一般編  Vol.230
グリーンバーグ 奈津子さん
メンロパーク在住。東京で金融機関に勤務後、スタンフォードで教鞭を執る夫との結婚を機に1989年に渡米。主婦、2人の息子の子育てをしながら、Music Togetherインストラクター資格、ダンス/ボディワークのNIA指導者資格を取得。昨年より気功を使ったセラピー/ヒーリングセッションを自宅で開催。発達障害を持つアーティストの青少年と社会の繋がりをサポートする、Silicon Valley Healing Arts Center Projectにも取り組む。
世の中で一番大変で 大切な仕事
結婚を機に渡米。8年で10回の引越しを経て、12年前よりメンロパーク在住。自宅で気功を使ったセラピー/ヒーリングを提供しているグリーンバーグさんに、ベイエリアでの暮らしぶりを伺いました。
グリーンバーグ 奈津子さん

(Natsuko Greenberg)BaySpo 1483号(2017/04/28)掲載

ベイエリアに住むことになったきっかけ、渡米した年
 1998年10月に渡米。スタンフォードで教鞭を執る夫と東京で知り合い、結婚して生活するために私がアメリカへ来ることになりました。

ベイエリアの印象
 広く蒼い空、街と自然のバランスの良い融合、日常生活でマイノリティーとしての不便さや差別を感じないリベラルな空気感。

自分の専門分野について
 主婦、親業が一番長く続いている仕事ですね。東京では約8年間、さまざな金融機関で仕事をしましたが、結婚後まもなく子供に恵まれて母親業が始まりました。1日24時間、週7日、1年365日、妊娠してから自分が死ぬまでずっと続く仕事です。社会的には評価が低く、数字には換算されず、給金もボーナスも支給されない仕事ですが、この世で一番大変で、そして大切な仕事だと思っています。アメリカへ来る前は音楽療法士を目指していたこともあり、その後、子供たちと音楽を楽しむMusic Togetherのインストラクターの資格や、NIAというダンス/ボディワークの指導者資格を取得。昨年からは自宅で気功を使ったセラピー/ヒーリングを始めています。10年後に還暦を迎えるときは、日本とアメリカでの生活がちょうど30年ずつになることもあり、今年から10年計画で、長男のような発達障害を持ったアーティストの青少年と社会の繋がりをサポートする、Silicon Valley Healing Arts Center Projectに向けて活動を続けていきたいと思っています。

その道に進むことになったきっかけ
 小さなころから好奇心が旺盛で、何でもすぐ試してみたくなる性格でしたが、2人の息子を授かってからは、いやが応でも母親業がフルタイムの仕事になりました。長男の高機能自閉症も親として出来ること、「生きるとは?」をみつめるきっかけとなり、とても忍耐のいる大変な課題でしたが、息子達には感謝しています。

英語・日本語を使うということ
 家の中が英語環境なので、初めは自分の言いたいことが100%伝わっているか常に不安やイライラがありましたが、コミュニケーションは言葉だけではない! と吹っ切れてから、表情や仕草などで気持ちを伝えるようになりました。相手の話も出来るだけ真剣に聴くように心がけています。話す相手で言語が自動的に変わりますが、性格も変わる! と、よく家族に笑われます。

英語が100%ネイティブだったらどんな仕事に?
 ロックミュージシャンとして世界中でライブ活動!

あなたにとって仕事とは?
 私の生きざまそのもの。家族に支えられ、息子達に鍛えられ、何とかここまで辿り着きました。私が生きた証でもあるので、失敗も含めて次世代へ繋げて行きたいメッセージです。

いまの仕事に就いていなかったら
 旅人。

現在、住んでいる家
 メンロパークの一軒家です。家の周りをぐるっと囲む庭は日本人の庭師さんにお願いしました。庭師さんに「家と庭があって初めて『家庭』になる」と教えていただきました。今の季節は、台所から季節の花々が楽しめて最高です!

睡眠時間・起床時間・就寝時間
 夜11時30分ごろ就寝、朝は7時30分に起床。8時間の睡眠時間を確保するようにしています。

休日の過ごし方
 のんびり家族と過ごします。自然の中を散歩したり、読書をしたり。映画鑑賞やコンサート、舞台鑑賞などに出かけるのが好きです。

好きな場所
 休日の大学キャンパス内。ビッグ・サー、カーメルなど景色と空気の良い所。ノースベイのミュアービーチにある、Green Gulch禅センターも落ちつきます。

最もお気に入りのレストラン
 以前はメンロパークの「桂月」が好きでしたが、閉店してしまったため、Rose Wood Sandhillの「Madera」かな? 家から近いのとボリュームがちょうど良く美しいので。

よく利用する日本食レストラン
 家で食事をするのが好きですが、あえて挙げるとすればマウンテンビューの「波浪」。といっても、行くのは数カ月に一度くらいです。

1億円当たったとして、その使い道
 寄付する、ホームレスの方々へ配る、Healing Arts Centerへ投資する、のコンビネーションだと思います。

日本に戻る頻度
 最後に行ったのは3年前、父の三回忌でした。昨年アメリカの市民権を取得して、日本人から日系人へとアイデンティティが変わり、カリフォルニア人としての覚悟が出来た気がします。息子達が独り立ちしたら、友達と温泉巡りをするのを楽しみにしています。母が元気でいてくれるので、息子達だけ実家へ送り、ばばと孫の時間を楽しんでくれたらと思っています。

最近日本に戻って驚いたこと
 平日の夜中に、まるでお祭りの後のように、酔っ払った人々が大勢駅に向かって歩いていたこと。エスカレーターを駆け上がる人の列のすごさ。困っている人がいても手を貸さないような他者に無関心な人が多いこと。それから、駅から実家までの道のりでコンビニの店舗数が2倍に増えていたこと、都心に中国語のサインが増えたこと。

日本に持って行くお土産
 ヒマラヤのピンクソルトは、一度食べるとまろやかさが病みつきになると人気があります。お手頃なのでたくさん買って持って行って配ります。

日本からベイエリアに持って帰ってくるもの
 国産の乾燥椎茸と昆布など。

永住したい都市
 メンロパーク。子供の頃から転勤族で引越しが多かったので、メンロパークが永住の土地ですね。どこに行っても家に帰るとホッとします。

5年後の自分に期待すること
 軽く・深く・潔く生きていること。

最も印象に残っている本
 芥川龍之介の『羅生門』。

最近読んだ本
 みぞろぎ梨穂の『約束の大地』と、新津春子の『世界一清潔な空港の清掃人』。 著者のお二人は境遇は違いますが、厳しい条件の中で使命を全うしようとする生命力がどちらも素晴らしく、学ぶことが多い2冊でした。

最も印象に残っている映画
 『火垂るの墓』

最近観た映画
 『Moonlight』、『Lion』、『君の名は』。

自分を動物にたとえると?なぜ?
 プレリードッグ。好奇心は旺盛なのに、社交面では実は内向的な部分もあるので・・・。

座右の銘
 来(きた)る者は拒まず、去る者は追わず。自分軸を持っていれば、拒み恐れることも、執着して追いかける必要もないと思います。目の前にあるものが全て静かに森に佇めば、自ずと必要なものはやって来るというイメージが好きです。

(BaySpo 2017/04/28号 掲載)

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