一般編  Vol.292
藤嶋 祐子さん
1976年ニューヨーク生まれ。1歳の時に日本へ越し、小学生時はロサンゼルスで育つ。日本へ帰国後は公立の中学・高校を卒業。物作りが好きだったため、代々木にある文化服装学院へ進学。卒業後は同学にて14年弱、助手から専任講師の経験を経て、2012年にニューヨークへ移住。2013年にベイエリアに移住し、現在は婚約者と一緒にオークランドに暮らす。
毎日進化するファッションと教育に、 好奇心を刺激される
ニューヨークで生まれ、幼少をロサンゼルス、中高時代を日本で過ごす。ニューヨークでファッションを学び、サンフランシスコの私立大学・大学院Academy of Art Universityのファッション学部で教鞭をとる藤嶋さんに、ベイエリアでの生活について伺いました。
藤嶋 祐子さん

(Yuko Fujishima)BaySpo 1592号(2019/05/31)掲載

ベイエリアに住むことになったきっかけ、渡米した年 
 ファッション教育で、服作りをずっと教えてきましたが、学生たちの卒業後進路と教えることのギャップに限界を感じ、ニューヨークで海外アパレルの現状を学びたくて2012年4月渡米しました。ニューヨークにいた時に今勤めている大学院の卒業ショーがあり、お手伝いをしたのをきっかけに、2013年1月に仕事のオファーをもらい西海岸に移り住みました。

ベイエリアの印象 
 田舎だなぁと思いました。あと四季を楽しめないってこんなにつまらないものなのかと思いました。住めば都、慣れてくればそれが心地よくなってくるんですけど始めのうちは肌で感じる季節の移り変わりが恋しかったです。

自分の専門分野について 
 専門分野は教育です。専門は工業的製図と縫合です。科目はAcademy of Art Universityのファッション学部で3D/パターンメーキングという科目を大学と大学院の両方でシニアレベルを担当しています。教えているのはシニアだけですが今のカリキュラムはフレッシュマンクラスからシニアまで私が書いた内容で授業展開しています。本学はオンラインの授業にも力を入れていて、オンラインクラスのデモビデオの講師も担当しています。
 
その道に進むことになったきっかけ
 学生時代の教授に騙されました(笑)。卒業年次に坊主頭にした私は、ことごとくパタンナーとしての最終面接で落ち・・・行き場がなくなったので、留学でもしようかなぁと思っていたら、当時の担任から「受けたからって受かるとは限らないわよ」とほのめかされ受けた教員採用試験。急募1名のところ受験者1名! すぐ辞めるだろうなぁと思っていましたが14年もいました(笑)。もちろん誘ってくださった教授に感謝しています。

英語で仕事をするということ
 小学生の頃、父の仕事の関係でLAにいましたので日常会話はできたのですが、専門用語が「なんだそれ!」って表現だったりして、始めのセミスターは学生に言葉を聞きながらの授業でした。何よりも難しかったのは定規がcmからinchに変わったことに苦労しました。

あなたにとって仕事とは?
 新しいことに触れるツール。ファッションも教育も生物、毎日進化し続けるので、常に好奇心を刺激されています。だから辞められなかったのです。下手したら学生達より好奇心旺盛かもしれません。

生まれて初めてなりたいと思った職業
 眼科医。祖母が眼科医だったから。働く女性が身の回りに祖母しかいなかったので、とても憧れました。

いまの仕事に就いていなかったら
 母には女性警察官になったら良かったのに、とよく言われていました。昔から曲がったことを正すのが好きでしたので。矛盾とかすごい苦手で。

現在、住んでいる家
 オークランド、ロックリッジにある小さな小さなコテージに住んでいます。3年前にここに越してきました。美味しいレストランもそうですが、徒歩圏内にスーパーが3件あるのでとても便利で気にいっています。

乗っている車
 車? 持っていません。免許もこちらでは持っていません。通勤はBARTを利用しています。日本ではハーレーに乗っていましたけど。注:元ヤンではありません。

最もお気に入りのレストラン
 教えたくないなぁ(笑)。イーストベイではWood Tavern。ここのポークチョップがあるからイーストベイに住み続けたいくらい好きです。サンフランシスコだったらAnchor Oyster Bar。シーフード食べたいなと思ったらここに行きます。予約を受け付けないお店なので夕方早めが狙い目。

日本に持って行くお土産
 父にはSee’sのスコッチマロー。マシュマロをキャラメルコーティングしてあるもの。これを箱いっぱいに詰めて帰ります。母と姉には台所用品。姉にはHEATHの食器をよく頼まれますがこれが重い!!(笑)あとチーズです。東京まで出たら美味しいチーズを買えると思いますが、千葉の実家ではこれが何よりみんな心待ちにしているお土産です。アイスパックでぐるぐる巻きにして持ち帰ります。バラマキ土産はトレジョのシーズニングソルトとエコバッグ。See’sのロリポップは独立記念日近くを狙うと星条旗のラッピングがあるので「アメリカっぽい」と人気です。

現在のベイエリア生活で不安に感じること
 収入と支出と貯蓄のバランス。お家賃が上がらないことを毎年願いながら生活してます(笑)。家賃に限らずなんでも高いですね。老後はこの街では暮らせないです。あとはホームレス人口、抜本的な制度の見直しをしないと難しいとは思いますが、職場がサンフランシスコのテンダロイン地区なので、足元が危なっかしくて・・・素敵な街なのに勿体無いですよね。

現在のベイエリア生活で、不便を感じるとき
 不便に感じるというのは、過去の環境、経験と今を比較した時に起こるんだと思うのですが、基本的に違う街、違う国を比較すること自体しないのであまり不便さは感じません。(言い方が雑ですけど、初めから期待しないで希望を持つのが大事だなと思っています。何事も)


日本に郷愁を感じるとき
 四季の移り変わりを愛でる写真を見ると日本はいいなぁ、桜の樹の下でお花見したいなぁとか、秋や冬の味覚懐かしいなぁと思うけど、郷愁ってほどじゃないかな? どちらかというと家族や仲の良い友人に会いたいなといつも思います。父が転勤族でしたので「故郷」が無いというのもあるかな?

お勧めの観光地
 フィッシャーマンズワーフから朝の漁を終えた漁船が昼間観光客を乗せて1時間ほどの周遊ツアーをしているんですけど、案外それがいいです。ゴールデンゲートブリッジを渡るツアーはよくあるけど橋を下から見上げるなんて滅多にできないし、アルカトラズ島の外周を回りながらどこからだったら逃げられたか! なんて想像するのも結構楽しいです。友人、知人からの評判もいいです。

最も印象に残っている本
 ジュリア・チャイルドの『Mastering the Art of French Cooking』かな。レシピ本として有名ですが、内容の深さに衝撃を受けました。食に対する見方も変わると思います。

最近読んだ本
 平松類著『老人の取扱説明書』。1月に帰省した時に母が無言でくれた本なのですが、今まで「なんで父って・・・」と思っていたことの8割が解決されました。人生の先輩方を理解し対応を改められる本だと思います。

座右の銘は?
 「笑顔になるまでやり続ける」。何ごとも、辛くて眉間に皺をよせているうちはまだその「事」が終わっていないだけ。何ごとも納得いくまで続ければ必ず最後は笑顔になれる。今までの経験からそう思うようになりました。
 あと、「嘘でも笑え」。これはクムフラ(フラダンスの先生)に昔言われたこと。どんなに辛いことがあったかわからないがとにかく嘘でもいいから笑顔で踊りなさい、と。私の笑顔でも他の人を笑顔にできる。それができた時、私の嘘の笑顔が本当の笑顔に変わるから。と言われました。すごい深い思いが含まれた教えだな、と当時とても辛い時期だったので胸に刺さりました。

(BaySpo 2019/05/31号 掲載)

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