一般編  Vol.312
菊地 麻比古さん
慶應義塾大学では佐藤雅彦研究室の第一期生。卒業後、2001年にセガ・ソニックチームに入社。渡米後はソニックチームUSA、バンダイナムコエンターテインメント、Jam Cityを経て、現在Ubisoftに在籍しRocksmithプロジェクトに関わる。妻と4人の子ども、2匹の犬と、3匹の猫とバークレーに在住。
ゲームを作ることは飽きない、果てのないチャレンジ
幼少期に憧れた「ゲームをつくる仕事」に一貫して従事し、渡米後もアメリカの様々なゲーム会社でゲームにまつわるあらゆるデザインに携わる菊地さん。仕事は、日々「遊ぶ人を全力で楽しませる」ことと話す彼に、ベイエリアの暮らしについて伺いました。
菊地 麻比古さん

(Asahiko Kikuchi )BaySpo 1620号(2019/12/13)掲載

ベイエリアに住むことになったきっかけ
 日本で新卒3年目の2004年に、同じ会社のサンフランシスコスタジオに募集がありました。最初に話をもちかけられたときは、妻には絶対行かないよーと言っていましたが、考えれば考えるほど世界トップクラスのゲームスタジオが立ち並ぶだけでなく、僕が大好きなゲーム『CRAZY TAXY』の舞台でゲーム作るって最高。行きたい! という気持ちが抑えきれなくなり、やや強引に決めてしまいました。おりしも当時5才の長男の小学校に悩んでいて、いっそ多様な価値観があたりまえの人種のるつぼに放り込むことで人間力を鍛えられるのではという期待もありました。

ベイエリアの印象
 今バークレーに住んでいますが、いい意味で自由でユルくて最高です。近所にはいつもバスローブで裸足でうろうろしてるけど時価2億円のアパートメント持っているおっさんとか、自作の楽器を弾きながら散歩する若者とかがいます。実際はベイエリア内でも地域によって印象がめちゃめちゃ違いますね。トランプ支持の保守的な街もあれば、日本で住んでいた相模大野に似た住宅街もあります。

自分の専門分野について
 ゲームデザイナーです。すごく説明が難しいです。遊んで楽しいゲームのルールを定めたり、人がびっくりしたり感動したりするような仕掛けをしたり、サウンドやストーリーを練り上げたり、キャラクターに個性を与えたり、遊ぶ人が長く楽しめて長期的にお金を払ってくれる仕組みを考えたり、その仕組みを運営したり…と多岐にわたり細分化しています。僕自身はリードゲームデザイナーとして、それらが調和してゲーム全体がうまく機能するようにリードすることを仕事にしています。やっぱりうまく説明できないですね…。

その道に進むことになったきっかけ
 日本で就職活動をしていたときにすでに長男が産まれていたので、「よーしパパ、安定した公務員になっちゃうぞー」とか言ってたんですが、誰よりも僕を理解している妻から「もう見てらんない。あなたには絶対に無理!」とネガティブな太鼓判を押されて考え直しました。結果、昔から大好きだったビデオゲームの会社の門を叩くことにしました。

英語で仕事をするということ
 ネイティブではないので言葉に頼れず、いつも「伝わる」ことの本質を考えて仕事をするようになったと思います。結果、むしろ英語よりも絵や図を使って説明することがほとんどになりました。

英語で失敗したエピソード
 すぐに浮かんだのが性的なスラングにまつわる失敗でとてもここには書けません! うわー、いま思い出しても冷や汗が。

英語が100%ネイティブだったらどんな仕事に?
 日本で『ソニックバトル』というゲームのお話と会話劇をすべて書いたのが本当に楽しかったので、北米のゲームでも同じような仕事をしてみたいですね。

あなたにとって仕事とは?
 ゲームをつくるということは入力、映像、ストーリー、音と音楽のすべてを使って遊ぶ人を全力で楽しませることなので、とにかく人を面白がらせたいお調子者の自分としては完璧な仕事です。あといろんな意味でひっきりなしにいろんなテクノロジーが導入されるので飽きない、いや、果てのないチャレンジです!

生まれて初めてなりたいと思った職業
 まさか本当になれるとは思いませんしたが今の仕事です。小学校2年生のとき、ノートに『スーパーマリオブラザーズ』を模したステージとコントローラーを描いて、友達がボタンを押すのにあわせて僕が指を動かしてゴールを目指す遊びが大ウケして、それで単純にゲームを作る人を夢見ました。

いまの仕事に就いていなかったら
 何回転生しても結局ゲーム開発者になってしまう自分しか想像できません。

現在、住んでいる家
 バークレーの北、築110年のシングルホームです。家そのものがアンティークでとても気に入っています。

休日の過ごし方
 土曜日は海や川へ、日曜日はペニンスラホープ教会に行きます。

好きな場所
 Montereyの灯台の近くのビーチは1年に4、5回必ず行くほど好きです。

最もお気に入りのレストラン
 あまり外食しませんが、たまに家族と近所のSam’s Log Cabinでゆっくりブランチをするとほっとします。

よく利用する日本食レストラン
 Soba Ichiが好きです。

1億円当たったとして、その使い道
 自分が遊びたい夢のゲームを作ります。

日本に戻る頻度
 今の仕事は出張で年に3、4回ほど。それ以前は数年に一度でした。

最近日本に戻って驚いたこと
 Suicaで交通機関はもちろんコンビニだけでなく自動販売機でも支払いができること。便利すぎる!

日本に持って行くお土産
 Oakland出身のバンドGreen Dayが作ってるコーヒー豆『Oakland Coffee』がイチ押しです。

日本からベイエリアに持って帰ってくるもの
 ミシュランで星をとったラーメン屋さんのカップラーメン。

現在のベイエリア生活で不安に感じること
 大学進学する子どもの学費が高すぎて誰か助けて欲しいです。

日本に郷愁を感じるとき
 お正月ですね。こちらは2日から会社が始まったりするので。

お勧めの観光地
 毎月アラメダで開催される800店のベンダーが参加するアンティークフェアが「ゴミかな?」ってものから100年前の美術品まで並んでいて面白いです。

5年後の自分に期待すること
 文筆で収入を得ること。

最も印象に残っている本
 『図南の翼』という小野不由美さんの異世界ファンタジーです。内容が素晴らしいのはもちろんですが奥さんに紹介したらものすごいファンになって嬉しかったので。もうすぐ18年ぶりにシリーズの新作がでるのが待ちきれないです!

最近読んだ本
 中国SFの『三体』の日本語訳です。すごいすごいと言われていること以外前知識なしで読んだので、打ち切りのような唐突な終わり方に驚きましたが、3部作の1作目だとあとがきで知って安心しました。続きを英語で読もうか悩んでいます。

最も印象に残っている映画
 選べない! けど、あえてこの瞬間選ぶなら、渡米してから観た最初のタランティーノ作品の『Death Proof』でしょうか。公開日にVan Nessの映画館でみましたがどのシーンでも客が大騒ぎ、盛り上がるとポップコーンを派手にまく、といった学級崩壊みたいな劇場で、「これが本場の映画鑑賞か…」と暗闇で感無量でした。印象に残った映画というより映画鑑賞ですね。ちなみにあそこまでテンションの高い上映はあれ以来体験してません。

最近観た映画
 先月今月だと『IT: Chapter 2』, 『Once Upon a Time in Hollywood』, 『Farewell』で、中でも『Farewell』は『Ocean's Eight』と『Crazy Rich Asians』で注目し始めたAwkwafineが初の主演で中国とアメリカに二重にアイデンティティを持つテーマに合っていてすごく良かったです。日本で話題になっていたアニメの『プロメア』も観に行きます。

(BaySpo 2019/12/13号 掲載)

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