ベイエリアに住むことになったきっかけ、渡米した年 渡米は1998年、ニューヨークで14年過ごし、トロントに2年住んだ後2014年の夏に主人の仕事の都合で当時1歳になったばかりの娘と越してきました。
ベイエリアの印象 東海岸の後だったので、人々も気候も温かすぎて最初の2年くらいはいつもバケーションのような感覚が抜けませんでした。目に映る植物など景観の影響も強かったと思います。一年通して今までに見たことのない熱帯の花が咲いていたり、ヤシの木が揺れていたり。今ではすっかり慣れて、仕事旅行から帰るたびに、良いところだなあ、と感謝します。
自分の専門分野について パーカッショニスト(打楽器奏者)という仕事をしています。クラシック音楽やワールドミュージックという分野の中で、いろいろな作曲家やアーティスト、グループと一緒に演奏活動を世界各地で行います。最近の主な活動の一つはチェロ奏者のヨーヨー・マが創立したシルクロード・アンサンブルのアーティストとして、世界各国から集まった仲間と共に音楽づくりをしています。このグループが2016年のグラミー賞を獲得したアルバムには、日本の童謡と民謡をアレンジして書いた曲も収録されています。ベイエリアではまだまだ新参者ですが、ローカルアーティストやグループとの縁も増えてきて、UC Berkeleyの作曲家学生の作品披露会で新作創りに参加したり、また2年前に始めた0歳から参加オーケーのファミリーコンサートは今年も5月18日にエルセリートで第3回目をEast Bay Methodist Churchで行います。
その道に進むことになったきっかけ マリンバ奏者を仕事にする母の元で幼少からピアノを始め、音楽高校の2年次に打楽器科に転向、東京芸術大学からジュリアード音楽院へとトントンと進学しましたが、卒業してからが本当の挑戦でした。どんなに名のある学歴があっても、ニューヨークという街でミュージシャンとして生計をたてられるかは全く別の話で、次の家賃の心配ばかりせず暮らせるようになるまでにはだいぶ時間がかかりました。どうにか人に演奏を聴いてもらおうとタダでも何でもとにかく演奏舞台を探した貧乏ミュージシャン時代を経て、ブロードウェイやオーケストラなどいろいろな経験をするうちに信頼してくれる仲間が少しずつ増えていき、そうやって人々との出会いに支えられながら今に至ります。
英語で仕事をするということ 英語を話すことで世界中何カ国の人と会話が可能になるのかわかりませんが、出会いの範囲も仕事の可能性も何十倍にも広がったと思います。演奏旅行でいろんな国に行った際英語の力に感謝することは度々です。ヨーロッパはもちろん、アブダビとか、トルコとか。中国が一番英語は効力ありませんでした。また、日常会話をする、自分の意思を伝える、人前でプレゼンテーションなど、英語のスキルには段階がありますが、頭の中が真っ白にならずに人前でのスピーチができるようになったのはここ2、3年だと思います。特にアメリカでは自分の考えを言葉で理論的に説明できるスキルは重要です。音楽の世界でも例えば大学生を教えたりすると「なんとなく」をうまく読み取る日本の会話は(良くも悪くも)なかなか通用しないと痛感します。「英語でそういうのは苦手」と長いこと避けていましたが、シルクロード・アンサンブルとお仕事をするようになってからは、容赦なく何百人もの前で各国のアーティスト達と並んでマイクが回ってきます。何度も「穴があったら…」という経験を繰り返すうち、つい最近になってやっと自分の音楽について、日本の文化について、自信を持って伝えられるようになってきました。何でも練習を続けて、場数を踏むと何とか形になるのだと思います。
英語が100%ネイティブだったらどんな仕事に? 「言葉を使わずに表現・会話すること」を仕事にしているので、何語でも同じ仕事をしていると思います。
あなたにとって仕事とは? 家族、仕事、趣味。自分の大事な居場所の一つです。
いまの仕事に就いていなかったら 同じ楽器でなくとも、音楽の仕事をしたいです。
現在、住んでいる家 アルバニーの一軒家です。
休日の過ごし方 旅の多い仕事なので、ローカルな日々はもうすぐ6歳になる娘となるべく家族一緒に過ごします。
好きな場所 Inspiration point in Tilden Park, Berkeley
最もお気に入りのレストラン キラク。大樹さん万歳。
1億円当たったとして、
その使い道
小ぶりの音楽ホール兼多目的スペースを建てたい、はベイエリアの物価では無理かもしれませんね。
日本に戻る頻度 年に一度か二度、コンサートで帰ります。
最近日本に戻って驚いたこと カリフォルニアに住み始めてからは特に、日本のスーパーで買い物をして料理をした後に出るプラスチックゴミの多さに毎回驚きます。日本でもエコフレンドリーが流行ることを願うばかりです。
日本に持って行くお土産 石鹸、紅茶、ワイン。
日本からベイエリアに持って帰ってくるもの 葛根湯。
現在のベイエリア生活で、不便を感じるとき 運転嫌いな私は、電車網の発達した都市東京・ニューヨークを経て来たのでベイエリアの電車・バスシステムにはとても不便を感じます。
現在のベイエリア生活で不安に感じること これから自然火災は毎年不安の材料になりそうです。
日本に郷愁を感じるとき お正月。アメリカで元旦を迎える度、日本の凛とした一年の始まりが恋しくなります。
永住したい都市 老後をニューヨークに戻って過ごせたらかっこいいですね。
5年後の自分に期待すること 音楽やアート、文化を通して人や社会を知ることは、 政治経済や教育の他に現代の社会が必要とする重要な働きかけの一つだと信じています。今までの経験を生かして、日本の現代文化をお題にアーティストやクリエーター、日本の企業、一般人が交流することのできる場所をベイエリアに作ろうと「日本工房」という企画を立ち上げました。近々詳細をお知らせすることができると思います。5年後にはベイエリアの皆さんが次のイベントを楽しみにしてくれるようなプロジェクトになるよう励もうと思います。
最も印象に残っている本 竜馬がゆく。アメリカに来てすぐは何故か司馬遼太郎ばかり読んでいました。
座右の銘は? めげない