一般編  Vol.278
川口 留美子さん
熊本生まれ。転勤族の親に連れられて九州、東京、北海道を往復して育つ。小学生の時3年間過ごした旭川生活で北海道の美しさに魅せられ、東京の高校から北海道大学に進学。工学部精密工学科を卒業してNTT勤務。エモリー大学院でMBA取得。2000年に渡米し出産、留学中の主人とベイエリアで育児 。2003年にラレーチェリーグリーダーになり、 現在に至るまでパロアルトで月1回の日本語による母乳育児サポートグループ(無料)をボランティアで続けている。2011年より国際認定ラクテーションコンサルタント。これまで500組以上のベイエリア日本人ファミリーを支えてきた。現在カイザーサンマテオ勤務。平日夕方および週末に日本人ファミリーへのサポートを継続。夫と子供3人の5人家族。
赤ちゃんや家族をサポートしたい
現在カイザーサンマテオに勤務する傍ら、パロアルトで月1回の日本語による母乳育児サポートグループをボランティアで続ける川口さん。これまで500組以上のベイエリア日本人ファミリーを支えてきた川口さんにベイエリアの暮らしぶりについて聞きました。
川口 留美子さん

(Rumiko Kawaguchi)BaySpo 1570号(2018/12/28)掲載

ベイエリアに住むことになったきっかけ、渡米した年
 2000年に留学中でベイエリア在住だった主人の元へ渡米してきました。NTTで働いていた時に仕事でサンマテオブリッジのたもとにあったインクトミ社を何度か訪ねていたので、渡米後に同社近くのフォスターシティーに住むことになった時は不思議な縁を感じました。

ベイエリアの印象
 青い空、強い日差しとカラッとした空気がベイエリアの印象です。イメージする色はブルーとオレンジでしょうか。

自分の専門分野について
 以前はエンジニアでしたが、現在はラクテーションコンサルタントをしています。インファントマッサージインストラクター、ポストパータムドゥーラの資格もあります。

その道に進むことになったきっかけ
 2000年に妊娠8カ月で渡米して、初めての出産育児を経験しました。友人や家族など知り合いがなく苦労していた時に参加したのがラレーチェリーグという母乳育児サポートグループでした。日本語で同じようなサポートグループがあればと思い、2003年にラレーチェリーグのボランティアリーダーになり、その後2011年にラクテーションコンサルタントになりました。

英語で仕事をするということ
 アメリカの大学院を卒業しましたが、いざ英語で仕事を始めた時は聞き取りに苦労しました。ラレーチェリーグのボランティアリーダーとして電話相談を受け始めた時は、英語で問い合わせがあるたびに汗をかきながら対応し、母乳育児関連の店で働いた時には留守電に残された折り返し電話番号を一度に数字一つか二つ書き留めるのが精一杯で、何度もメッセージを聞き直したものでした。英語にはかなり苦労した方だと思いますが、英語のことでクライアントや同僚から咎められたことは一度もありません。文法や単語が多少違っても、言っている内容が正しければなんとかなるものだと感じます。

英語で失敗したエピソード
 小さな失敗や間違いは日常茶飯事です。分からない時は「Excuse me?」、「Will you say that again?」、「You mean-?」を駆使して理解するまで挫けずに聞き続けるので、なんとか大きな失敗なく過ごせています。

英語が100%ネイティブだったらどんな仕事に?
 やはり同じように赤ちゃんと家族に関わる仕事をしていたでしょうか。教えることも楽しいと思うので先生になっていたかもしれません。

あなたにとって仕事とは?
 NTTに勤めていた時に上司から「プロフェッショナルであれ」と言われました。NTTでは法人営業、通信規格の国際標準化部門、マルチメディア開発、ポータルサイト『goo』の開発部門と様々な部署で仕事をしましたが、自分はなんのプロフェッショナルなのかと自問していました。ラクテーションコンサルタントとして仕事をするようになってからは、周産期・産後サポートのプロフェッショナルを目指しています。少しずつ知識と経験を積みかさねるために、新しく発表された論文を読んだりクライアントやラクテーションコンサルタント仲間から日々学んでいます。

乗っている車
 トヨタのカムリ・ハイブリッドです。以前ミニバンに乗っていた時は、毎日通勤時に空車バスを運転しているような気がして環境への負い目を感じていたので、せめてもう少し環境に優しい車を買おうと2年前にセダンのハイブリッド車に変えました。

睡眠時間・起床時間・就寝時間
 午後10時から0時までには寝て、朝5時から7時までの起床を目指しています。以前は3から5時間睡眠でも平気でしたが、運転中眠くなるようになったので最低6時間は寝るようにしています。

休日の過ごし方
 子供たちのアクティビティや母乳育児クラス、 ラクテーションコンサルティングで週末の予定が埋まることが多いですが、何も予定がない時には、家族や友人とサンデーブランチに行くのが楽しみです。

好きな場所
 ボランティアをしている友人から聞いたウッドサイドにあるフィロリです。花の季節も綺麗ですが、クリスマスの飾りやイルミネーションに彩られた邸宅や庭も素敵です。ゆっくりとアフタヌーンティーをするのがプチ贅沢なひとときです。

最もお気に入りのレストラン
 パロアルトのステーキハウス「Sundance」とサンフランシスコのカニ料理「ThanhLong」です。お客様がきた時にはいつも満足してもらえます。

よく利用する日本食レストラン
 家で食べることが多いですが、サンマテオの「うさぎ」とレッドウッドシティの「ヒグマ」が好きです。最近知ったサンノゼの「Kizuna」もとても美味しくてテイクアウトしています。土曜日はよくサンノゼの「クローバー」でパンとおにぎりを買っています。

最近日本に戻って驚いたこと
 進化する日本のトイレでしょうか。日本のトイレでは、帰国のたびに個室と手洗いコーナーのデザインの美しさに驚きます。渋谷のヒカリエのトイレに慌てて入った時は、個室の扉が外側に半円形に飛び出した引き戸になっていました。一体どの方向に戸を引っ張ればドアが閉まるのかわからず焦りました。周りに説明書きがなかったので、引き戸に慣れていない外国人は閉めることができるのかしらと疑問に思ったものです。

日本に持って行くお土産
 日本に行く時のお土産探しも楽しみの一つです。困った時はチョコレートか時間があればトレーダージョーズやホールフーズでお土産を探します。最近帰った時にはホールフーズのハンドクリームやボールみたいな入浴剤を持って行きました。

現在のベイエリア生活で、
不便を感じるとき
 ベイエリアというよりアメリカ全般ですが、例えば、食料品、雑貨、日本食、文房具を買いたいと思う時にそれぞれ別の店に行かなければいけないこと。全部が一箇所で揃う日本にあるような大型スーパーがあると便利ですね。
お勧めの観光地
 駐在で来られた方に必ずお勧めするのはイエローストーンですが、個人的に今勧めたいのはグランドサークルです。特にブライスキャニオンの美しい朝日とアンテロープキャニオンの妖艶な岩肌には感動しました。

5年後の自分に期待すること
 5年後も赤ちゃんと家族をサポートし続けていると思います。万里の道も一歩から。一人ひとりとの出会いを大切にしながら赤ちゃんとご家族を支えていきたいです。

自分を動物にたとえると?
 ハムスターです。バタバタと忙しく走り続けているつもりで、実は同じところをクルクル回って前に進んでいないと感じることが多々あるので。

座右の銘は?
 子供の頃に「為せば成る」という言葉について家で話していた時に父から、「為せば成る。為さねばならぬ何事も。成らぬは人の為さぬなりけり。」と続くんだ、と聞いたこの言葉がいつも頭にへばりついています。大阪空襲をまともに受けて苦しい戦後を生き抜いた父から聞いたこの言葉を心で唱えると、弱音を吐いたらいけないな、頑張らないと、もうちょっとやってみるか、と気が引き締まる思いで力が湧いてきます。

(BaySpo 2018/12/28号 掲載)

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