最近、地球温暖化や省エネルギーに関する報道が増えてきました。皆様は「京都会議」という言葉をお聞きになったことがあるでしょうか。「京都会議」とは、地球温暖化を防止するために採択された気候変動枠組条約に基づき、今から10年前の1997年12月1日から12月10日にかけて、京都で開催された第3回締約国会合のことです。
この会合の結果、例えば、日本については、2008〜2012年の温室効果ガス(CO2、CH4、N2O、HFCs、PFCs、SF6)を1990年比で6%削減することとなりました。ちなみに、日本が発表した2006年度の速報値によれば、1990年比で+6.4%となっており、目標に向けた道のりは遠いようです。
日本の温室効果ガスのほとんどは二酸化炭素(CO2)であり、その二酸化炭素のほとんどが石油や天然ガスを燃焼させた際に排出されるエネルギー起源のものです。日本における温室効果ガス排出量全体の約9割はエネルギー起源の二酸化炭素です。このように地球温暖化問題とエネルギー問題は密接に関係しており、省エネルギーが進めば、温室効果ガスも低減されることになります。
御存知の通り、原油価格の急騰によって、さまざまな商品の価格が上昇しつつあります。ちなみに、東京地区のガソリン1リットルの小売価格は、京都会議が開催された1997年12月が101円であったのに対して、本年10月は148円と約1.5倍になっています。商品価格の高騰を抑えるには、生産プロセスなどにおけるエネルギーの使用を節約していく必要がありますが、同時にエネルギーの価格が高いために、エネルギー節約単位当たりの経済効果は高くなります。このため、太陽光発電や風力発電といった新エネルギーやハイブリッド自動車などが、経済的により魅力あるものとなるだけでなく、これまであまり注目されなかったデータセンターなどの目立たない分野における省エネルギーも取りざたされるようになってきました。
例えば、米国のデータセンターにおける2006年の電力消費量は610億kWhと推定され、米国の電力消費量全体の1.5%に過ぎませんが、このデータセンターの電力消費は、2011年まで年率12%で増加すると予想されています。2007年9月18日、米国エネルギー省とグリーングリッド協会は、米国のデータセンターの継続的なエネルギー効率改善を目指し、エネルギー管理プログラムの推進、クリーンエネルギーあるいは効率性の高い技術の導入促進に係る相互協力等を内容とする覚書を取り交わしました。
データセンターについては、各機器の特性を踏まえた負荷密度の情報が充分に把握できていないため、安全サイドに立った負荷予測に依存し、必要以上の条件で使用していたり、空気循環、熱伝達などを考慮した設計ができていないため、必要以上に空調でエネルギーを消費する結果になっている可能性があります。(ちなみに、データセンターの電力使用量の約半分が空調によって使用されているとのデータもあるようです)。
2007年10月23日、グリーングリッド協会はデータセンターの効率性測定指標に関する調査結果を発表し、指標として、電力利用効率(PUE:Power Usage Effectiveness)やデータセンター基盤効率(DCiE:Data Center Infrastructure Efficiency)を提言しました。
このPUEとは、データセンター施設に供給される電力をデータセンターのIT機器が使用する電力で除した数値であり、究極の数字は1.0となるはずです。グリーングリッド協会の調査では、多くのデータセンターの数値は3.0以上であり、適切なデザインを施せば1.6にまで低減可能とされていますが、同協会もデータ不足等のため、更なる調査が必要であるとしています。
なお、米国エネルギー省によれば、2011年までにデータセンターのエネルギー効率が10%改善されれば、100万世帯の消費量に相当する年間100億kWhの電力削減につながり、二酸化炭素排出量削減に換算すると、130万台の車の排出量に相当する年間650万トンの削減につながるとのことです。
日本でもデータセンターの省エネルギーについては関心が高まってきており、さまざまな企業が各種サービスをビジネスとして展開しているようです。
原油価格の高騰が続く限り、当面省エネルギーに対する関心が弱まることはなく、データセンターだけではなく、さまざまな分野で省エネルギーが進んでいくと予想されます。先に申し上げたとおり、省エネルギーは地球温暖化防止にも資するものであり、カリフォルニア州は環境面でも先進的であるとされておりますので、ここは省エネルギーをめぐる新しいビジネスが生まれやすい環境かも知れません。
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