BaySpo 942号(2007/10/19)掲載
日本版SOx法(J-SOx法)について
ェトロ・サンフランシスコ・センター 頓宮 裕貴
頓宮 裕貴 (はやみ ゆたか)
1988年、東京大学工学部計数工学科卒業後、通商産業省(現経済産業省)入省。情報セキュリティ政策をはじめ、さまざまな分野での業務を経て、2007年6月よりJETRO SFセンターに赴任。BICの責任者として、日本ベンチャー企業の米国市場参入のサポート。その他、シリコンバレー情勢調査分析等を担当。

 現代では多くの方々がインターネットを活用し、電子メールのやり取りや電子商取引などを行っており、さまざまな面でIT化の恩恵を受けていると言えます。

 例えば、電話だと相手が不在の場合、再度かけ直したりする必要がありますが、電子メールだと相手がいなくても送付でき、開封確認もできるので、時間が効率的に使えます。また、それぞれの地方に行かなければ手に入らなかった特産物なども、インターネットで簡単に注文することができます。

 現在はもう少し高い数値となっていると思いますが、2004年時点で、人口100人当たりのインターネットユーザー数は、米国が62.28人、日本が58.69人でした。ちなみに、当時このユーザー数が世界一だったのはニュージーランドで81.95人でした。

 また、先に申し上げた地方特産物のインターネットでの注文などを、一般的にB to C電子商取引(B: Business、C:Consumer)と呼びますが、日本におけるB to C電子商取引の規模は、1998年時点で645億円だったものが、2004年時点で5兆6,430億円へと、約87倍に増加しています。

 このように普及してきたITですが、経済社会にどのような影響を与えているのでしょうか。もちろん、設計・製造工程等の効率化を通じて、生産性の向上にも貢献しているでしょうし、個人の意見や考え方がブログ等を通じて発信され、情報の共有などにも貢献していると思います。

 個人的な意見ですが、マクロ的に見て、これまで物理的に構築されていた我々の経済や社会が、次第にバーチャルなものに代替されてきており、物理的世界とバーチャルな世界の間で相互依存あるいは軋轢を生じつつあると考えています。

 この一つの象徴的な事例が、最近話題になっているJ‐SOx法と呼ばれているものです。エンロンによる粉飾決算問題等を背景に、2002年、米国でSarbanes‐Oxley法(SOx法)という上場企業等の財務報告に係る内部統制に関する法律が成立しました。その後、日本でも同様の問題が発生し、企業の内部統制が問題視されるようになりました。

 このような背景の下、日本では金融商品取引法が2006年6月に成立し、上場企業等は、2008年4月以降、財務報告に係る内部統制の整備及び運用状況の有効性について評価、報告することが義務化されるに至りました。日本では、金融商品取引法のことを日本版SOx法やJ‐SOx法といった名称で呼ぶことがあります。

 そもそも、金融商品取引法というものの前身は、基本的に証券取引法であり、これに金融先物取引法などを統合し、投資者保護などを強化する形で金融商品取引法が作られています。であるからこそ、この法律で財務報告に係る内部統制が求められる企業は、証券市場に上場している企業が中心になっているわけです。金融商品取引法が国会に提出されたときの法案名も「証券取引法等の一部を改正する法律」でした。ちなみに、この法案は1,000ページを超える膨大なものですが、企業の財務報告に係る内部統制について規定している条項はほんの少しです。

 米国のSOx法、日本の金融商品取引法が成立した際に、非常に興味ある事態が発生しました。それはIT面での内部統制をどうするかという問題です。なぜかと言えば、財務報告を作成するための基礎データ及びプロセスは、製造・流通・販売プロセス等のIT化とともに、ITに深く依存していたからです。日本では財務・人事・給与等の業務の9割超がIT化されているという統計データがあります。要すれば、財務報告に係る内部統制を行おうとすれば、もはやIT化している部分を無視することが不可能になってしまっていたということです。

 しかし、IT化されているもの、別の言い方をすれば「目に見えないもの」を、どのように管理等すれば、内部統制ができていると言えるのでしょうか。残念ながら、個人的には、これをやれば完全というものは存在せず、リスク分析等を行って、費用対効果の高いものを優先するなど、各企業の状況に応じて対処されていくしかないと考えます。

 企業の方々のニーズを踏まえ、特に、財務報告に係るIT面での内部統制の方策例については、米国SOx法を念頭に、米国のITガバナンス協会が”IT Control Objectives for SOx”を、日本の金融商品取引法を念頭に、日本の経済産業省が「財務報告に係るIT統制ガイダンス」を公表しています。

 現在、金融商品取引法などへの対応に向けて、対応する企業の方々もサービスを提供される企業の方々も、大変な時期を過ごされていると思いますが、IT面での内部統制に悩まれている方々には、上記のガイダンスなども参考になると考えますので、御一読をお勧めします。

有澤保険事務所

自動車保険をはじめ、火災保険、アンブレラ、ビジネス保険、労災保険、生命保険、健康保険などを取り扱う総合保険会社です。Farmers
Insurance、Blue Cross等のエージェントであり、日本語できめ細やかな安心のサービスを提供しています。

有澤保険事務所
2695 Moorpark Ave, Ste 101, San Jose, CA, 95128
http://www.arisawaagency.com

有澤保険事務所
(408) 449-4808
No Reproduction or republication without written permission
Copyright © BAYSPO, Inter-Pacific Publications, Inc. All Rights Reserved.