BaySpo 940号(2007/10/05)掲載
FTAの活用と日系企業のグローバル戦略
ェトロ・サンフランシスコ・センター 中島 丈雄
曽根 一朗 (そね いちろう)
1988年JETRO入社。展示事業部、海外事業部、ロサンゼルス事務所、国際交流部、対日投資部、外務省北米局等勤務を経て、2005年3月より現職。京都府出身。同志社大学文学部卒。

 ベイスポ読者の皆様も日々の生活の中で経済のグローバル化を実感されることが多いと思います。先日発表の「2007年版ジェトロ貿易投資白書」から、それを裏付けるファクツをいくつかご紹介しましょう。

【世界経済は3年連続で5%前後の高成長】
 2006年の世界の実質経済成長率は5.4%と80年以降で最高の伸びとなりました。開発途上国の成長率は7.9%で、先進国(3.1%)の倍以上のスピードで発展しています。特に中国とインドは10%前後の成長を遂げ、世界の経済成長への寄与率はなんと約4割に達しています。

【世界貿易は4年連続の2ケタ成長】
 2006年の世界貿易は、好調な世界経済と原油や金属等一次産品高騰を反映し15.4%増となりました。国・地域別では、EUと東アジアが大きく貢献、さらに一次産品高騰で輸出を増やしたのが、中東、豪州、ブラジル、ロシアでした。日本の貿易(2006年)は、輸出8.2%増、輸入11.7%増で、対中・対米輸出が、それぞれ電気機器、輸送機器を中心に前年より加速、対中輸入はデジタル家電の価格下落などから1ケタ台の伸び(8.6%)に鈍化しました。
【世界の直接投資は25.8%増、日本の対外直接投資も過去最高】
 世界的な高成長を背景に国境を越えた企業合併・買収(M&A)が活発化し、途上国向け投資も順調でした。BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)による対外M&Aについて、ブラジルが8.9倍の197億ドル、中国が66.5%増の143億ドル、インドが3.3倍の71億ドルと大幅に拡大している点が注目されます。日本企業の海外進出も活発で、10.3%増の502億ドルと過去最高を記録しました。増加要因としては、?新興国への積極展開、?エネルギー資源権益確保、?シェア獲得のための大型M&A等が挙げられます。他方、対中投資は6.2%減の62億ドルとなりました。

【本格始動するアジアのFTA】
FTA(Free Trade Agreement=自由貿易協定)やEPA(Economic Partnership Agreement=経済連携協定)という言葉を聞かれたことがあると思います。FTAとは関税など通商上の障壁を取り除き、モノ・サービスの交易を活発にする協定のことです。EPAとは関税以外の国内規制なども対象に含む包括的なもので、FTAはEPAの一部となります。代表例としては、EUやNAFTA(米国・カナダ・メキシコ)があります。今年7月現在、全世界で143件のFTAが発効しており、ASEAN+6(日本、ASEAN、中国、韓国、インド、豪州、NZ)域内では14件です。ちなみに、日本はシンガポール、メキシコ、マレーシアとEPAを発効済み、フィリピン、チリ、タイ、ブルネイと締結、インドネシアと大筋合意しています。東アジア経済連携構想実現のためには、ASEAN、インド、豪州等と早期にEPAを締結したいところです。ASEAN+6でEPAが実現することのインパクトはかなり大きいでしょう。域内総人口は約31億人と世界のほぼ半数を占め、国内総生産(GDP)の総額もEUやNAFTAに匹敵します。日米FTAについてはまだ具体化していませんが、今後日本が経済グローバル化の中で引き続き繁栄を享受するためには、東アジアや米国との経済交流を一層進め、各国とWin‐Winの相互補完的な経済関係を構築することが重要となります。

【日系企業のグローバル戦略】
 さて、このような経済環境の中で、日系企業のとるべき戦略はどのようなものでしょうか。白書では次の点を指摘しています。
(1)新興国市場に出現する中間所得層への対応
 近年、BRICsなど新興国における中間所得層の割合が急速に高まっており、消費構造が大きく変化しています。例えば、インドでは中間所得層の人口が2005年の5%から2025年には41%にまで拡大すると予測されています。

(2)汎用品への需要の増加
 一方、米国ではデジタル家電などの低価格化の動きが加速しています。例えば、身近なところでは新興のテレビメーカー(ビジオ、シンタック・ブリリアン等)が半導体やパネルなど部品を外部調達し、「組み合わせ型」メーカーとしてシェアを拡大しています。このように新興国の中間所得層増大と米国などでの低価格化の動きが相まって世界的に汎用品への需要が高まっています。

(3)高付加価値品と汎用品の両面戦略
 こうした中で日系企業が安定的成長を目指すためには、両面対応のビジネスモデル構築が必要になります。例えば、自動車や高級デジタル家電などのように、日本企業が得意とする部品と部品を相互調整しながら製品の高度化を図る「擦りあわせ型」(インテグラル型)開発を基本としながらも、その技術を生かして「組み合わせ型」(モジュラー型)の汎用品市場にも対応することなどです。今後、アウトソーシングの戦略的活用や新興国でのアライアンス、現地人材の登用などが課題になることでしょう。

 「ジェトロ貿易投資白書」の要旨は次のサイトでご覧いただけます。ご参考にしていただければ幸いです。
(http://www.jetro.go.jp/news/releases/20070808693-news)

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