一般編  Vol.257
原口 博行さん
北海道生まれ。1977年函館ラサール高校、1981年慶応義塾大学工学部、ゴルフ部卒(安西祐一郎研究室1期生)。キヤノン販売(株)入社後、半導体製造装置など産業機器製品の営業・マーケティングを担当。2008年よりCanon USA Inc.にて産業機器のUSA統括。VP & GM。北加商工会議所2014年度第一副会頭、2017年度全米商工会委員会長。趣味はクラシックギター演奏とBBQ。
イノベーションで世界経済をリードする
Canon USA Inc. VP & GMの原口さんは、1981年にキヤノン販売(株)入社。2008年に渡米し、Canon USA Inc.にて産業機器のUSAを統括する。日々イノベーションのために新しいビジネスの開拓に取り組む原口さんにベイエリアでの暮らしぶりを伺いました。
原口 博行さん

(Hiroyuki Haraguchi)BaySpo 1538号(2018/05/18)掲載

ベイエリアに住むことになったきっかけ、渡米した年
 半導体製造装置を中心としたキヤノンの産業機器製品事業のUSA統括として、2008年に赴任してきました。

ベイエリアの印象
 入社して4年目に日本市場開拓と販売を任され、出張で初めてベイエリアに来ました。空港でレンタカーを借りて、ナビもない時代だったので地図と睨めっこをしながら不安な心持ちで取引先の会社に向かいました。途中、迷い込んだ街で一息。雲一つない真っ青な空から太陽の光がいっぱいに注がれ、心地よい空気の中で「こんなところに住んで仕事ができたらいいな」と何とも言えない充実感を覚えたことを今も忘れません。数少ない私の夢の一つになりました。

自分の専門分野について
 大学では工学部、管理工学科を専攻し、認知科学・AI(人工知能)の研究室にいました。その頃は第二次AIブームの真っ只中で、LISP言語で日本人の作文のメカニズムに関して考案したモデルの実証をしていました。入社当時は優秀な技術者が多いキヤノン鰍謔閧焉A競争率が少ない販売会社のシステムエンジニアを志望しキヤノン販売梶i現キヤノン・マーケティング・ジャパン梶jに就職しました。当初配属された部署は、半導体露光装置を本格的に外販するために研究部門から販売会社に事業移転されたばかりの光学機器事業部でした。当時の私でもコンピュータ産業のその後の発展を予想できたので、半導体デバイスを製造する装置市場は実に新しい分野であり、セールスエンジニアとしてマーケティングリサーチ活動と販売活動を行う仕事は私の志向に合致したことは言うまでもありません。米国に赴任するまでキヤノン・マーケティング・ジャパンでキヤノン製品の販売活動以外に、海外の半導体製造装置を輸入し日本市場で販売する活動や、子会社で設計した製品をシリコンバレーの会社で製造し世界市場に販売する活動を行ってきました。2014年からはイノベーションのための新規事業の模索活動も私のミッションです。昔から人が行っていない新しい分野・市場・ビジネスの開拓を行うことが私の志向だったので非常に満足して活動しています。

その道に進むことになったきっかけ
 半導体製造装置の市場開拓と販売活動は顧客が専門技術者であることから、技術的情報のやり取りが必須です。大学でその種の授業を受けたことが自信となって活きているようです。とはいえ、学生時代から私を知る妻がよく知っていますが当時はそれほど真面目に勉強をしていません。
 また、私のオフィスがシリコンバレーにあるという単純な理由でイノベーション活動に携わることになったのですが、キヤノングループの中ではそもそも訳の分からない製品を私が扱っていたことがイノベーションに繋がるのではと周りが思ったからだと考えます。昨今、国際競争力が劣勢にある日本企業に共通するのは、イノベーションの掛け声は大きくても、成果がなかなか伴わないことです。イノベーションができない理由を調査していくと、日本企業に共通する問題点があることに気がつきました。まずはその問題点を正しく理解することがイノベーション成功の第一歩です。キヤノングループだけではなく日本企業が昔のように世界経済をリードするため、イノベーションを促進するための問題点をまずは関係者に気づかせることが私自身のモチベーションになっています。

英語が100%ネイティブだったらどんな仕事に?
 若い頃に英語が上手に話せたら仕事上でも選択肢が広がっていたと思いますが、必ずしも語学力で仕事が決まるものではありません。言葉は自分の意思や感情を伝える媒体の一つでしかないと思っています。一方で多々ある媒体の一つひとつを日々研くことは重要だと考えます。特に、「島国の日本にいる限り世界に通じる製品は生み出せない」というのが私の昨今の主張の一つです。そのためには日本を離れることが必要で、英語は必須でしょう。

あなたにとって仕事とは?
 「会社のために全力で仕事をします」と張り切っていう新社会人に私は、「仕事は家族を養うため、給料をもらう手段だよ」と腰を折った話をします。仕事はすればするほど、わかればわかるほど面白いものですが、一歩間違えて仕事に没頭した結果、家庭を顧みずに家族を不幸にしてしまう人を度々見てきました。これでは本末転倒です。いい仕事をするためには、幸せな家庭、家族が必須です。

生まれて初めてなりたいと思った職業
 自分では記憶にありませんが、幼稚園の時に「バスの運転手になりたい」と言っていたそうです。

いまの仕事に就いていなかったら
 趣味のクラシックギターで給料が稼げたらいいですね。

現在、住んでいる家
 サウスベイエリアでいくつか下見をし、パロアルトの家に住むことにしました。学校にも恵まれ、通勤も交通渋滞の反対方向のため快適に暮らしています。周りには公園も多く、犬と朝夕の散歩を満喫しています。

乗っている車
 日本では絶対乗ることがないと思い、敢えてアメ車に乗っています。FordのTaurusで色は白、白、赤と3台目です。

休日の過ごし方
 ガーデニングを楽しんでいます。カリフォルニアは花木にとっては最高の土地です。手を掛けると期待通りに綺麗な花が咲いてくれます。他には、散歩代わりに妻とゴルフを楽しんでいます。日本にいる時には考えられないくらいに気軽にゴルフができて妻も喜んでいます。

好きな場所
 モントレーの17マイルズに日本からの来客者を連れて行くことが多いです。他は、ナパのワイナリー巡りです。ワイン好きにはナパは最高ですね。それと、ギター部屋です。隔離された自分だけの空間でギターを弾くのが妙に落ち着きます。

最もお気に入りのレストラン
 中華料理はパロアルトの「Tai Pan」と「Peking Duck」。「Tai Pan」は素材にこだわった料理にいつも満足しています。店の雰囲気もサービスも他の中華レストランとはひと味違います。日本では贅沢な北京ダックをお腹一杯食べるには「Peking Duck」が最高です。カリフォルニア料理はサラトガにある「Plumed Horse」です。ここの料理はいつも期待に応えてくれます。

日本からベイエリアに持って帰ってくるもの
 義父が取り寄せてくれる多古米。ニシダやのしば漬け「おらがむら」。築地市場で手に入れる有明産の海苔と利尻島の昆布。銀座ウエストの「モザイクケーキ」。

最も印象に残っている本
 ケン・グリムウッドの『リプレイ』。突然死を迎えた男性が、記憶を持ったまま昔に戻り人生を何度もやり直す話です。人生のやり直しを繰り返すなかで、人間の本質が見えてきます。SF小説ですが実に奥深いストーリーです。

最近読んだ本
 『日韓歴史認識問題とは何か。教科書問題・「慰安婦」・ポピュリズム』木村幹(著)。「歴史=事実は一つ」と思っていましたが、歴史認識は時代、政権、地政学バランスで変わることに驚きました。

最も印象に残っている映画
 半世紀前に観たオリビア・ハッセー主演の『ロミオとジュリエット』です。当時の私にはオリビア・ハッセーは心に響きました。

自分を動物にたとえると
 犬でしょうか。我が家の犬を見ていると妙に挙動が似ているので。

座右の銘
 「王様の前でも、乞食の前でも」。媚びることなく、また誠実に、いつでも誰とでも同じように振舞うことを大切にしています。

(BaySpo 2018/05/18号 掲載)

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