文化芸能編  Vol.21
マリサリンネさん
ミシガン出身。ブラウン大学卒業。京都市立芸術大学で修士号を取得、京都大学大学院で博士後期課程修了。奈良国立博物館、京都国立博物館、稲盛財団などの勤務を経て2005年に渡米。現在、サンフランシスコ・アジア美術館で学芸部日本美術工芸課・主任研究員を務める。
斬新なデザインや匠の技が日本芸術の魅力
 サンフランシスコのシビック・センターにあるアジア美術館で、学芸員として日本美術を担当するマリサさん。美術館の中でも特に人気が高いという日本芸術の魅力について、またマリサさんのこれまでの道のりについても話を聞いた。
マリサリンネさん

サンフランシスコ・アジア美術館 主任研究員(Melissa Rinne)BaySpo 1143号(2010/10/15)掲載

日本に住んだ経験は?
 一番初めに住んだのは小学生の時でした。両親の仕事の関係で半年ぐらい京都に住みました。その後、高校の時に群馬県前橋市の近くに短期留学して、大学の時にまた京都に留学をしました。アメリカの大学では東洋学と文化人類学を専攻していたのですが、特に織物に興味を持っていまして、卒業論文は日本の麻織物についてでした。卒業後、再び日本に戻り、京都市立芸術大学で芸術学の修士を取得してからは京都国立博物館で勤め始めました。その後、奈良国立博物館の非常勤職員にもなり、図録の翻訳、ウェブサイトの作成など仕事をしました。知らないうちに日本の滞在が16年近くなりました。

日本の印象や思い出は?
 大学の留学生としで京都に来たとき、当初、臨済宗の学生道場に住んでいたのですが、生活の規律がとても厳しいものでした。朝早く起きてお経をあげてから床の拭き掃除、掃き掃除を毎日やるんです。そのあと、奈良晒という織物を勉強するために、奈良県の山村にあるおばあさんとおじいさんの家に住み込んだのですが、そこでの生活も道場と同じような規律のあるものでした。田舎では昔ながらの生活に対する厳しさが残っているんだと印象深かったです。その後、一人暮らしをするようになって、現代の生活がなんと気楽なことかと思いました(笑)。

ベイエリアに来たきっかけ
 美術品に囲まれて仕事をしたいという気持ちがありましたが、日本で正式な学芸員として働くにはやはり言葉の壁もあって難しかったんですね。そこでサンフランシスコ・アジア美術館に応募したのがきっかけです。京都出身の主人が、25年以上勤めた会社を辞めて、一緒に引越してきてくれました。

現在の専門分野
 アジア美術館の学芸員として、日本美術の展示を担当しています。初めて一人で担当した展示は2007年の「竹の名匠」という日本の竹工芸の展覧会でした。ニュートロジーナの元会長であるロイド・コッツェン氏が30年間以上かけて集めた世界で一番大きい竹工芸コレクションが、この美術館に寄付されたのがきっかけでした。今でもその中から30点ほどが常設展示室で陳列されています。ほかにも、仏教美術や現代ファッションと写真の展覧会、また当時の上司の下で「18世紀京都画壇」展や細川家の大名コレクションを集めた「サムライ」展など色々なジャンルに関わりました。日本と関係する美術全般で幅がとても広いのですが、ある意味それはとても贅沢なこと。様々な作品に触れられてラッキーだと思っています。日本美術はとても人気が高いんですよ。斬新なデザインや匠の技がその魅力だと思います。竹工芸はまさにいい例で、ひとつの素材だけでこれだけの可能性を表現できるのは、誰が見ても驚くところです。

今はどんな展示が?
 今年は、日本で初めての遣米使節団を乗せた咸臨丸・ポーハタン号がサンフランシスコに入港して150周年という節目の年です。アジア美術館でも11月28日まで、「サンフランシスコに渡った日本大使、1860年〜1927年」という記念展示を開催しています。そして来年の1月16日までは「金雲のかなたに―5世紀に渡る日本の屏風絵」という特別展覧会も開催しておりますので、ぜひご来館ください。

マリサさんにとって仕事とは?
 今の仕事は一番好きな趣味でもありますので、とても恵まれていると思っています。

住んでいる場所
 サンフランシスコのリッチモンド地区に、主人と幼稚園の娘と3人暮らしです。

休日の過ごし方
 最近週末も何かのイベントなどで出勤することが多いのですが、休める日は家族でお弁当を持ってハイキングに出かけたりするのが好きです。

好きなハイキングスポットは?
 プレシディオのベイカービーチより少し北に、ハイキングでしか入れないエリアがあるのですが、そこからはゴールデンゲートブリッジが間近に見えて、ムール貝やヒトデも見れたりしておすすめです。自然が多い隠れスポットがサンフランシスコにはたくさんありますね。

ほかにベイエリアのおすすめのスポットは?
 サンフランシスコと湾を挟んだ対岸にあるティブロンのフェリー乗り場に、「Guaymas」というメキシカンレストランがあり、そこからは素晴らしい眺めが一望できて、とてもいいですよ。

好きな日本食レストランは?
 サンフランシスコの「EIJI」や「OKINA」が好きです。近々、知合いが「Ju-Ku」という居酒屋を19th アベニューとクレメントにオープンする予定なので、それもとても楽しみにしています。

日本に戻る頻度
 毎年1、2回、主に仕事で行っていますが、今年の6月に初めて、家族で休暇として行きました。

最近、日本に戻って驚いたこと
 京都でも伝統的な町家がなくなって現代的な建物ができていたりすると少し寂しく感じました。古い町並み、民家をなんとか残してほしいと思います。

日本からベイエリアに持って帰ってくるもの
 お茶や器などを持ってきます。それから子どものパジャマなど。自然な綿素材でできてるものはなかなかアメリカには少ないので。

日本に郷愁を感じるとき
 日本でできた親しい友達となかなか会えないことを思い出すとき。また温泉やお寺などが懐かしくなります。

最近観た映画は?
 サンフランシスコと高知県が舞台のバイリンガルの映画「The Harimaya Bridge」を観ました。日本を愛するアメリカ人の話なので、共感できるところがたくさんありました。

座右の銘は?
 英語で言うと、「When life gives you lemons、 make lemonade」(逆境をうまく利用しろ)。

5年後の自分に期待すること
 美術館の仕事を通して、日本とのつながりやベイエリアの日本人・日系人コミュニティとの輪をより広げたり、深めたりするお手伝いをしていけたらと思います。あとは家族や友達が幸せに恵まれて、仲良く暮らしていけたらいいですね。

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■インタビューを終えて
 インタビュー後、「サンフランシスコに渡った日本大使―」の特別展示を案内してくださったマリサさん。日本美術だけでなく、日本の歴史における知識の豊富さはさすがのものですが、さらに感動したのは、昔の絵や資料にある古くて難解な漢字をスラスラ読んでいるマリサさんの姿でした。大人になってから学ぶ第二言語でも、情熱や努力次第でここまで深めることができる、というお手本を見た気がして勇気づけられました。

(BaySpo 2010/10/15号 掲載)

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