インターネット・ユーザーが編集・作成する百科事典として有名な「ウィキペディア」を運営するウィキメディア財団が、本拠をフロリダ州セントピーターズバーグからサンフランシスコに移転することを発表。ウェブ2.0系企業のSFベイエリアへの集積が進んでいます。
【SFは米国のハイテクの中心】
今回の移転理由について、ウィキメディア財団理事のフローレンス・デヴォアード氏は、「サンフランシスコが米国ハイテク産業の中心であり、財団は、最高レベルのウェブ技術者、大学、サポート・サービス、メディア等の豊富なリソースにアクセスできるため」と説明しています。記者発表によると、サンフランシスコはアジアとの関係が深く、アジアへの拡大を目指す財団にとっては、アジア系のボランティアや提携先との関係構築に好都合という判断もあったようです。候補の6都市の中から1年間の検討の後、決定されました。
ギャビン・ニューサム・サンフランシスコ市長は「ウィキメディア財団はインターネットを基盤とする最先端のイノベーションを代表するものであり、サンフランシスコの創造的な環境の繁栄に大いに寄与するものである」とのコメントを寄せています。
【SFベイエリアに集積するウェブ2.0企業】
ウィキペディアはインターネットの世界で最もアクセスの多いサイトのひとつです。また、「ウェブ2.0」と呼ばれるインターネットの新しい形態の中で「ユーザーによってコンテンツが作成される」象徴的なサイトのひとつです。毎月の閲覧数やリンク数など複数のデータを基に出された「ユーザー作成コンテンツ・サイトのトップ25」(2007年9月eBizMBA発表)によると、1位は代表的なSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)のマイスペース、2位はウィキペディアで、以下は表のとおりとなりました。
このうち、各サイトの運営企業がシリコンバレーを含むSFベイエリアに本拠を置くものはウィキペディアを含む17サイト(左記*)にのぼります。さらに注目したいのは、同地域の中でもIT企業の集積があるシリコンバレーではなく、サンフランシスコ市内に本拠のあるものが8サイト(左記SF)あることです。
急拡大するベンチャー・キャピタルのウェブ2.0企業への投資のうち、2006年データでSFベイエリアが米国全体の半分以上を占めます。(アーンスト&ヤング、ダウジョーンズ・ベンチャー・ワン、2007年3月)。従来のウェブ系企業、例えば、グーグル、ヤフー、イーベイ等がシリコンバレーに本拠を構えているのに比較して、昨今のウェブ2.0企業の多くはSF市内に拠点を構えています。一般消費者に直接訴える斬新で芸術的な創造性が求められるのがウェブ2.0企業の特徴であることから、これら企業は美術館やお洒落なレストラン、バーが多数あり、文化的な刺激が多いSF市内に拠点を構えることが多いとされています。
ほかにも、バーチャルな生活体験サイトとして日本でも話題の「セカンドライフ」を運営するリンデンラボや、CNET、マーケット・ウォッチといったネットベースに発展してきたメディア企業もサンフランシスコ市内に本拠を置いており、ウィキメディア財団が移転理由に述べた点を裏付けています。
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【日本語記事は42万件】
ウィキペディアには、2001年1月の開設以来、現在250言語、800万項目の記事が登録されており、うち日本語での記事は約42万件。ウィキペディアの運営、記事の作成はボランティアによって行われており、創設以来少なくとも10回以上の記事編集を行った登録ユーザーは約10万人います。また、世界で最も見られているサイトのランキングでも常にベスト10に入っています。
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