一般編  Vol.
原田 志保さん
慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、日本開発銀行(現日本政策投資銀行)に入行。対日投資促進などに関わる融資業務、マスコミ対策などの広報業務を経て、ハーバード大学ケネディスクールに留学。結婚後渡米、スタンフォード大学アジア太平洋研究所で事務局長を務めた後、地元の小学校のParents Clubの財務担当役員、会長職などに就く。
「当たり前」は一つではない
働く女性として、帰国子女として、親として…何事にも真摯に取り組む原田さん。大学講師やNPO団体の会長を務めた経験といった公の顔とは裏腹に、大好きな映画や本について語らせれば止まらない、そのチャーミングな原田さんの暮らしぶりを伺いました。
原田 志保さん

(Shiho Harada)BaySpo 1531号(2018/03/30)掲載

ベイエリアに住むことになったきっかけ、渡米した年
 2000年にベイエリア在住の夫と結婚し、渡米しました。

ベイエリアの印象
 住む場所によってがらりとその印象が変わる多様性が強烈です。気候でさえ、年間を通じて過ごしやすいとはいえ、私が住むオリンダからトンネルを超えてオークランドへ出ると全く違う天気になります。さらに人種構成、所得層そして街並みが地区によって明らかに変わる様相は、何年たってもドキリとさせられます。

自分の専門分野について
 専門職ではないので、専門分野というものはありませんが、強いて言えば、NPOマネージメントでしょうか。大学院で学んだことを、スタンフォード大学の研究所や地元の財団の運営に携わったことで実際に活かすことができました。また数年前から、年に一度、東大の大学院で米国NPOの管理運営というテーマで講義をするようになり、自分なりに体系立てて考えるきっかけになっています。

その道に進むことになったきっかけ
 もともと大学卒業後就職した日本開発銀行(現日本政策投資銀行)も公的金融機関でしたし、親が公務員ということもあって、パブリックな事柄、分野に関心がありました。

英語で仕事をするということ
 いわゆる帰国子女で、英語で話すときは英語で考えて話しているため、論理的かつかなり直接的なものの言い方になります。目上の人にも遠慮するという感覚が無くなりがちです。したがって、逆に日本語に戻して日本人と話す時、同じ感覚を引きずると生意気だと映りやすいので、気をつけなくてはいけないということを、失敗を経て学びました。

英語で失敗したエピソード
 英語そのものではあまり思い浮かびませんが、初めてスタンフォード大学で働き始めた頃、均質なスタッフで固められた日本の組織で当たり前だと思っていたことが当てはまらず、アメリカ人の部下への接し方・育て方、採用の基準、人種問題などで頭を抱えることが数々ありました。一番記憶に残っているのは、あるスタッフを学歴・職歴ゆえに昇格させなかった時、自分の人種のせいだろうと詰め寄られたことです。今だったら、日本人女性の私にそれを言うか!? と笑ってかわすことができると思いますが、当時は目を白黒させて閉口しました。

あなたにとって仕事とは?
 雇用機会均等法施行後に就職した第一世代だったので、使命感を持って仕事を始めました。しかし夫を始めアメリカ人と話すと、よく「(現在の)仕事は好きか?」と聞かれて即答できず、好きな仕事をする、という視点がなかったことに愕然とした記憶があります。総合職女性としての立場・存在そのものに意義を置いていたところがあり、仕事そのものを好きか嫌いかという尺度では考えていなかったのです。今でもまだその感覚は引きずっているような気がします。

生まれて初めてなりたいと思った職業
 小学生の頃は絵が描くのが好きで、画家になりたいと思っていました。

いまの仕事に就いていなかったら
 映画やコンサートに行くのが好きなので、趣味を仕事にするべく、サントリーホールか映画会社に入ればよかった、と思うことがあります。

現在、住んでいる家
 オリンダの一軒家です

乗っている車
 Toyota Highlander Hybrid

睡眠時間・起床時間・就寝時間
 11時半ぐらいまでには寝るようにしています。朝は、6時半。

休日の過ごし方
 ほとんど息子二人のサッカーの試合の送迎・観戦に費やされます。

好きな場所
 家の庭。バークレーの山の上にあるティルデン・リージョナル・パーク。

最もお気に入りのレストラン
 シェ・パニーズ・カフェ。

よく利用する日本食レストラン
 前は地元オリンダの「花膳」によく行っていましたが、最近はかなり前もって予約しないと気軽に行くことができず、結局日本食は家で食べる方が断然安くて美味しいので、和食を外食することはほとんどありません。

1億円当たったとして、その使い道
 昨年亡くなった父を記念するような公募制の奨学金を発足させたいです。

日本に戻る頻度
 だいたい夏と年末に戻っています。

最近日本に戻って驚いたこと
 観光客だけでなく、コンビニなどで働く外国人が増えたこと。

日本に持って行くお土産
 See’sのチョコレートやAmphra Nuevaという店の様々な味の付いたビネガーを持って行くことが多いです。

日本からベイエリアに持って帰ってくるもの
 圧倒的に食べるものです。中でも、茅乃舎のだしと金沢森八の千歳は必ず持ち帰ります。

現在のベイエリア生活で、不便を感じるとき
 人が増えすぎ、どこに行くにも渋滞に巻き込まれること。

現在のベイエリア生活で不安に感じること
 恒常化しつつある水不足と物価の高騰。

日本に郷愁を感じるとき
 寒くなって、お風呂にゆっくり浸かりたいと思う時。

お勧めの観光地
 メンドシーノ。

永住したい都市
 やっぱり家族や友人が一番多い東京です。

5年後の自分に期待すること
 自分でビジネスを始めてみたいと思い始めて、早5、6年経っています。5年後に始められていれれば、大したものです。

最も印象に残っている本
 何度も読んでいる愛読書は『指輪物語』、『ナルニア国物語』、『鬼平犯科帳』。父の死に際し、生きること、死ぬことについて考えさせられたのが、Atul Gawandeという医者が書いた『Being Mortal』。読み応えのあったラブストーリーは平野啓一郎の『マチネの夜に』。

最近読んだ本
 『Gentlman in Moscow』。

最も印象に残っている映画
 多すぎてこれ1本、とはあげられませんが、これなくして自分の青春はなかった映画が『スターウォーズ』と『レイダース』、生きることの希望を強く感じたのが『ショーシャンクの空に』、映画への愛情を再確認したのが『ニューシネマパラダイス』、最も慟哭したのは『生きる』、人を愛することの力強さを感じたのは『ベルリン・天使の詩』。
最近観た映画
 『Black Panther』。

自分を動物にたとえると?なぜ?
 馬。丙午なのです。

座右の銘は?
 真理はあなた方に自由を得させるであろう。

(BaySpo 2018/03/30号 掲載)

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