一般編  Vol.332
坪井 ひろみさん
福岡県生まれ。上智大学外国語学部ロシア語学科卒。大日本印刷(株)入社、半導体製品海外営業担当。2000年よりSales Managerとしてシリコンバレーオフィス駐在。日本に帰国後、2008年ソニー(株)に転職しリチウムイオン電池ビジネス企画を行う。2011年にカリフォルニアに戻り、三井化学アメリカに転職。今年4月から三井化学アメリカ・シリコンバレーオフィス所長。
「レアキャラ化」目指し違う分野にも挑戦したい
駐在を経て震災を機にベイエリアへ転職、移住してきたという坪井さん。リーダーシップポジションに就いてなお歩みを止めず、違う分野にも挑戦すべく大学院に通い始めたというエネルギッシュな彼女に、ベイエリアでの暮らしについて伺いました。
坪井 ひろみさん

(Tsuboi Hiromi)BaySpo 1658号(2020/09/04)掲載

ベイエリアに住むことになったきっかけ
 最初の渡米は、2000年に大日本印刷の駐在員として赴任、帰任まで6年ベイエリアに住んでいました。2回目は、ソニー勤務地の郡山市で東日本大震災被災したことをきっかけに退社、ベイエリアに戻ってきました。それまでは、私は日本、当時の配偶者はアメリカで働いていたためしばらく2拠点で生活していましたが、彼の住むサンタローザに2011年に合流しました。
 2012年よりサウスベイに引っ越し、三井化学シリコンバレーオフィスに勤務しています。

ベイエリアの印象
 空が青く広く高く、開放的。湿度が低く、人もさっぱり。楽しそうにチャレンジしている人が多いように思います。ただ、最近はベイエリアでも日本に比べればコロナ感染者数が多いので、問題もありますね。

自分の専門分野について
 営業マーケティング。

その道に進むことになったきっかけ
 大学卒業後、初めての仕事が海外営業職でした。配属された日に、「女の子なんだから営業なんてやらなくていいよ。お茶当番やって。」と言われてショックを受け、絶対営業で成功してやると思って、がむしゃらに仕事をし始めたのがスタートでした。その後は、社長賞受賞、何人かの素晴らしい上司とも出会い、30歳の時初の女性駐在員に抜擢してもらいました。理由が何であれ、20代に不思議なほどのパワーで、とことん仕事に打ち込むことができたのは、ラッキーでした。

英語で仕事をするということ(英語を使うということ)
 最近、エグゼクティブコーチングの一貫で、社内外の人達に360度アセスメントに協力してもらいました。ある人のコメント欄に、文章ではクリアなのに口語ではクリアでないことがある、というフィードバックがありました。英語で仕事をするということは、そういうことだと思いました。

英語で失敗したエピソード
 今でも電話で初対面の人に、自分の名字Tsuboiの発音を一発でわかってもらったことはありません。英語の音素を正しく発音することは、本当に難しいです。

英語が100%ネイティブだったらどんな仕事に?
 小学5年生から2年半、父の仕事の関係でサウジアラビアのジェッダに住んでいました。引っ越し直後、母に「日本人学校とアメリカンスクールのどっちに行きたい?」と聞かれて、絶対日本人学校に行くと答えたことを良く覚えています(笑)。あの時、アメリカンスクールに行きたいと答えていたら、人生変わっていたかなあと考えることはありますが、多分大きくは変わってなかったと思います。同じような仕事をしていたかと思います。

あなたにとって仕事とは?
 自立すること。今年74歳の母に「これからの時代は、女性も経済的に自立することが重要、仕事を持ちなさい」と言い聞かされて育ちましたので。

生まれて初めてなりたいと思った職業
 若い頃は、美容師になりたくて岩手の実家を飛び出し上京し、その後美容院を経営していた祖母がお洒落で粋な人だったので、祖母のように自分のやりたいことを目指し成功する人に憧れていました。これになりたいという具体的な職業は、覚えていません。

いまの仕事に就いていなかったら
 明確なビジョンなくスタートしたサラリーマン人生でしたが、仕事を通じて、日米を行き来し、3回転職をする中で、様々な経験と魅力的な人達に出会うことができ、今のリーダーシップポジションに到達できたことを幸せと思います。違う会社にいても、同じような道を歩んできたと思います。次は、元リクルートの藤原和博さんが唱えているレアキャラ化を目指して、違う分野の仕事をマスターしたいです。そのために、1月から大学院に通って教育学を勉強しています。

現在、住んでいる家
 離婚後、大学の先輩と一緒にLos Altosの一軒家に住んでいます。Rancho San Antonio Preserveがすぐそばで、気軽にジョギングや散歩に行ける最高のロケーションです。

乗っている車
 Lexus CT200h。ハイブリッドの小さい車で私が運転するのにちょうど良いサイズ。今では、一週間に一時間しか乗りません。

睡眠時間・起床時間・就寝時間
 平日は朝は5時半に起きます。コーヒーを入れて、ポッドキャストでNHKニュースとNPR up first聞きながら朝ご飯を食べます。その後は、大学院の勉強や課題をして、10分だけですが近所を走ります。8〜9時から仕事、夕方には日本本社とのビデオ会議があることが多いです。コロナ前は夜の会食も週に2、3回ありましたが、WFHの今はルームメートと毎日バックヤードでワインを飲みながら夕食を食べています。11時には寝ています。

休日の過ごし方
 ハイキング旅行や海外旅行が大好きで、昨年までは色々な場所に行っていましたが、コロナ禍の今はほとんど家にいます。土曜日の朝は、友達と約10マイルのロングランをしています。6月は100マイルバーチャルランにでました。夜はルームメイトや少人数の友達とバックヤードでワイン&BBQでリラックスしています。

好きな場所
 Yellowstone国立公園です。Yellowstone国立公園に3カ月くらい住んで、ハイキング三昧が夢です。

最もお気に入りのレストラン
 大学の同級生が経営する吉祥寺にあるカフェロシア。人気店で予約しないとなかなか入れません。赤い天井と壁の内装、ロシア語のラジオがかかっていて、従業員はみなロシア語を話し、ロシアにいる気分になります。

よく利用する日本食レストラン
 コロナ禍で一度も外食していませんが、SushiTomiさんの特上握りをテイクアウトして、家のバックヤードで食べるのが最高。

1億円当たったとして、その使い道
 美術館巡りが大好きなので、マンハッタンとパリに数年ずつ住んでみたい。

日本に戻る頻度
 今までは出張で年4回帰国していましたが、今年は一度も帰国していません。昨年末の両親と沖縄旅行が最後。

現在のベイエリア生活で、不便を感じるとき
 美容院、ネイルサロンが開いていないなんて言ったらバチがあたりますね。コロナ禍でも、健康で仕事があって普通に生活できて幸せと思います。

現在のベイエリア生活で不安に感じること
 私にとってベイエリアは働くところ。働かなくなったら、このエリアに住み続けるのは、色々な意味で難しいと思っています。でも、ベイエリアは住みやすく良いところなので離れがたい。そんな中、次の生活場所をどこにするか、そこに上手にトランジッション出来るか、漠然と不安に思います。

5年後の自分に期待すること
 コンパッション力を鍛える。三井化学アメリカにさらに貢献する。リタイヤ後ターゲットですが、違う分野の仕事をマスターするのに、1万時間かかるそうなので、5年後に6000時間くらい終わっていたいです。

最も印象に残っている映画
 遠藤周作の小説『沈黙』を原作とするマーティン・スコセッシ監督『沈黙・サイレンス』。キリシタン迫害がテーマ、上映時間3時間弱とあって、先延ばしにしていましたが、2年前に長崎旅行に行く前にやっと観ました。重く苦しい映画ですが、言語や時代を超える名作です。

座右の銘は?
 ルームメートの大学の先輩は、冷蔵庫にポストイットでお気に入りの名言・格言をたくさん貼っています。素敵な習慣ですよね。その中で私が一番好きな詩人Rumiの言葉を紹介します。「間違った行いと正しい行いという思考をこえたところに、野原が広がっています。そこで会いましょう。」

(BaySpo 2020/09/04号 掲載)

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