、バイオ燃料の州内消費量に占める州内生産量を2010年までに最低20%、2020年に40%、2050年に75%とすることなどが目標として定められました。
 2006年のカリフォルニア州におけるエタノール生産量は年間6千8百万ガロンであり、これに現在申請されている工場の生産量を加えたとしても、最大年間生産量は3億6千4百万ガロンにとどまると予想されていますので、まだまだ取組みが必要な状況です。
 このため、2006年7月、カリフォルニア州知事は「バイオエネルギー行動計画」を策定し、更なる対策を進めています。カリフォルニア大気資源委員会は、州の規制に変更を加え、それまで5.7%だったガソリンのエタノール含有量を10%まで認めることにしました。また、州のエネルギー委員会は、トウモロコシやサトウキビを使用しないセルロース系エタノールに関する研究開発など、バイオマスを利用する先進的なエネルギー転換技術に対して研究資金を提供しています。

 日本は国土が大きくないため、バイオマス・エネルギーの利用を推進していくことには多大な困難が伴うと思いますが、世界最高水準の省エネルギー国です。来年8月の北海道洞爺湖サミットの主要議題の一つは地球環境問題ですので、引き続き、環境保全、エネルギー安全保障、経済成長の同時達成に向けて、日本にリーダーシップを発揮していただきたいと願っています。

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