一般編  Vol.306
川ア David 洋介 さん
日本で生まれ、ハイスクールよりアメリカ、ロサンゼルスで過ごす。建築と不動産をロサンゼルスで学んだのち、現在はベイエリアで建築会社、投資ファンド、コンサルティング会社を営む。
言語の根底にある文化背景と相手の立場を理解すること
高校から渡米して以降、ロサンゼルスを経て現在はベイエリアで建築会社、投資ファンド、コンサルティング会社を営む川崎さん。完璧な日米ハイブリッドである強みを活かし、他では出来ないオンリーワンのバリューを提供し続ける彼に、ベイエリアでの生活について伺いました。
川ア David 洋介 さん

(Yosuke David Kawasaki)BaySpo 1613号(2019/10/25)掲載

ベイエリアに住むことになったきっかけ
 住宅設備機器メーカーを営んでいる先輩から電話がかかってきて「うちの北カルフォルニア支店やってみないか?」と誘って頂いたのがきっかけです。1992年に渡米して以来17年間住み慣れたLAでの生活をリセットすることを意味したので、正直不安の方が大きかったですね。でも知らない街で生活してみるのも面白そうだなとだんだんワクワク感が大きくなっていって、結局2日後にはベイエリアへの移住を決めちゃいました。

ベイエリアの印象
 来てよかったですね。シリコンバレーにサンフランシスコ、バークレー、オークランドとこれだけ多彩な文化を楽しめるのに、ちょっと車を走らせればすぐにRedwoodが生い茂る大自然に囲まれる。豊かだなぁと感動しました。

自分の専門分野について
 大手企業のCVCファンドの為のコンサルティング会社を経営しています。渡米した駐在の方の中には、ある日突然「アメリカに行ってイノベーションを探して来い。」とだけ言い渡され、言葉も習慣も通じない環境で路頭に迷われるケースがあります。そんな方々のためのナビゲーターです。英語での挨拶すらおぼつかなかった方が、アメリカでのビジネス作法を身に付け、ネットワークを広げ、投資先を見つけ、買収に導き、最終的には自社事業とのシナジーを生む米国事業を立ち上げる。その過程をトータルにサポートさせて頂くのが私の専門です。最近記憶に残ったプロジェクトとして、大手住宅メーカーさんによるM&Aに携わらせて頂きました。現在は精鋭による北米事業部を形成され買収後もご健闘されています。

現在の道に進むことになったきっかけ
 経営してる建築会社が軌道に乗ってほぼ社員だけで回るようになったので、僕はセールス・コンサルティング会社をやりたいと模索していました。その時にクライアントから言われた一言がきっかけです。「セールスコンサルタントはアメリカに掃いて捨てるほどいる。それよりアナタは完璧な日米ハイブリッドだ。その能力を生かす方が真っ当ではないか?」と。ハッと大事なことに気づいた瞬間でした。アメリカで長く生活してきた自分にとっては特別なことではなかったのですが、置かれた境遇の有難さにその一言で気付かさせて頂きました。それ以来、「他では提供出来ないオンリーワンのバリューを提供しよう」と常に自問できる明確なビジョンを持つことができ、感謝しております。

英語で仕事をすると言う事
 英語を話している時は日本語で話している時とではちょっと雰囲気が変わるらしいです(笑)。妻によく「アナタは英語で話している時は別人ね」と言われます。確かに企業間の交渉をファシリテートするときも、一方の考え方と伝え方が「アメリカ人向け」「日本人向け」であるかどうかに細心の注意を払います。「言葉」というのは氷山の一角でその根底にある文化背景と相手の立場を理解することが異国で仕事をすることであり、意思疎通の本質だと感じています。

英語で失敗したエピソード
 人の名前の発音ですね。渡米して初めてメジャーリーグ観戦に行った時は大恥かきました。応援しているチームの選手が登場すると、アメリカ人が大声で選手名を叫んで声援を送るんですね。で、僕も真似して次に出てきた選手名を大声で叫んだら、発音を思いっきり間違えちゃって、友達はもちろん周りから大爆笑されました。ちなみにその選手名はJose(英語ではホゼ)を「ジョーズ!」と。隣のオヤジは腹抱えて笑ってました。

あなたにとって仕事とは
 一生青春一生修行です。仕事柄、難解なチャレンジや手に汗握るようなシーンはありますが、自分が選んだ道、しかも好きな道で、生計を成り立たせて頂いている上に、修行までさせて頂いているのですから、有難いとしか言いようがありません。

生まれて初めてなりたいと思った職業
 動物の命を助ける獣医になりたかったですね。7歳の時に飼った芝犬がフィラリアで半年もしないで亡くなった時に「僕がお医者さんになって命を救うんだ」と誓ったのを覚えています。でも獣医になると動物の死に目に会う機会が増えそうだと解って辞めました。(苦笑)

今の仕事についていなかったら
 ソーシャルダンスのレッスンをする先生をやってみたいですね。あ、でも僕ダンスそんなに上手くないですよ! ただ寝ても醒めても音楽とラテンソーシャルダンスに熱中してみたいと言う意味です。

休日の過ごし方
 バイクです。僕にとっての瞑想ですね。日頃、仕事で頭に血がのぼっているような時でも、ガレージの扉を開けてバイクを目の当りにするだけで、スーっと落ち着きます。確かにバイクは危険極まりない乗り物ですが、その分乗るからには五感を研ぎ澄まして全身全霊で乗ります。そうやってただひたすらフリーウェイを走り続けて降りた時の恍惚感はどんなセラピーも敵いません。

好きな場所
 非日常的な場所が好きです。出張先のホテルの部屋、旅行先、自然の中。自分の人生を客観視してるような距離感が好きですね。時間が許せばトレーラー引っ張って山に行くのですが、非日常的な環境に身を置くとなんか読まない本を読んでみたくなったり、普段やらない料理をしてみたくなったりしてイイですね。普段やらないことをやって見たくなる環境が好きなのかもしれません。

よく利用する日本食レストラン
 バークレーの㐂楽さんです。たまに出る珍しい限定ものや、お刺身もとても新鮮で。一般家庭では食べれないようなものが食べられるのが嬉しいですね。お寿司だったらサンフランシスコの庵さん。女将が作るイチゴのデザートも美味しいですよ。でもやはり奥さんの作る和食が一番好きですね。仲間と飲みに行くより奥さんの手料理のほうが美味しいので真っ直ぐに帰宅してしまいます!

日本に戻る頻度
 年に1、2回位ですね。若い頃は日本にあまり興味がなかったので数年に一回訪ねる程度でしたが、大人になるにつれて日本の素晴らしさがわかるようになってきました。普段は会わない家族や友人との再会では必ず新しい感動と発見があるし、美味しいものも沢山あるし、国民性と文化度は高いし。今では毎回楽しみです。

最近日本に戻って驚いたこと
 質のいい医療が安い! 健康なのであまり意識したことがなかったのですが、先日、結石をやった時にアメリカで撮ったCTスキャン1枚の値段より安い値段でフルコースの人間ドックが受けられたのはショックでした。日本の医療は素晴らしいです。変わらないでほしい日本文化の一つです。

現在のアメリカ生活で不便を感じるとき
 高い医療費ですかね。医者にかからなくても毎月の保険料が凄いですから。我が家は自営業なので支払っている保険コストがダイレクトに分かるので、いつも「この国の医療制度はおかしい」と悪態をついています。無加入もリスキーだし。うーん、やはり老後は日本かアジアですかね。

お勧めの観光地
 サンフランシスコ市内を黄色い原付オープンスクーターで巡るGO CARがおススメです!ゴールデンゲートブリッジはもちろん古いビクトリア調の建物が立ち並ぶSF市内などローカルにしか知り得ないようなルートを音声ガイドGPSを参考にしながら2人乗りのオープン3輪バイクで走り回るわけです。あー風が気持ちいい! とか、ふと香るいい匂いや、鼻にツンと来る臭いエリアなどなど、そういう、移動中のちょっとしたサンフランシスコの街の息遣いを敏感に感じられるのが魅力です。

5年後の自分に期待すること
 家族の健康に感謝し、人様とのご縁とご恩が有難いことだと日々感謝を続けること。

座右の銘は?
 努力ではなく夢中

(BaySpo 2019/10/25号 掲載)

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