一般編  Vol.245
冨田 裕司さん
慶應義塾大学大学院工学研究科修了。石川島播磨重工業、航空宇宙事業本部に入社。ジェットエンジンを転用した発電装置の制御装置の開発に従事。バングラディッシュにて半年、発電装置の納入のため駐在。その後、ミノルタ(現コニカミノルタ)入社。1999年、現地開発子会社の立ち上げのために、シリコンバレーに赴任。シリコンバレーに17年半にわたり駐在し、コニカミノルタの研究開発(R&D)会社の代表、社長を務める。2016年9月に今までの経験をもとに、Tomita Internationalを設立。北加日本商工会議所会頭。
心の健康を支援したい
17年半務めた会社を定年退職後、TomitaInternational LLCを設立。心の健康を支援するとともに、北カルフォルニア日本商工会議所の会頭として日米間のビジネス促進と友好関係の発展をサポートしている冨田さんにベイエリアでの暮らしぶりを伺いました。
冨田 裕司さん

(Hiroshi Tomita)BaySpo 1521号(2018/01/19)掲載

ベイエリアに住むことになったきっかけ
 当時ミノルタ(現コニカミノルタ)より、シリコンバレーに米国・開発子会社の立ち上げのために、駐在員として家族とともに1999年4月に赴任しました。

ベイエリアの印象
 初めはベイエリアに住み、その後5年ほど南カリフォルニアにも住んでいたので、同じカリフォルニアでも違うなと思いました。気候的には、朝晩の温度差が大きい南カリフォルニアに比べて、涼しく、緑も多く、水も美味しいベイエリア。また、やや保守的な南カリフォルニアに比べて、よりリベラルでオープンなサンフランシスコという印象です。

自分の専門分野について
 今よく言われるIoTの原点である「センサー」。そのセンサーを使った各種の測定・計測及び、それらの情報解析や画像解析などです。また、大学での専門分野は計測工学でした。ものづくりに携わるものとして、「測定はものづくりの原点」ということをいつも心に刻んでいます。私のもう一つの専門は、ストレス解消を通じ、心の健康を保ち、ポジティブな思考へ至る人材教育です。

その道に進むことになったきっかけ
 大学卒業後、石川島播磨重工業(現IHI)を経て、ミノルタに入社。その後、米国に赴任し、現地開発子会社を経営する中で、様々な訴訟リスクやそのストレスと向き合い、いかに日々の自分の心の健康を保つことが重要かを痛感していました。そして、実際に心の健康を保つために体験・模索しながら、専門のコース・講座を受講し資格を取得。ストレス解消やポジティブな思考などを実践し、会社経営に活かしてきました。退職後、この経験と専門を活かして、心の健康で悩んでいる方のお役に立てればという思いで、TomitaInternational LLCを設立し、アイプラトン(心の健康支援)を始めました。

英語で仕事をするということ
 大学生の頃から海外で仕事をしたいと思っていたので、英語で仕事をすることに対してさほど抵抗感はありませんでした。とはいえ、最初のバングラディッシュへの出張時はドキドキしたのを覚えています。インターネットもない時代だったので、今のようにメールで確認をすることはできず、電話でベンガル語訛りの強い英語を聞きながら、依頼や交渉をするときには、本当に自分の英語が通じているのか心配しました。その経験を通して、海外での仕事では特に、以心伝心はないと心に留めています。誤解を避けるために出来るだけ簡潔に箇条書きで結論から書くようにし、こちらの意思を明確に伝えるように気をつけています。

英語が100%ネイティブだったらどんな仕事に?
 翻訳家でしょうか。

あなたにとって仕事とは?
 社会の役に立ち、喜んでもらえる商品やサービスを提供することです。これは商品のみならず、仕事をする人の心の健康を支援することも含みます。世の中の人の役に立つことを目的として仕事をし、その中で自己成長や自己実現につなげていければと思います。そして、ビジネスマンとして何か実績を残せたと満足感を得られるようであれば最高です。私にとって仕事とは、社会貢献的な側面も重要だと思っています。地域貢献の重要性を痛感します。
 日本でストレスチェックが導入されてから早2年が経ちましたが、依然としてストレス、心の病、身体のバランスを崩している方が増えている現状はシリコンバレーも同じであると認識しています。社会貢献的な側面という意味でも、心の健康を保てて少しでもポジティブに考えられるような人材育成への支援を通じ、貢献できたらとも考えています。

生まれて初めてなりたいと思った職業
 プロ野球の選手ですね。熊本県で生まれ、田舎で育ち子供の頃は野球ばかりしていました。読売ジャイアンツのファンでもあり、長嶋茂雄さんや王貞治さんらに憧れていました。

いまの仕事に就いていなかったら
 医者です。

現在、住んでいる家
 サウスサンフランシスコのタウンハウスです。サンフランシスコ空港からも近く、出張にも便利で気に入っています。少し寒いのが難点ですが。

乗っている車
 トヨタのマトリックス。

睡眠時間・起床時間・就寝時間
 睡眠時間は6時間から7時間。24時過ぎに就寝し、朝7時頃に起きるという生活です。

休日の過ごし方
 北加日本商工会議所(JCCCNC)の活動やコミュニティ活動に参加しています。それ以外は、家族と過ごすといったところです。

好きな場所
 最近はあまり行けていませんが、カーメルは周囲の美しい景観と画廊などが集まる街の独特な雰囲気が気に入っています。他にもモントレーの南にあるビッグサーは、雄大な景色で心がスッキリするので大変好きです。

最もお気に入りのレストラン
 イタリアンレストランでは、バーリンゲームの「Il Fornaio」。ワインも揃っていますし、どれを食べても美味しくお勧めです。シーフードレストランでは、サンフランシスコの「Scoma's Restaurant」。アメリカンレストランでは、ウッドサイドにある「The Village Pub」は、雰囲気も良く料理も美味しいのでお勧めです。

よく利用する日本食レストラン
 いくつかありますが、ミルブレーにある「馬車道」は自宅からも近く、よく利用しています。天ぷらも美味しいですし、筑前煮などの煮物も気に入っています。

日本に戻る頻度
 仕事の関係で、年に数回ほど。

日本に持って行くお土産
 ワイン、アーモンドなどのナッツ類、シーズ・キャンディーズのチョコレートなどです。

日本からベイエリアに持って帰ってくるもの
 本や和菓子です。

現在のベイエリア生活で不安に感じること
 住宅やリビングコストの高騰。交通渋滞には少々困惑しています。また、サンフランシスコは地震の多発地帯であり、1989年に発生した地震以来30年近く大きな地震がきていないので不安に思います。

日本に郷愁を感じるとき
 お正月になると、特に郷愁を感じます。

お勧めの観光地
 アメリカ本土の最南端、フロリダ州のキーウエスト。約9年前のクリスマスシーズンに家族で行きました。マイアミからのドライブも楽しめ、景色は最高でした。キーウエストの街ではアーネスト・ヘミングウェイの家などの観光をはじめ、朝日と夕日の両方を見られる自然が素晴らしかったです。また行ってみたいと思います。

永住したい都市
 第1候補は、もちろんサンフランシスコです。

5年後の自分に期待すること
 心と体の健康を支援していく仕事を通じて、少しでも社会に貢献ができていたらと思います。

最も印象に残っている映画
 『インターステラ』です。時間という観念がガラッと変わります。

最近観た映画
 少々古くなりますが、『君の名は。』です。物語のストーリーも新鮮ですが、とにかく画面が繊細で綺麗でした。

座右の銘は?
 子供の頃から野球をしていたので、全力投球する「一球入魂」が好きです。また、チームで仕事をするので「和」という言葉を大切にしています。

(BaySpo 2018/01/19号 掲載)

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